四川の孔明史跡(成都武侯祠・剣門蜀道・明月峡・都江堰)を調査してみた【三国夢幻紀行 諸葛孔明篇1】

2018年8月26日


 

三国夢幻紀行

 

こんにちは。

拙著「三国夢幻演義」のロケハンと称し、仕事の傍ら中国各地を旅する旅人作家・光月ユリシです。

「三国夢幻演義」では、旅行中で得たイメージやアイデアが作中に随所に生かされています。

ここでは、その旅行で見聞したものを写真とともに紹介したいと思います。

 

私が一番尊敬する人物。

それは、拙著「三国夢幻演義 龍の少年」の主人公・諸葛孔明でございます。

今回紹介するスポットは「龍の少年」の物語が

展開する場所とは直接的な関係はありませんが、

第一回目の紀行文ですから、やはり諸葛孔明に関連するものをチョイスしてみました。

 

この原稿の執筆時に四川に在住だったこともあり、

今回は四川の孔明関連史跡をご紹介します。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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三国志の聖地・成都武侯祠

武侯祠チケットとお土産で買った孔明のしおり

(武侯祠チケットとお土産で買った孔明のしおり)

 

【本文1】三国志ファンであれば、絶対に訪れたい場所の一つが成都の武侯祠です。

「三国志の聖地」という触れ込みですし、国内外で有名ですから、

すでにご存知の方、訪れた方も多いかもしれませんが、ここを紹介しないわけにはいきません。

 

成都武侯祠へのアクセスは成都駅から地下鉄3号線(地図の赤のライン)で

行くのをお勧めします(自力で行く場合)。

成都の地下鉄はきれいだし、便利で、乗り換えも分かりやすいです。

中国語が話せなくても、楽勝です。

 

 

 



武侯祠の最寄り駅は高升橋(ガオセンチャオ)の構内の壁に孔明

高升橋駅の構内の壁に諸葛孔明の実績

(高升橋駅の構内の壁に諸葛孔明の実績)

 

武侯祠の最寄り駅は高升橋(ガオセンチャオ)。

構内の壁には孔明の事績を紹介した絵巻物風デザインが施されていて、

さすが最寄り駅といった感じで、気持ちが高ぶります。

 

高升橋駅内の天井には諸葛孔明の羽扇のデザイン

(高升橋駅内の天井には諸葛孔明の羽扇のデザイン)

 

駅から大通り沿いに徒歩十分。いよいよ武侯祠に到着です。

成都武侯祠は孔明を祀った武侯祠のほか、劉備の墓である恵陵、漢照烈廟(劉備廟)、

劉備三兄弟の三義廟、蜀の名将たちの像を陳列した武将廊、名臣たちの文臣廊などの

見どころがあります。意外と中は広く、平日でも人で込んでいますから、十分に堪能

したいなら、見学時間は三時間は確保した方がよいかと思います。

 

今回、念願叶って武侯祠を訪れた私は写真撮影を含め、四時間以上滞在して、二周し

ました。そのせいで、パンダを見に行くのを諦めるはめに・・・。

 

成都武侯祠で遂に黄金の諸葛孔明像にご対面

杜甫の詩にある「宇宙に名を垂る」の扁額

 

杜甫の詩にある「宇宙に名を垂る」の扁額。

奥で黄金に輝いているのが、孔明像。

 

黄金の諸葛亮像

(写真は黄金の諸葛亮像)

 

学生の頃に雑誌で見た黄金の孔明像とついにご対面。

感無量。神々しいです。

時間を忘れて見とれてしまいました。

写真では分からないですが、実際は人・人・人で、にぎわっています。

さすが諸葛孔明、中国人みんなに愛されているようです。

 

祠堂内には諸葛氏三代たちの像も

諸葛瞻像

(写真は諸葛瞻像)

 

諸葛尚像

(写真は諸葛尚像)

 

諸葛氏三代。孔明像の両サイドには子の諸葛瞻と孫の諸葛尚の像があります。

 

武将廊と文臣廊には、ずらりと蜀の名臣の像が陳列されていて、なかなか圧巻です。

ですが、鎧姿じゃない孫乾が武将廊にいたり、

鎧姿の傅彤(ふとう)が文臣廊にいたり、この人がいるのにあの人がいなかったり、

疑問に感じるところもちらほら・・・。

 

