合肥の戦いで、張遼(ちょうりょう)の猛攻撃にあい、追い詰められた孫権(そんけん)は、濡須口(じゅしゅこう)に退きます。そこへ、ついに曹操(そうそう)が自ら軍を率いて攻め込んできました。濡須口の戦いは、合肥を巡る曹操VS孫権の、クライマックスなのです。この戦の中、熱い男の友情が芽生えました。
危険な関係 甘寧と凌統
凌統(りょうとう)はかつて、黄祖(こうそ)との戦いの中、父凌操(りょうそう)を甘寧(かんねい)に殺されていました。父の仇である甘寧は、凌統にとって討つべき相手。その宿敵が、あろうことか孫権に投降して仲間になってしまいました。
凌統は「父の恨み!」と甘寧を斬ろうとしますが、そこは孫権に止められます。
敵軍として戦っていたときの事件だということは頭ではわかっていても心では納得することができず、凌統は甘寧が活躍するたびに悔し涙を流します。
濡須口の戦いでは、甘寧と共に戦うことになったので、「私が先陣だ!」と争うようにして前に出ます。
そこへ、曹操軍の矢が襲い、凌統は馬を射られてしまいます。たまらず落馬したところへ、曹操軍の楽進(がくしん)が槍をつきつけます。もうだめだと思った瞬間、どこかから矢が飛んできて、楽進の馬を射抜き、楽進も落馬します。
凌統は九死に一生を得ました。我に返ると、矢を射かけたのは甘寧だったと知ります。命を救われた凌統は、ついに積年の恨みを水に流すことができました。これをきっかけに、二人は生死を共にする契りを結びます。
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調理に失敗した料理人をかばう呂蒙、ブチギレる甘寧
濡須口の戦いとは関係ありませんが、甘寧の仲直りにちなんで、もう一組のエピソードをご紹介します。甘寧はすぐにかっとなり、手が出るくせがありました。ある日、厨房担当の者が失敗をしたことで甘寧を怖れ、逃亡します。
呂蒙(りょもう)は「失敗なんて誰にでもあるじゃないか」と厨房当番をかわいそうに思ってかくまってやりました。
甘寧がやってきて言います。
甘寧:「殺しやしないさ」
呂蒙:「約束するかい?」
甘寧:「もちろん」
それなら……、と呂蒙は厨房当番を返しますが、
甘寧は
「なーんて、な」
と、約束をほごにしてバッサリ殺してしまうのです。
約束を破って料理人を切った甘寧
さすがの呂蒙も怒りました。もう、激おこプンプン丸です。
甘寧が「これはやばい」と思って謝っても、聞く耳を持ちません。
呂蒙:「甘寧のやつ、殺してやるっ!」
すると、呂蒙の母親が必死に止めます。
呂蒙母:「そんなことしたら、孫権様に合わせる顔がありませんよ」
呂蒙は仕方なく怒りをひっこめ、甘寧と和解することになりました。