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72は特別な数
72とは古代中国においてとても特別な数でした。なぜなら当時の一年は360日、そしてそれを五行説の5で割ると……72!
その72の数を体に刻んだだけでなく、宿敵項羽との戦いにおいて72回敗北したがその次の一戦で天下を取った、もしくは72戦目で勝利をして天下を取った、として劉邦が偉大な存在であるという箔付けとなったのでしょう。
とは言えこの72はあくまで伝承であり「劉邦は項羽とたくさん戦った」という比喩でもあり、縁起もいいから72にしたのではないか……と思います。
楚漢戦争の期間
というのも、劉邦と項羽が戦った楚漢戦争は、僅か5年という期間です。この間に72回も戦争があって敗北し続けていたというのは、少し現実味がありません。
敗北した方は態勢を立て直すための時間が必要ですし、むしろ72回も敗北していたら劉邦の方が凄いことになってしまいますね。
なので劉邦が項羽に72回、71回敗北したというのはあくまで比喩表現であり、72の回数にかけた表現とした。実際にそこまで劉邦は負けてはいない、戦いに弱い訳ではなかった……と考えたいと思います。
しかし「連敗したけど最後に勝ったから天下を取った」はやはりロマンがあって好きなので、その説もその説でこれからも取り上げていきたいとも思いました。
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古代中国において重要な数字「72」
最後にちょっと余談を。72の数字が古代中国において重要な数字であり「とてもたくさんの数字」を表現することが分かる話をもう一つ。この数字は実はとあるお話にも出てきます。
それは「西遊記」。
この話の主人公の一人でもある孫悟空、彼の変化の術はなんと「72通り」なのです。
これもまた孫悟空が「変幻自在の術を習得している」という意味、72がとても重要な数という一例ではないかと思いますね。
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三国志ライター センのひとりごと
今回は劉邦の戦歴を振り返ってみて、実はそこまで負けてないのではないか……とふと疑問に思ったことがきっかけです。しかしそこから劉邦の面白い逸話と同時に、72という突拍子もないように見えた数字にきちんとした意味も見出すことができて面白かったですね。
こういう所に歴史だけでなく中国文学の繋がりも見えてきて……増々面白くなる三国志の世界にまたもや筆者、どぷん、してしまいました。
参考文献:史記 第8高祖本紀 第7項羽本紀
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