武将廊の趙雲はなぜだかおじいちゃんの姿をした文臣姿

武将廊 趙雲(右)と孫乾(左)像

(武将廊 趙雲(右)と孫乾(左)像。趙雲はなぜかおじいさんの文臣姿)

 

文臣廊にはお馴染みの龐統と簡雍

文臣廊にはお馴染みの龐統と簡雍

 

成都武侯祠には陳列されていない武将・文臣たち

法正

 

では、像が陳列されていない主な武将・文臣たちを列挙してみます。

 

李厳→劉備や孔明に厚く信頼された彼ですが、最後やらかしてしまいましたからね。

魏延→功績は大きくとも、孔明の決定に従わず、反逆者扱いでは致し方なし。

陳到→「三国演義」に登場しないので、そもそも知られていないのでしょう。

霍峻→隠れた名将ですが、「三国演義」で活躍シーンはあまりなし。残念。

法正→彼がいないのは個人的に腑に落ちませんが、偏狭とされた性格の問題か。

麋竺→劉備との付き合いの長さを考慮すれば、彼がいないのも変。弟のせいですね。

李恢→南征軍を率いて功を挙げた彼も忘れ去られたか。秦宓や呂凱はいるのに。

馬謖→まぁ、大失敗したし、仕方ない。兄貴(馬良)がいるから、いいか。

 

 

武侯祠に陳列されていない武将・文臣たちの理由

武侯祠に陳列されていない武将・文臣たちの理由

 

現在の武侯祠は清代建造のもので、像も清代製作とありました。

これらの混乱は、当時の人々の三国志の知識が今ほど高くなかったせいでしょう。

さらに夷陵の戦いで戦死した武将・文臣たちがこぞって飾られてあるところから、

明代の小説「三国演義」に大きく影響された結果だろうことがうかがえます。

 

 

漢照烈廟(劉備廟)には劉禅像がない理由

漢照烈廟(劉備廟)には劉禅像がない理由

 

ちなみに、漢照烈廟(劉備廟)には劉諶像はありますが、劉禅像はありません。

国を滅ぼしてしまった当事者ですから当然ではありますが、一応、皇帝やったんだけどな。

理性よりも感情で生きる中国人。

中国では、人々の感情で評価が決まってしまいがちです。

 

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剣門蜀道・明月峡

剣門蜀道・明月峡

 

さて、こちらは四川省の北部・広元市にある明月峡。

風光明媚かつ三国志要素もある観光地ですが、交通アクセスがあまり良くないためか、

人は多くなく、穴場です。

 

広元駅から明月峡までは少し離れています。直通のバスがありますが、乗り場は駅か

ら嘉陵江を渡って対岸側の路地にあります。帰りのバスを含め、分かりにくいので、

中国語ができる人と一緒に行った方がいいですね。

 

奥側が漢中方面。手前側が成都方面

(写真は奥側が漢中方面。手前側が成都方面)

 

この明月峡の三国志要素は、ズバリ、蜀の桟道です。

道路や鉄道が整備されている現在ではなかなか想像もつきませんが、

当時はここが漢中と蜀を繋ぐメインルートでした。

崖沿いに岩を穿(うが)って桟道を作り、強引に道を作っています。

いかに蜀が隔絶された土地であったかということが良く分かります。

 

嘉陵江と桟道

(写真は嘉陵江と桟道

 

桟道は先人たちが敷設し、孔明らが蜀入りした当時からありましたが、

その維持・管理はかなりの優先事項だったことでしょう。

余談ですが、劉焉はこの桟道を焼き払わせて、わざと中央政府と連絡ができないようにし、

陸の孤島を創出して独立体制を図ったわけですが、納得です。

 

もちろん、現在の桟道は当時の桟道跡を利用しながらも、

ちゃんと補強・整備されていて、危険ではありません。

ここを孔明や劉備、蜀の将兵たちが往復したのか~。

往時のことに想像を巡らせながら、気持ちよく散策できます。

 

晩年の孔明像

(写真は晩年の孔明像)

 

この明月峡を南に抜けるとようやく蜀の地に入りますが、

そこには最大の難関が待っています。

両側が切り立った崖になっていて、その間の隘路(あいろ)しか通り抜けられない天然の要害です。

先見の明があった孔明はここに堅牢な関門を築かせました。

 

山

 

はい、そうです。皆さんもご存知の剣閣。

位置的には漢中と成都の中間地点です。

 

