読者の皆さまは「黄金の馬」「幻の馬」と呼ばれるアハルテケをご存じでしょうか?
アハルテケはその金色に輝く毛並みから、非常に珍重されているのみならず、『史記』に登場する汗血馬だったのではないか、と言われている世界的に有名な品種です。そこで今回は、そんなアハルテケの価格について調べてみました。
アハルテケとは?
アハルテケとは、中央アジア原産の馬です。アハルテケの体高は140cmほどと、競走馬でおなじみのサラブレッドと比べるとやや小ぶりに映ります。一方、アハルテケは他の品種に比べて特に長い耳とまばらなたてがみ、強く丈夫な脚が特徴となっています。中でも、アハルテケの最大の特徴は、その光輝く毛並みではないでしょうか。
アハルテケは光り輝くような毛並みを持っており、非常に美しいことで有名です。特に、アハルテケは砂漠地帯で育まれたことから、砂漠の風景に溶け込みやすいクリーム色の河原毛や月毛と呼ばれる毛色をした個体がおり、これらのアハルテケはまるで全身が黄金で出来ているかのようです。
アハルテケは体格が小さいこともあり、短距離を走ることに特化したサラブレッドに比べて短距離の走力は劣ります。とはいえ、砂漠の厳しい気候に鍛えられた卓越した持久力を持っており、限られた水と食糧で長距離を走破できるタフな足腰が特徴です。
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原産地のトルクメニスタンではアハルテケは販売禁止?
さて、そんな「幻の馬」ことアハルテケですが、現在の一大産地であるトルクメニスタンではとても手厚い保護を受けています。トルクメニスタンでは、国章にもアハルテケがあしらわれるほどであり、まさしく「国の宝」として大切にされているのです。
従って、世界で最も多くのアハルテケが飼養されているトルクメニスタンでは、保護動物であるアハルテケは当然輸出・販売は禁止されております。なお、アハルテケは、外国の首脳が訪問した際に友好を祝う贈り物として贈られるものであり、その扱いはさながら中国におけるジャイアントパンダに等しいほどです。
では、日本に住む我々がアハルテケを手に入れることはできないのでしょうか。実はそのようなことはありません。調べた結果、アハルテケを手に入れる方法はちゃんと存在しています。
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アハルテケの入手方法とは?
現在、世界で最も多くのアハルテケが飼養されているのはトルクメニスタンです。しかし、トルクメニスタン以外にもヨーロッパ諸国やアメリカ、日本などでもアハルテケは飼養されています。
1881年にロシア帝国がトルクメニスタンを征服した際、現地の遊牧民が飼育していた「黄金の馬」に魅了されたロシアのクロパトキン将軍はそれを「アハルテケ」と名付け、以降ロシアから世界各地にアハルテケの種牡馬や繁殖牝馬が輸出されたと言われています。つまり、現在世界各地にいるアハルテケはそれらの子孫ということになるのです。
なお、トルクメニスタン以外の国で飼養されているアハルテケは保護の対象にはなっておらず、お金さえ出せば購入することができるのです。
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アハルテケの価格とは?
それでは、アハルテケはどの程度の価格で購入できるのでしょうか?馬の通信販売を行っているehorses.comというウェブサイトで調べてみました。上記のサイトで調べた結果、アハルテケは最も安いもので約2,900ドル(約32万円)、高いものでは約117,000ドル(約1300万円)となっています。
こうしてみると価格の差が大きいように見えますが、売りに出されているものをざっと見ると、おおよそ1万ドル〜2万ドルの間で収まっているものが多いように思います。比較的価格が安いものは、1〜2歳の若駒が中心で、調教が行き届いた5歳以上の馬は最低でも1万ドル以上の値はついている印象です。やはり、若駒は乗馬にするにしても、馬術競技で用いるにしても調教を施す必要があるということでしょうか。
また、毛色も他の品種などでも見られる栗毛や鹿毛の馬に比べ、金色に見える月毛の方が価格が高くなっている傾向があるように思います。
こうしてみると、競走馬でお馴染みのサラブレッドなどに比べると、アハルテケは思いのほか価格が安いようにも思います。サラブレッドであれば、1頭数百万円はざらであり、中には1頭数億円する高額馬も珍しくありません。やはり、競馬は巨額の金銭が動くということもあって、競走馬の価格は高額になっているということなのでしょうか。
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三国志ライター Alst49の独り言
いかがだったでしょうか?
「幻の馬」といわれるアハルテケも、自動車の新車程度の価格であり、購入しようと思えば購入できるような価格ということに驚いたのではないでしょうか。とはいえ、馬というものは、今も昔も、日々のエサ代や厩舎の管理費などで巨額の費用が掛かるものです。だからこそ、古代から現代に至るまで、馬はお金持ちの持つ動物ということなのでしょうね。
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