劉備(りゅうび)に蜀獲りを進めていた張松(ちょうしょう)の密書が、
兄張粛(ちょうしゅく)から劉璋(りゅうしょう)に漏れた事で、
劉備と劉璋の蜜月は、短期間で終わりを告げました。
前回記事:88話:劉備を大歓迎する劉璋だが張松の失策で崩壊する
劉璋は劉備に絶縁宣言
劉璋は激怒し、益州の全武将に伝令を放って、今後一切、劉備と交わりを
持ってはならないと厳命します。
完璧な絶縁宣言であり、この状態で劉備と劉璋は完全な交戦状態になります。
龐統:「まあ、仕方がありません、いずれこうなる事は分かっていました。
では、早速、蜀獲りを開始しますか、、」
龐統(ほうとう)は、冷静に言うと、手近な涪水関(ふすいかん)を
計略で落す事を進言します。
天才軍師・龐統の計略
涪水関の守将は、楊懐(ようかい)と高沛(こうはい)という武将でしたが、
龐統は、ここに劉備の名義で手紙を出させます。
「劉璋殿に疑いを持たれたようなので、名残惜しいが荊州に帰ります
どうか別れの挨拶を受けて頂きたい」
演義では、これを聞いた楊懐と高沛は、別れの宴にかこつけて、
劉備を斬ろうとしたとありますが、実際には、
両名にそのような相談はなく、単純に
「帰ってくれるなら、戦争も避けられ有り難いことよ」
と素直に劉備一行を涪水関に呼んだようです。
しかし、実は、これは龐統が立てた罠でした。
龐統は、楊懐と高沛の両名を捕えて斬り、涪水城と守備兵を
丸ごと手にいれようとしていたのです。
零陵先賢伝に記されている劉備の卑劣な行動
「零陵先賢伝」という書物によれば、劉備は、宴もたけなわの時
楊懐の元に近づき、腰にある匕首を見せてくれと、何度も言ってきたようです。
楊懐が、仕方なく、腰から匕首を取って劉備に差しだすと、
急に劉備は顔色を変え大きな声で呼ばわりました。
劉備:「楊懐、高沛、貴様達は、宴にかこつけて私を斬るつもりだな!」
その大声で、あらかじめ伏せておいた劉備の兵が、
酔っている楊懐、高沛を抑えこんで縛り上げました。
「おのれ、騙しおったな劉備、何が仁君だ、
この泥棒猫めが!!今に神罰が降るぞ!!」
楊懐は、劉備が自分を騙した事に憤り、首を斬られる寸前まで
劉備を罵倒し続けたと言います。
劉備は、即座に兵士に命じて、楊懐と高沛の首を斬り落とします。
涪水関の兵士達は動揺するが劉備が落ち着かせる
突然に始まった血の粛清劇に、涪水関の兵士達は動揺しますが、
そこは修羅場をくぐり抜けた劉備、落ち着いています。
劉備:「兵士達よ、落ち着きなさい。
楊懐と高沛は、卑劣にも私を宴に呼び付け、
隙を見て殺そうとしたから、止むを得ず返り討ちにした。
しかし君達は何も知らないのだから、危害は加えない
安心していなさい。」
そう言って劉備は、兵士達に酒を振るまい、
日頃の働きを褒め称えたと言われています。
劉備:「兵士諸君、劉璋は、このように卑劣な手を使う君主だ、、
君達だって、無能な劉璋には、愛想が尽きていただろう?
ここは、私と共に立ちあがり劉璋を廃して
蜀を素晴らしい国に造り変えようではないか?」
涪水関の兵士達は、仕えてきた楊懐、高沛もすでになく、
劉璋にも、心服しているわけでもないので、
劉備の扇動に乗り、劉備軍と合流して、涪水城に入城します。
龐統の完全勝利
すでに涪水城には、殆ど兵士が居なかったので、
劉備は、悠々と無傷で、入城する事に成功したのです。
これは、劉備に策を授けて、楊懐と高沛を斬って兵力と、
涪水関を奪い取った龐統のあざやかな作戦勝ちでした。
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