キングダム最新608話ネタバレ予想vol2「王翦に独立国は絶対無理?」

2019年7月15日


 

 

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大人気春秋戦国時代漫画キングダム、607話では王翦(おうせん)李牧(りぼく)に対して

「一緒に強く新しい国を作らないか?(八重歯(やえば)キラッ!)」と新手のスカウトをしていました。

さすが、王の地位を狙っていると噂される人物である王翦ですが、リアルな話、王翦に単独で王国なんか作れるのでしょうか?

今回は、史実のキングダムで実際に独立国が可能かについて考察してみました。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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キングダム最新608話ネタバレ予想vol2「そもそも秦は封建制じゃない」

キングダム 戦国七雄地図

 

キングダムと言えば、王騎(おうき)が自分の領地に広大な宮殿を持っている場面がありました。

王騎の領地を信が(えん)副長と一緒に尋ねて、仲良く温泉に入っていたシーンなどは、記憶している読者も多いかと思います。

その後も、嫪毐(ろうあい)が太后と結託して起こした毐国(あいこく)の乱などもあったので、王翦の独立国構想も、その延長線上で考えられているのでしょう。

でも、王騎や毐国の独立は飽くまでも漫画の演出で、実際の当時の秦で臣下に過ぎない者が領地内でミニ独立国を作るなどというのは不可能でした。

「なんで?なんで出来ないなんて言い切れるの?」と思う人もいるかも知れませんが言い切れます。

それは、当時の秦はすでに封建制の国では無かったからなのです。

 

 

 

キングダム最新608話ネタバレ予想vol2「悲惨!王翦はサラリーマン将軍」

夏侯淵

 

私達は世界史で秦の始皇帝は中国を統一して、それまでの封建制から郡県制(ぐんけんせい)に行政組織を改編したと習います。

ですが、それは何も始皇帝が中国を統一した時から起きたのではありません。

すでに秦では、始皇帝の120年前から商軮の変法で国内においては、郡県制が施行されていたのです。

つまり、王翦が活躍していた時代にはすでに封建制は失われていて王翦は国家から給料をもらうサラリーマン将軍だった事を意味します。

 

※郡県制自体は魏や楚でも不十分ながら行われた。

 

キングダムネタバレ考察

 

 

キングダム最新608話ネタバレ予想vol2「封建制と郡県制はどう違う?」

樊城の戦い

 

では、封建制と郡県制ではどう違うのでしょうか?

まず、封建制について説明すると、これは簡単に言うと土地の支配権を王が部下に与えて統治させる体制を意味します。

 

土地を与えられた部下は諸侯として、子々孫々が土地を直接支配します。

もちろん、支配地域で起きる事の全ての決裁権は諸侯が持っていて、王であっても基本、干渉するような事はありません。

 

この封建制の最大の欠点は、何百年と土地を諸侯が支配する間に、土地の人民にとっての支配者は、王から諸侯に変わる事です。

なので、何らかの理由で王が衰えると、諸侯は王に従う事を辞め他国に攻めこむなど勝手な振る舞いを開始します。

 

まさにキングダムの騒乱の原点になった紀元前771年、周の都、鎬京(こうけい)犬戎(けんじゅう)に攻められ西周の(ゆうおう)が殺された後

周辺諸侯が王室を侮るようになり500年の春秋戦国時代が始まるのは封建制の欠点を象徴していました。

 

このように、諸侯の権力が王を超える事を憂慮した秦では、封建制を廃止して、諸侯ではなく王の派遣する官である郡守や県令を置いて

土地を支配するようになりました。

これが郡県制で、郡守や県令は数年ごとに配置換えになるので、その土地で権力を握るようにはなりません。

以前のように諸侯が何百年も同じ土地を支配する事がないので、王は部下の反乱を恐れる必要がなくなったのです。

   

 

キングダム最新608話ネタバレ予想vol2「王翦はどこから給料をもらってる?」

宋銭 お金と紙幣

 

