三国志のメジャー武将は本当に前線で戦ったの?

2019年11月28日


 

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正史三国志 vs 三国志演義で揉める現代人

 

三国志演義(さんごくしえんぎ)を読んでいる読者の疑問には、本当に三国志の英傑達は前線で戦っていたの?というものがあります。一般の兵士ならともかく、指揮官か総大将である武将達が本当に最前線で戦い、戦死してしまえば元も子もないからです。

 

司馬師

 

同時に歴史を知っていると自称する人の中には、重要な武将は前線に出ないと夢も希望もない事を言ったりします。しかし、こと三国志に関して言うと三国志の英傑達は、割とフランクに前線で戦っているのです。今回は正史三国志からそれを証明しましょう。

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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前線で閻行に殺されかけた馬超

 

西涼の馬超(きんばちょう)と言うと、三国志演義では張飛(ちょうひ)と一騎打ちをした事で有名です。残念ながら張飛との一騎打ちはフィクションですが、馬超は若い頃に前線で死にかけた事があります。その相手は閻行と言い韓遂の右腕で、正史三国志張既(ちょうき)伝に以下の記述があります。

 

閻行はかつて馬超を刺した事があり、矛が折れると折れた矛で馬超の(うなじ)()ち、殺しかけた。

 

矛で馬超を刺し矛が折れると、折れた矛で馬超のうなじをめちゃんこブッ叩き殺しかけたというのです。ね?馬超、前線で体張ってるでしょ?

 

本当に劉備の妻子を守っていた趙雲

劉備を徹底サポートする趙雲

 

五虎将軍の中でも永遠の青年武将として爽やかさでは随一の趙雲。長坂で百万曹操軍の只中を駆け抜けたというのは、三国志演義の誇張ですが、だからって前線で体を張っていないわけではありません。三国志趙雲伝では、以下のようにあります。

 

劉備が曹操によって当陽の長阪に追われ、妻子を()てて(オイ!)南走した。趙雲は身に阿斗、すなわち劉禅を抱え、甘夫人をすなわち後主の母を保護し皆な難を免れる事ができた。

 

ちゃんと原文でも、雲身抱弱子と書かれていて、趙雲は阿斗を抱えていた事が分かります。真面目で優しい趙雲は、趙雲別伝の影響もありますが、決して絵空事ではないのです。

 

一騎打ち

 

本当に命知らずだった張遼

張遼の猛攻に泣きながら逃げる孫権

 

張遼(ちょうりょう)と言えば、魏の五虎将軍の筆頭であり、また合肥の戦いでは少数の兵力で孫権の十万の軍勢を翻弄(ほんろう)させた事で三国志演義でも有名です。しかし、これはフィクションではなく、八百人の決死隊で孫権の大軍に挑んだのは史実なのです。正史三国志張遼伝には、血飛沫(ちしぶき)が飛びそうな記述があります。

 

平旦(よあけまえ) 遼被甲持戟(りょうはよろいをきてほこをもち) 先登陷陳(せんとうをきってじんをおとし) 殺數十人(ころすことじゅうすうにん) 斬二將(きることにしょう) 大呼自名(じぶんのなをおおごえでさけび) 衝壘入(るいにわけいり) 至權麾下(そんけんのたいきにいたる) 權大驚衆不知所為(けんはおどりきしゅうはなすすべしらず) 走登高冢(そんけんはこだかいおかにはしり) 以長戟自守(ちょうげきでみをまもる)

愛馬に乗り敵を粉砕する張遼

 

原文を簡単に言うと、夜明け前に張遼は鎧を着て戟を持ち、先陣を切って呉の陣を落とし数十人を斬り捨て、二人の敵将を斬り、大声で自分の名を叫びながら堡塁を衝いて回り、ついに孫権の旗の下までやってきた。孫権はあまりの事に驚き、軍勢は為す術なく、孫権は走って小高い丘に登り長戟で自分を守ったという意味です。こんな事が映画ではなく、実際に起きたというのが驚きですね。

 

張遼については、三国志演義より史実の方が活躍しているという珍しい人です。

 

張飛は本当に万人敵だった!

