赤壁の戦い、最大の功績者は誰か?、、、となると、『三国志演義』好きな方なら諸葛亮孔明、『正史三国志』好きな方なら周瑜の名前をあげるかと思います。
しかし諸葛亮も周瑜も、立場としては、「作戦を立てる人」。劣勢を覆す作戦を考えた人がエライとされるのは当然ではありますが、どんな良い作戦も、それを実行する有能な現場指揮官がいてこそ、効果を発揮するもの。
そこで、「赤壁の戦いにおける現場指揮官のMVP」となると?これは、黄蓋の名前をあげる方が多いのでは?
迫る曹操軍の大船団に火をかけたのは、そもそも黄蓋の働きによるもの。この時の黄蓋は、巧みな偽装工作で曹操軍に投降すると見せかけ、乗っていた自らの船に火をかけ特攻したのです。
そんな危ないオペレーションを担当し、みごと火計を成功させた黄蓋。ところが赤壁の戦いでの活躍を最後に、その後『三国志演義』にはほとんど登場せず、いつのまにか死亡扱いになっている有様。
ですが『正史』の記述をよく読むと、この黄蓋、若い頃は後漢王朝の中央からも目をかけられ、都での出世の機会もあったというほど有能さが諸方に知られていた人物でした。
孫堅への忠義から中央での出世を断りましたが、孫一族への忠義というリミットを外せば、じゅうぶんに歴史の中心で活躍できた人物だったのではないでしょうか?そこで今回は、実際には孫家への忠誠を守り呉の一将軍としての生涯を終えた黄蓋に、スペシャルなイフ展開を考えてあげましょう!
すなわち、孫堅への忠義がなければ漢王朝に採用されて中央政界にも出ていたかもしれない黄蓋が、人生の後半から大逆転して、天下取りに参加するチャンスはあったか!?
この記事の目次
史実とイフを分ける黄蓋の運命の分岐点は「赤壁の戦い」での重傷時
黄蓋が天下取りの覇道へ邁進するためには、まず、孫堅とその一族への恩義を忘れてもらわねばなりません。もっと踏み込んでいえば、人生のどこかで、孫堅との日々の記憶どころか、自分の名前が何かもわからなくなるほどの記憶喪失に陥ってもらう必要があります。
そんなタイミングが、黄蓋の生涯のどこかに、あるのでしょうか?あります!
先述した、赤壁の戦いのタイミングです!『正史三国志』の赤壁に関する逸話のひとつに、以下のような話が残っているのです。
「曹操の船団に火計を仕掛けて成功させた黄蓋だが、その時、本人も乱戦の中で重傷を負った。呉の兵士たちが重傷の黄蓋を発見して船に助け出したが、それがまさか黄蓋将軍だとは気づかず、そこらのケガ人と同じように船の厠に放置した。
後からやってきた韓当が、そこに倒れている重傷者が黄蓋であると気づき救出したおかげで、黄蓋は無事に呉の本陣に帰還し手当を受けることができた」と。この時の黄蓋の重傷というのは、おそらくは、呉の兵士たちにも一見では顔を識別できなかったほどの火傷だったのではないでしょうか?
全身火傷のために気を失い、厠に放置されていた黄蓋が、もしそのまま、韓当にも気づかれぬまま放置され、赤壁の戦いが終わってしまったら?
魏呉蜀いずれにも組さず!黄蓋、長江流域の海賊を地盤とす
「韓当が気づいてくれなかった世界線」の黄蓋は、たくさんの無名の兵士たちの死骸と一緒に、気を失ったまま、戦場跡に取り残されてしまいます。そこにやってくるのは、戦場跡での略奪を目的とした、曹操側でも孫権側でも、もちろん劉備配下でもない、長江流域で活動する海賊達。
彼らに発見された黄蓋は、鎧甲冑を引き剥がされそうになったことで、ようやく目を覚まします!「うぬら!何をするか!わしを誰だと思っとる?わしは、、、わしは、、、えーっと、だれだっけ?」ところが、人を見る目に長けた百戦錬磨の海賊たち、この火傷だらけの猛将の凄まじい剣幕に、「この方はタダモノではない!」と大いに感じて、黄蓋を手当し仲間に迎え入れるでしょう。
名前も過去も、そして都合の良いことに、孫堅や孫策や孫権への忠義も忘れてしまった黄蓋は、リミットが外れたように、その有能なリーダーシップを覚醒させ、みるみるうちに海賊の頭目になることでしょう。なにせ、もともとはプロフェッショナルの軍事指揮官。おまけに水軍の運用に長けており、「なぜか」火計による突撃作戦が上手なこの猛将。たちまちに長江一帯の海賊達を吸収し、かつての黄巾賊をも超えるような、野生の大勢力を、曹操や孫権や劉備とは別個に築くことでしょう。
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赤壁後のわずかな混乱期に乗じればあり得る?黄蓋まさかの逆転天下取り
海賊の頭目、黄蓋の天下取りのチャンスは、赤壁の戦い数年後のわずかな間。この間に海賊達を従えて長江一帯を取ってしまえば、孫権や劉備が何もできないうちに、空白地となっていた荊州をとり、川伝いに劉璋から益州をとり。
その次に、記憶をなくしたまま、孫権に襲いかかってその領土を取れば、中国南部をまるまるバックボーンに従えた状態で、なんとなんと、曹操との天下分け目の戦いに挑むことができます!
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ここで記憶が戻っても仕方がない!「このまま海賊王に、わしは、なる!」
曹操との天下分け目の戦場は、なんという運命のいたずら、またしても赤壁。「第二次赤壁の戦い」と呼ばれるようになる水上戦で、黄蓋は海賊軍を引き連れ、曹操の船団と対峙します。
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ですが、さすがにこのような、「どこかで見たような」風景を目にした時、黄蓋の記憶は蘇ってくることでしょう。
黄蓋「うわあ、頭痛が」
海賊「どうしました、おカシラ?」
黄蓋「なんということだ!いまさら記憶が戻った!わしは孫権軍の黄蓋じゃ!」
海賊「ええ?あの有名な黄蓋将軍?そうでしたかあなたが、、、記憶が戻った以上、ふたたび、黄蓋と名乗りますか?」
黄蓋「ばかをいえ!記憶をなくしていたせいとはいえ、仕えていた孫家を滅ぼしてしまったのじゃぞ!もはや黄蓋の名前を名乗ることはできん。よいな、わしはこれからも引き続き、名無しの海賊王じゃ!わしの正体が黄蓋だということは、くれぐれも、口外するなよ!、、、黄蓋だけに、な?」
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