三国志に登場する英雄豪傑の話、特に怪力自慢の話は、現在の常識から考えると
信じがたいものが多いので、私達はそれを昔話の誇張だと考えています。
しかし、現代医学の発達は、超人を産み出す不思議な病の存在を確認しました。
それは、生きている限り筋力が発達しつづけるというミオスタチン関連筋肉肥大
という病気で、現在確認されているだけで全世界に100名ほど存在しています。
この記事の目次
怪力の超人を産み出すミオスタチン関連筋肉肥大とは何?
ミオスタチン関連筋肉肥大とは、
①筋力の抑制を司るたんぱく質であるミオスタチンが
遺伝子の変異で分泌されない。
②ミオスタチンは分泌されるが筋肉細胞がその信号を
無視して増殖を続けてしまう
という病気の事です。
このミオスタチン関連筋肉肥大の患者は、①ミオスタチンを分泌できない遺伝子
変異のケースでは通常の人の2倍の筋肉量、②ミオスタチンは分泌できるが、
筋肉がその信号を受容できないケースでは1・5倍という筋肉量を持つ事になります。
もちろん、ミオスタチン関連筋肉肥大でも、筋肉がそこまで増加しないケースや、
力持ちではないというケースも存在しますが歴代のハンマー投げや重量挙げの
オリンピック選手の中には、ミオスタチン関連筋肉肥大の人が多く居たのではないか?
と考えられています。
このミオスタチン関連筋肉肥大は、1990年頃に認められた病気で、これにより、
神話や伝説の類と考えられていた怪力の英雄豪傑の話が真実だったのではないか?
と考えられるようになっているのです。
三国志でも屈指の怪力の持ち主、典韋はミオスタチン関連筋肉肥大だった?
豪傑揃いの三国志の武将の中でも正史においても、その怪力が特筆されているのは
曹操のボディーガードだった悪来(あくらい)典韋(てんい)です。
例えば典韋はまだ曹操に仕える前に、張邈(ちょうばく)配下の
趙寵(ちょうちょう)に仕えていましたが、その時に張邈は牙門旗(がもんき)
といわれる総大将の軍旗を大きく造りすぎてしまい誰も持ち上げる事が出来ず
困り果てていました。
それを見た典韋は、両手でも持てない牙門旗を片手で立ててみせて
周囲を驚かせたと言われています。
実は、この様子を曹操(そうそう)の側近の夏候惇(かこうとん)が見ていて、
曹操軍にスカウトしたのが典韋が曹操に仕え始めた切っ掛けだったりします。
誰も持ち上げられない重量の軍旗を片手で持ち上げる怪力には
ミオスタチン関連筋肉肥大による、屈強な筋肉を連想してしまいます。
張繍の配下の武器を砕いてしまう典韋の怪力
西暦197年、曹操は宛(えん)の張繍(ちょうしゅう)を撃ち破った時に、
未亡人の鄒氏(すうし)を巡り張繍と仲違いして張繍に謀反された事があります。
その時、典韋は曹操を守る為に大勢の張繍兵を相手にしますが、
典韋が双戟を振りまわすと、それにぶつかった敵の矛は十数本砕けたと言います。
はね飛ばされたではなく、砕けてしまうのです、典韋のとんでもない怪力ぶりが
分かる逸話ではないでしょうか?
また、典韋は双戟が使えなくなえると怪力で敵を二人脇に抱えて振りまわし、
その為に敵は誰も近づけなかったと言われています。
大の大人を両脇に抱えて自由を奪い振りまわすなど、並の筋力ではありません。
そして、典韋の得物は、双戟や長刀が主でしたが双戟の重さは81斤あり
現在の重量では18㎏もあります、これは演義の記述ではなく正史なので
おそらく事実であろうと思います。
こんな重さの武器を振りまわされて、命中したら、例え兜や鎧を装備しても、
ほぼ意味は無かったのではないかと思います。
ミオスタチン関連筋肉肥大の特徴、大変な大食い
ミオスタチン関連筋肉肥大の患者には、とても辛い部分があります。
それは、肉体が脳に回されるべき栄養素まで筋肉に優先して使ってしまうので、
常人の何倍という大量の食事を摂って補わないと成長期には
脳の機能不全になってしまう恐れがあるという事です。
典韋にも、大食いの逸話があり食事の給仕は一人では間に合わず、数名で行い
左右から酒を注いで間に合う程であったと記録されています。
これは桁外れに食事量が多いというミオスタチン関連筋肉肥大の特徴ではないか
という感じがします。
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三国志ライターkawausoの独り言
中国に限らず、ギリシャにはヘラクレス、日本には、源為朝のように信じられない
怪力の逸話がある人物は存在します。
怪物と戦うヘラクレス、弓矢で船を沈めてしまう源為朝などは、その逸話も誇張の
ような感じがしますが、もしミオスタチン関連筋肉肥大であったなら、
その伝説の幾つかは事実だったのかも知れません。
本日も三国志の話題をご馳走様でした。