張任(ちょうじん)の立て籠る雒城は名城であり張任が守る限りは陥落しない、、
そのような情報は、先の戦いで劉備(りゅうび)軍の捕虜になった武将達も、
口ぐちに言っている事でした。
そこで、孔明(こうめい)は、張任を戦場におびき出し、
二度と、雒城に戻さない計略を考案します。
孔明は雒城の近くに架かる金雁(きんがん)橋に目をつけます。
前回記事:92話:劉備を徹底的に追い詰める張任
孔明 対 張任
翌日、孔明は極く少数の手勢で、雒城を攻めさせました。
城内から、これを見ていた張任は、これを侮ります。
張任:「ふん、この程度、蹴散らすのはわけもないわ」
張任は雒城を飛び出し、劉備軍を蹴散らします。
蹴散らされた劉備軍は、金雁橋を通過して、逃げていきます。
張任もそれを追いかけると、橋の先には、孔明が車に載って座っています。
孔明:「張任とやら、私は諸葛亮孔明だ、、聞いた所では、お前は
少しばかりの武勇と知略を鼻にかけて自惚れているそうだが、、
とんだ井の中の蛙というものだ、、
あの曹操100万の大軍でさえ、私を恐れて逃げる程であるのに
お前ごときのちっぽけな知略では、この孔明には歯が立つものか
無駄な抵抗はやめて降伏するがいい」
孔明の挑発にも動揺しない名将 張任
孔明の挑発ですが、流石に張任は、軽率には飛び付きません。
しかし、張任の見た所、孔明の周辺は老人兵ばかり、
隊列もバラバラでちっとも戦えそうではありませんでした。
(孔明は、神算鬼謀と聞いていたが、どうやら買いかぶりらしい
この程度の弱兵しか扱えぬようでは、ろくな戦は出来ん、、
今の内にひっ捕らえて、劉備の戦意を挫いてやろう)
張任は、馬に鞭をあてると兵と共に、金雁橋を渡ります。
それを見た、孔明は、急いでその場を離れました。
孔明の策略が張任に通用するのか?
張任:「はっは!逃げるか腰抜けめ!天才軍師が聞いて呆れ、、」
張任が言いかけたその時、橋の左から劉備、
右から厳顔(げんがん)の軍勢がこちらに向かってくるのが見えました。
張任:「しまった、謀られたのか!」
張任は、金雁橋を渡って逃げようとしますが、すでに、
橋は、趙雲(ちょううん)によって落され、
北は趙雲の軍勢に包囲されています。
「うぬぬ、、止むをえん!!」
張任は、ならばと残された南の道を逃げますが、
そこへ、魏延(ぎえん)の部隊が襲い掛かり、
さらに黄忠(こうちゅう)の部隊が、
襲い掛かり、張任の兵力を減少させました。
張任 対 張飛
張任は、たった一人で逃げに逃げますが、
そこは、行き止まりで、張飛(ちょうひ)の伏兵が待っていました。
張飛:「どうする?張任、、俺と一騎打ちするか?」
余裕で蛇矛を振り回す張飛に張任は、挑みかかりますが、
所詮、歯が立つものではなく、馬から突き落とされて、
もがいている所を縄で縛られてしまいます。
張任は、こうして、劉備の軍門に引き立てられていきました。
張任を劉備軍に加えたい劉備
劉備は、自分を計略で散々悩ました張任の力を気に入り、
是非、配下に加えたいとスカウトします。
しかし、張任は、、
張任:「忠臣は二君に仕えぬものだ、、これまで多くの部下を失いながら、
わしだけがおめおめ、敵の家来になるなど、それで男が立つものか
さっさと首を刎ねてくれ!」
と言い続けるばかりで、説得には耳を貸しませんでした。
劉備は、その潔さと勇気を心の底から惜しみましたが、
軍規を守る為に、張任の処刑命令を降しました。
張任の勇気に惹かれた劉備
劉備は、張任の亡きがらを、金雁橋の橋の側に埋めて、
ここに張任の忠義を称える碑を建てたという事です。
人物を大事にし、惚れこんだ武将には、敵も味方もなく
手厚く遇するという劉備らしさが見える逸話ですね。
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