『正史』『演義』の著者自身を含め、蜀びいきの方の多い『三国志』の世界では、そんな鍾会はもっと憎たらしい悪役に描かれてきてもよさそうです。しかし実際は、「そもそもキャラクターがよくわからない人」という印象の方が強いのではないでしょうか?
「鍾会 死亡」
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この記事の目次
長生きしたい人は絶対に真似をしないでください!死に急いでいるとしか思えない言動のムチャぶり!
この鍾会という人物、蜀漢を滅ぼし成都を占領するという一大功績をあげておきながら、その後の行動が以下のような次第なのです。
・ライバルである鄧艾を策略にかけて殺害する(しかもこの件、鍾会が一方的に鄧艾を憎んでいた可能性も高く、鄧艾のほうは鍾会をどう思っていたのかは不明)。
・なぜか姜維とつるんで、成都で独立して天下を狙おうという唐突な決起に出る。
・その際、部下の将軍たちを城内に閉じ込めて、「俺の反乱に加わらない奴はここから生きて出さないぞ」という強引なことをやった。
・案の定、誰もついて来ず、速攻で部下たちに裏切られて殺された。
彼の真意は、一体なんだったのでしょうか?
これだけの死亡フラグが連続していても気づかない鈍感力は凄い!
そもそもこの鍾会、あくまで『三国志演義』の展開に拠ってみた場合ですが、登場してからその最期まで、これほどありとあらゆる「三国志世界の死亡キャラのパターン(死亡フラグ)」を次々に踏んだ人間も珍しいのではないか、と思えるような生き様なのです。振り返ってみましょう。
・「秀才だがどうも言動が危なっかしい生意気な若造」として登場。危ないパターン
・毌丘倹の乱の際、すでに体調が悪かった司馬師に、「あなたが先頭に出ないと示しがつきません」とあくまで戦場に出ることを勧めた。
つまり間接的ながら、司馬師夭折の原因を作ったのは鍾会
・その司馬師の弟、司馬昭に「鍾会は素晴らしいやつだ」と鳴り物入りで迎えられる。部下粛清に余念のない司馬昭にこう言われることは、あまり嬉しくないことのはずだが、鍾会は素直に喜んでいた模様
・蜀攻略に出発する際、その司馬昭が、別の部下に向かってこっそりと、「どうせ鍾会は野心を抱くかもしれんが、そうなったところで鍾会の人望には誰もついて来ないから大丈夫だ」というセリフを吐いている。全部、その行動が見透かされている上に、粛清フラグが立っている
・蜀攻略に出発する際、「鄧艾と鍾会はきっと蜀を倒すものの、生きて帰ってくることはないでしょう」という予言めいたことを言う人物が現れた。三国志世界のこういう予言はまさにフラグ
・成都を攻略した後、いざ叛旗を翻そうとした頃合に、「数千匹の大蛇に喰われる夢」を見ている。これもどう考えても死亡フラグ
ともあれ、これほどに死亡への伏線が張られているのに、まったく動ずることなく司馬昭への反乱という無茶計画へと邁進していく鍾会の鈍感力こそ、ある意味、すさまじいというべきでしょうか。
まとめ:よく見ると本当にあくどいのは姜維のほうかもしれない
もっとも、最期の方の鍾会については、姜維という老練なベテラン武将にまんまと踊らされているようなところもあります。
「鄧艾はさっさと始末しておいたほうがいいぞ」と鍾会に吹き込んだのも姜維です。ちなみにこの時、姜維は既に六十歳に近づいている年齢。かつての敵とはいえ、これほどのベテラン将軍が「君には見どころがあるから、いろいろアドバイスをしてあげよう」と寄ってきたら、まだ三十代の鍾会は舞い上がってしまったことでしょう。
三国志ライターYASHIROの独り言
姜維のしたたかな言動は他にもあります。
先に述べた「数千匹の大蛇の夢」の件。
当然、「これは悪夢かな」と気持ち悪くなっていた鍾会ですが、そこにやってきた姜維がすかさず言ったことは、「いや、大蛇が出てくる夢というのは、龍が出てくる夢と同じで、たいへんな吉兆ですぞ!」
それで「そうか!よかった!」と元気を取り戻す鍾会も鍾会ですか、一世代分も年齢の違う若者をけしかけて自滅に突っ走らせる姜維こそが、おそろしい。
もちろん姜維には、鍾会をけしかけて踊らせることで、それを踏み台に蜀漢を復活させようという深謀遠慮があるわけですから、最初から鍾会など使い捨てる気まんまんなのでしょうが。
姜維が鍾会をけしかけたことで、鄧艾を含め、たくさんのマジメな忠勤人が非業の死を遂げたことを考えると、空恐ろしさを感じざるをえないのでした。もっとも、その姜維にまんまと調子に乗せられていた鍾会が、やはり一番悪い、という見方もできますが。
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