では、以前のように領地を直接支配する事が出来なくなった王の臣下はどうやって給料をもらうようになったのでしょう。

これは食邑(しょくゆう)と言い、秦の領地内で予め割り当てられた戸数から定められた%の年貢が食い扶持として支給されるようになりました。

今のサラリーマンと同じで会社が直接に給料を支給するシステムに変化してしまったわけです。

 

例えば、始皇帝の父である(しそ)荘襄王(そうじょうおう)として即位させ自らも秦の丞相として権勢をふるった大商人の呂不韋(りょふい)は、

洛陽(らくよう)の十万戸を食邑として与えられました。

しかし、ただ、それだけの事であって領地の支配権を与えられるような事は決してなかったのです。

 

キングダム最新608話ネタバレ予想vol2「もし王翦が反乱を起こしたらどうなる?」

王翦

 

一方の王翦にしても、具体的に食邑をいくらもらったかは分からないものの、楚の項燕(こうえん)の軍勢と函谷関(かんこくかん)でぶつかる時には、

一族の安全の保障や上等の田畝(でんぽ)、宅地、園池を執拗(しつよう)に要求しています。

これは自分を金銭に執着する小物に見せて、秦王政の警戒心を解く演技ですが、要求している褒美に領地が含まれてない事は注目に値するでしょう。

すでに秦においては、戦の褒美として領地を求めるような事は無かったのであり王翦は将軍ではあっても、独立した領主ではなかったのです。

 

王翦が独立した領主でない以上は、秦に叛くなど自殺行為であり、いくら私財を投じて、傭兵をかき集めても地盤となる土地もないので、

陳勝・呉広の乱のように、勝てるを幸いに、あちこちの県を攻め取るくらいしか方法はないと思います。

 

それでも、周辺が王翦に呼応して秦に反旗を翻す可能性は極めて低く、ほどなく勢力の拡大に行き詰まり、

味方に叛かれ呆気ない最期を迎えるでしょう。

これは王翦が有能・無能とは無関係に、こういう行政システムなので仕方がない事なのです。

 

キングダム最新608話ネタバレ予想vol2「李牧の場合は事情が違う?」

李牧

 

王翦は独立国など作れないと解説しましたが、では李牧はどうでしょうか?

これは、あくまで雁門に籠城できればの限定付きですが可能かも知れません。

それは、史記の廉頗藺相如(れんぱりんそうじょ)列伝に以下のようにあるからです。

 

李牧は時々の都合で官吏を置き、市の租税は皆んな幕府に運び入れ士卒を養うための費用にした。

毎日、数頭の牛を(ほふ)って、士卒を饗応(きょうおう)して射撃の術を習わせ敵の襲撃を伝える烽火(ほうか)を整備して、多くの間諜(かんちょう)を放ち戦士を厚く遇した。

 

幕府というのは、日本の室町幕府、江戸幕府のように中央からは一定程度独立した行政機関の事を意味しています。

雁門(がんもん)は、趙の辺境で匈奴(きょうど)と隣接し、邯鄲の命令を待っていては事態に対応できないので一定の行政権や立法権を与えて

自治を任せていたと考える事が出来ます。

 

李牧は幕府を開いて時々に官を置いて税金を徴収して兵士に給与を払い牛を潰して、度々宴会をしたり烽火を整備したり、

スパイを放ったりという経費を全て(まかな)っていました。

 

個人的に徴税権を握り、宴会などの供応で士卒の忠誠心を集めている上に、中央とは連絡が密ではないので

李牧は趙から蜂起しようと思えばできたでしょう。

つまり、リアルなキングダムにおいて独立国を持っていたのは、王翦ではなく李牧だったのです。

以上が皮肉な歴史の真実ですが、読者の皆さんはどのように感じましたか?

 

キングダム(春秋戦国時代)ライターkawausoの独り言

 

リアルなキングダムでは王翦が独立国を作れるかについて考えました。

実際のキングダムの世界においては、独立国を作れそうなのは、意外にも王翦ではなく、李牧の方だったという事が分かりますね。

 

参考文献:史記廉頗藺相如列伝、白起王翦(はくきおうせん)列伝、呂不韋列伝

 

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