今は観光用にいろいろ整備されていますが、当時はもっと険しかったのだろうと思います。

姜維が魏の大軍を防ぐことができたのも、この地勢が大きく味方したのが一目瞭然で分かります。

 

 

関楼は2008年の四川大地震で倒壊したのを再建

現在の剣門関

(写真は現在の剣門関)

 

写真にある関楼は2008年の四川大地震で倒壊したのを再建したものだそうです。

四川って、結構地震があります。

地震だけでなく、地滑りや洪水などの自然災害もあっただろうし、

桟道や関門のメンテナンスは大変だったでしょうね。

 

姜維守関レリーフ

(写真は姜維守関レリーフ)

 

剣閣にある孔明像

(写真は剣閣にある孔明像)

 

明月峡と剣閣はかなり離れているので、一日で両方を観光することは難しいです。

ですが、どちらも孔明が重要視したところ。

蜀入りの困難さをうかがわせてくれる上、孔明や蜀の武将たちが実際に移動し、

戦ったところですから、訪れてみて損はありません。

 

蜀の宝・都江堰

 

最後に世界遺産の都江堰を紹介します。

三国志とどう関係あるのかと思う方もいるかもしれませんが、あるのです。これが。

 

都江堰は二千年以上前の秦代に設置された水利施設です。

岷江の流れを分けて、洪水のリスクを軽減させるとともに一部を

成都平野に引き込んで灌漑に利用しました。

 

堤の先端部・魚嘴(ぎょし)。ここで岷江が外江(左)と内江(右)に分かれる

(堤の先端部・魚嘴(ぎょし)。ここで岷江が外江(左)と内江(右)に分かれる)

 

当然、孔明もその重要性を認識していました。

孔明はたびたびこの都江堰を訪れたといい、「堰官」という官職を設け、

兵を常駐させて都江堰の保安に当たらせました。

さらに、何とあの武将を都江堰の修理に従事させているのです。

 

五虎将軍の一人を都江堰の修理

 

それは馬超! 五虎将軍の一人を都江堰の修理に当たらせるなんて。

孔明がいかに都江堰を重視していたか分かります。

それにしても、馬超って戦だけじゃなく、こんな仕事もしていたんですね~。

 

都江堰は幾度の改修・補修を経て、現在までその役割を果たし続けています。

それを知ると、中国の古代技術と発想のすごさに驚嘆してしまいます。

孔明の思想も時を越えて息づいているように思えて、何か感動!

 

岷江と岷山山脈

(写真は岷江と岷山山脈)

 

ちなみに、成都の空港は双流国際空港といいますが、

この双流は都江堰で分けられた岷江の外江と内江を表しています。

都江堰と成都平野を潤すこの二つの流れはまさしく成都の宝なんですね。

 

都江堰へは成都から直通バス、高速鉄道で行けます。

世界遺産だけあって、観光客は相当多いです。

中国の人の多さを舐めてはいけません。

中国の観光では、土日・祝日はできる限り避けるのをお勧めします。

 

拙著「三国夢幻演義」光月ユリシの独り言

 

今回は諸葛孔明にスポットを当てながら、

孔明が実際に訪れた場所として、四川省の観光地を紹介してみました。

いかがでしたか?

 

すでに独白していますが、

私の中国旅行はほぼ小説のインスピレーションや

イメージを摑むためのものだと言って過言ではありません。

もちろん、旅行自体は楽しんでいるのですが、

小説に直接関係のない現代建築や現地料理には関心が薄かったりします。

万里の長城ひとつとっても、漢代の古い建築には大いに興味があって、

明代に整備された長城には興味がなかったり・・・だいぶ偏っています(笑)。

 

作中には、中国各地の観光地が次々と登場します。

それは今と昔を繋ぐだけでなく、日中友好という大きな旗のもと、

日本の三国志好きの皆さんと中国の風光明媚な観光地を繋ぐ試みでもあります。

私の作品が少しでもそれに貢献できたなら、嬉しいです。

これをきっかけに皆さんもぜひ中国旅行を楽しんでみてください。

 

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【あらすじ】

時は中国後漢末期。父の死と激しさを増す戦乱を避けて、

故郷を離れることを余儀なくされた少年がいた。

生と死の狭間で、数々の出会いと別れを経験しながら、少年は成長し、次第に龍才の片鱗を見せる・・・。

後の歴史に燦然と輝く大軍師・諸葛孔明。その少年時代の物語。

 

【龍の少年のご感想について】

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