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この記事の目次
麒麟がくる第十六話 感想あらすじ「雪斎の死」
同じ頃、駿河では今川義元の参謀役である太原雪斎が病死していました。これは、隣国にも大きな影響を与えると見た今川義元は領内に緘口令を敷き、医者であるが故にその最後を看取った望月東庵と駒も臨済寺で軟禁状態に置かれています。
さて、東庵と駒が寺の庭で豆を煮ていると、その匂いを嗅ぎながら近づく若者がいました、成長し松平元信と名を改めた竹千代です。さらに身分としては貴人に入る元信は気さくに、東庵と駒に話しかけてきます。
史実の家康も蓮根のテンプラのような田舎臭い料理が好きだったようで、大御所となってから庶民と碁を打つなどしていた事が分かっています。ただ、これは庶民が好きという意味ではなく庶民の中に入り、その本音を聞き出したいという実利面がありました。
そりゃそうです、貴公子の家康に真の意味で庶民の本音は分からない。庶民の逞しさや生きる為の狡さや汚さに対する理解なら、出自が農民の木下藤吉郎の方がずっと上ですよ。
東庵や駒が元信と会話しているとそこへ、菊丸改め、春次が元信に薬を届けにやってきます。
こんなに若い頃から薬を服用して健康維持とは元信は気が長いのかジジ臭いのか。さて、情報通の春次は美濃で一大事件が起こり、斎藤道三と斎藤高政が戦になりそうな気配だと東庵と駒に告げます。
ここで、吹っ切った筈の十兵衛への想いが揺り動かされた駒は、居てもたってもいられなくなり、夜、春次を呼び出して、自分を駿河の国境まで連れ出して欲しいとお願いします。
緘口令下の臨済寺を飛び出せば、スパイと見做され死刑は免れませんが、駒に惚れている春次は断れずに承諾しました。
麒麟がくる第16話 感想あらすじ「国替え」
同じ頃、稲葉山城では酒宴が開かれ、叔父の光安が下手な踊りを披露して高政や国衆に大笑いされています。光安が高政に必死に媚びているのは、領地である明智荘の安堵を保障してもらう為でした。そこに、高政に呼ばれた十兵衛がやってきて、ばったりと鉢合わせしました、気まずい瞬間です。
嫌ですねぇ、甥の前ではせめて父替わりとして威厳を保ちたい光安のプライドを高政は全く無視してますね。自分が父に大事にされた記憶がないから、甥と叔父の関係性にも配慮を払う事が出来ないんです。
十兵衛は、尾張で帰蝶に会って道三を煽るなと釘を刺してきたと語り、高政にも戦を止めよと厳しい口調でした。
それに対し、高政は自分も戦は気が進まないので、あちらが攻めてこない限りはしないと答えました。さらに、ここで高政は十兵衛に対し、領地替えを考えていると打ち明けます。つまり、光安に明智荘を返還させ家督を十兵衛に次がせた上で、もう少し広い領地を与えると言うのです。十兵衛の顔には、ありありと不満の色が浮かんでいました。
麒麟がくる第十六話 感想あらすじ「叔父の決意!」
明智荘に戻った十兵衛が食事をしていると、道三より高政と戦を開始するので大桑城に集結せよという号令がかかります。これに対し光安は、道三に付いて大桑城に向かうと十兵衛に告げます。
光安は、高政に領地替えの話をされたようです。隠居して十兵衛に家督を譲れと、それだけなら文句はありません。しかし明智荘を取り上げて他所の土地を与えるという話です。光安はこれに激怒しました。土岐源氏の先祖が守り、兄の光綱が守り自分に託した明智荘を取り上げるなど断じて受け入れられないと言うのです。
この感覚は当時の武士の平均的な感覚でした、武士は一所懸命と言い、自分の一所(領地)を守るのに命を懸けます。元の領地に、さらに加増というのなら兎も角、今の領地を取り上げて他所に土地をやるというのは土地に根差した武士には受け入れ難い恥辱でした。
「わしは高政ごときに仕える事は出来ぬ、わしの主は道三様じゃ」
小鳥を飼い、平凡な力量の穏やかな叔父が見せる激情、でも、これは本能寺の変の伏線なんですね。
明智光秀が信長を討った動機の一つにも、これまでの領地を取り上げて、まったく未知の土地を与えられたというものがありました。でも、この時の十兵衛には光安の心情は分かりません。十兵衛は、あと二日だけ時間を下さいと告げ、道三を止める為に大桑城に向かうのです。
麒麟がくる第16話 感想あらすじ「大きな国」
大桑城に入った十兵衛は、そこで伊呂波太夫の姿を見かけます。道三は、僧衣の上から鎧を着て、戦仕度もせずに何をしに来た?と問います。十兵衛は単刀直入に出陣を止めるために参りましたと答えました。
道三は、先ほど帰蝶に頼まれた伊呂波太夫から越前に落ち延びる手配があると言われたが断ったと告げ、帰蝶は戦をしてもどうせ勝てぬと言うのだと言い、以下のように問いました。
「わしも迷うた。それゆえ少し眠り、仏のお告げでも聞いてみようと思うたが、、仏は何も申されぬ。当てにならぬお方じゃ。高政はのう、、わしがまことの父親だと分っておる。されど土岐頼芸様が父だと言い触らし、己もそうありたいと思うてきた。
高政は人を欺き、自らを飾ろうとしたのだ。十兵衛、人の上に立つ者は、正直でなくてはならぬ。偽りを申すものは必ず人を欺く。そして国を欺く。決して国はおだやかにならぬ。わしはケチだがそれをわしは隠したことはない。そうは思わぬか?」
十兵衛は、それはそうだと思うと言うと、道三は我が意を得たりとお前は正直者じゃと褒めました。されど戦は、と諫言しようとする十兵衛に、道三は突き放すように戦仕度をせィと大声で怒鳴ります。
道三は槍を片手に、まるで武蔵坊弁慶のように仁王立ちになりました。
「十兵衛、わしの父親は、山城国の油売りで、美濃で財を為した。美濃も尾張もない。皆一つになればよい。近江も、大和も。さすれが豊かな大きな国となり、誰も手出しは出来ぬ。わし一代でできなかったことを、お前がそれをやれ
わしも美濃一国で終った、、、、しかしあの信長という男は面白いぞ。あの男から目を離すな。
信長となら、そなたやれるやもしれぬ。大きな国を造るのじゃ、誰も手だしのできぬ大きな国を。さらばじゃ」
ああ、もう道三は全て分っているのです。
すでに勝ち目はないのだと、自分は高政に討たれるのだと、それでも人を欺く不正直者を美濃にのさばらせて領民に不幸を強いておき、自分1人安閑と越前で余生は送れない。高政の父として、それは許されないと覚悟したから美濃に残ったのでしょう。
麒麟がくる第16話 感想あらすじ「敵は高政様」
明智荘に戻って考え込んでいる十兵衛に、光安の息子の明智左馬之助が飛び込んできます。父の光安が、押しとどめるのも聴かずに道三に従い鶴山に出陣したというのです。さらに、高政からも合戦の加勢を催促する使者が明智荘に来ていました。
緊迫する家中で十兵衛は考え込みますが、愛妻熙子の「何事も十兵衛様の御心のままに」という言葉で吹っ切れます。十兵衛はすべての始まりになった鉄砲を取り出し、道三や高政との思い出を辿っていきました。
そして、引金を下ろすと決心して「戦じゃ、敵は高政様」と明智の家中に宣言したのです。かくして明智家は全て、道三に味方すると決定し、十兵衛も鶴山へと急ぐのでした。
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