殿を務める張飛

 

三国志演義では、桃園三兄弟の末弟として、また武勇無双の暴れん坊として人気の張飛。

 

張飛の虎髭

 

彼の一番の見せ場は、長坂橋の前で曹操軍の精兵虎豹騎の大軍を部下二十騎と食い止めた話です。如何にもフィクションに見える話ですが、8割方は事実です。正史三国志の張飛伝には、以下のように書かれています。

 

使飛將二十騎拒後(ひはにじゅうきでうしろをふさぎ) 飛據水斷橋(はしをおとした) 瞋目橫矛曰(めをいからせほこをよこたえ) 身是張益德也(われはちょうえきとく)

可來共決死敵皆無敢近者(きたれせいしをきめようぞとよばうとちかよるものなし) 故遂得免(ゆえにまぬがれえぬ)

 

簡単に言うとこんな感じの意味です。

 

大声を出す張飛

 

張飛は二十騎を率いて後方を塞ぎ、長坂橋を落とした。そして目をいからせて矛を横たえ「我こそは張益徳なり、来たれ!どっちが死ぬか決めようぞ。」そう言うと近づく敵はなく、ついに逃れる事が出来た。まあ、橋は落ちているので騎兵では追えないのですが、いずれにせよ、大勢の敵を前に平然とこんなセリフを実際に吐いたというのですから度胸満点な人ですね。

 

本当に孫策と一騎打ちをした太史慈

一騎打ちをする太史慈と孫策

 

三国志演義における一騎打ちは、そのほとんどがフィクションです。

リアルに考えても、大将同士が一騎打ちをして決着がつくなら、計略も策謀も不要で呂布(りょふ)を大将にすれば連戦連勝という事になりますからね。

しかし、偶発的に両軍の武将同士が遭遇する事は時々あり、太史慈と孫策のケースもそんな一例だったようです。正史三国志太史慈(たいしじ)伝には以下のようにあります。

 

時獨與一騎卒遇策(ときにいっきをともにしているときさくにあう) 策從騎十三(さくはじゅうさんきをしたがえ) 皆韓當(かんとう) 宋謙(そうけん) 黄蓋輩也(こうがいなど) 慈便前闘(じはまえでたたかい) 正與策對(そんさくとたいする)

策刺慈馬(さくうまをさし) 而擥得慈項上手戟(さらにてげきをうばう) 慈亦得策兜鍪(じはさくのかぶとをとる) 會兩家兵騎並各來赴(そうほうからきへいがかけつけ) 於是解散(これでかいさんする)

黄巾賊を撃退する太史慈

 

簡単に意味を説明すると、太史慈は一人の騎兵を伴い偵察に出ていると孫策(そんさく)とそれに従う十三騎が視界にはいった、それは韓当(かんとう)宋謙(そうけん)黄蓋(こうがい)というような連中であった。太史慈は孫策と相対し、孫策は太史慈の馬を刺し、さらに太史慈が背中に差していた手戟を奪った。太史慈は負けずに孫策の兜を奪い取った。異変を知り両軍がさらに援護の兵を繰り出したので、それぞれ散会したみたいな意味です。

小粒群雄太史慈が孫策に出会うまでの太史慈と孫策

 

太史慈は共の騎兵と二人だけ、孫策のサイドは、韓当と宋謙、黄蓋のような有力武将十三騎を引き連れて激突し、その中で太史慈と孫策が一騎打ちしたわけですから、太史慈の方が度胸満点な感じですね。戦い方も馬を刺したり、手戟や兜を奪い合うなど生々しさが残っています。

 

三国志ライターkawausoの独り言

 

三国志演義には脚色があるので、一騎打ちも満載で、多くの武勇伝が記録されます。

 

呂布と桃園三兄弟の一騎打ちなどは面白いですけど実際にはフィクションでした。しかし、正史の記録をつぶさに見ていくと、総大将だろうと将軍だろうと場面場面では、命を懸けて血飛沫あがる戦闘を経験しているのです。

 

前線で戦うのは兵卒だけで将軍は戦わないなんていうのは、少なくとも三国志においては、史料的に間違いです。

 

参考文献:正史三国志

 

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