羅貫中の存在
ではどうしてそういう悪女の一面は三国志演義ではなくされたのか、となると、おそらくですが羅貫中の存在です。羅貫中がそもそも、そういう女性が嫌いだった……というよりも、儒教の影響でしょう。
儒教の教えとして、七去というものがありますが、ここに「淫乱」という項目があり、つまり不貞を犯すような妻は離婚案件、となります。そうなると幾つもの男性に良い顔をする女性、呂布と言う夫がいるのに董卓とも関係を持った三国志平話の貂蝉は、良い妻とはとても言えなくなります。
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羅貫中の好み?
因みに貂蝉とはまた違いますが、三国志に出てくる女性、王異。彼女は正史でこそ活躍が描かれますが、三国志演義ではその活躍はだいぶカットされています。
また執筆に羅貫中が関わっている、とも言われる水滸伝においては、悪女は出てくれば成敗されるし、優秀な女性の代表とも言える扈三娘の扱いはあまり良いとは言えません。
そういう点を合わせて考えると、そもそも羅貫中は物語に女性が出張ってくるのがそもそも嫌いだったのかなぁ……なんて考えてしまう筆者でした。
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余談:吉川三国志の貂蝉は自害
さて最後に余談を。横山三国志では、貂蝉は最期に自害しています。これは元になった吉川三国志で、貂蝉が自害するからでしょう。
筆者はこのシーンが非常に記憶に焼き付いています。我が身を使って董卓と呂布の仲を裂くことに成功した貂蝉、喜びに微笑み、涙すら流します。それを自分と結ばれることを喜んでいると思う呂布。
全てが終わって貂蝉の元に行くと、そこには刀で胸を貫き自害している貂蝉の姿が。呂布は嘆き、しかして貂蝉の顔には満足した微笑みが。その微笑みの理由は分からないまま、貂蝉は三国志演義の舞台から退場するのでした。
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三国志ライター センのひとりごと
横山三国志の貂蝉はただただ高潔で、美しく頭の良い女性なのですが、それだけに最期は呂布がとても可哀想になるんですよね……どちらかというと、呂布の印象を良い意味で残す女性だと思います。
さてさて作品によっては悪女にもなり、悲劇の女性にもなる貂蝉。色んな貂蝉がいますが、皆さんはどんな貂蝉像をお持ちでしょうか?良ければ教えてくださいね!
どぼん。
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