陳寿(ちんじゅ)が記した三国志は、裴松之(はいしょうし)によって補強され、
その後、紆余曲折を経て、三国志演義として完成していきます。
しかし、その途中で三国志の英傑達は民間伝承の主人公として、
あるいは戯曲の演目として様々な作品の中で登場していきます。
今回は、そんな民話の中の三国志を紹介していきましょう。
その名も曹操(そうそう)の三顧の礼です。
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この記事の目次
曹操、泰山の和尚から錦袋を授かる
曹操が、許昌(きょしょう)へ献帝(けんてい)を迎えた頃のお話です。
ようやく拠点を得て、帝を迎えた曹操は、広く賢人を招いて
国を強くしようと考えるようになっておりました。
それを聞いた泰山の老和尚(おしょう)は、曹操の屋敷へやってきて、
錦の袋を曹操に与えて言いました。
「敢えて、あなたを罵る人がいたら、この袋を開けてくだされ」
曹操は、よく分らないままに錦の袋を受け取り許昌に向かいます。
許昌では、曹仁が大暴れして民衆を苦しめていた
曹操が許昌に到着した頃、配下の曹仁(そうじん)が毎日のように
兵を率いては、民家に押し入り、強奪を繰り返していました。
そんな蛮行が3日続いた頃、通りに一枚の張紙が出現します。
曹操が許昌へ来て、民衆は大変に迷惑だyo! by荀彧
それを見た曹仁は怒り、張紙を引き剥がして曹操に見せます。
曹操「なんだと!わしが来て、民は迷惑してるじゃと!」
曹操は激怒して、荀彧を捕えようと思いましたが、
ふと、和尚から貰った錦袋の事を思い出します。
錦袋には、荀彧を賞賛する言葉が・・
曹操が、錦袋を開けてみてみると、そこには紙があり、
このように書かれていました。
“許昌の荀文若は才能がある若者である”
曹操「そうか!和尚はこれを言いたくて、錦袋をくれたのか!
あやうく賢人を処罰する所であったわい」
曹操は考えなおして、すぐに曹仁を荀彧の下に使いに出します。
荀彧は、曹操を試していた・・
荀彧は、曹操の才能を知り、その配下になろうと考えましたが、
傲岸不遜な男に仕えたくないので、わざと張紙で曹操を怒らせ、
どうするか反応を見ていました。
荀彧「ほう、第一段階は合格だ、、しかし、次はどうかな?」
曹仁が荀彧の屋敷を探し当て、ドンドンと戸を叩きますが、
荀彧は、居留守を使って出てきませんでした。
曹仁「なんだか、人は居そうなんですが、反応がありやせん」
曹仁から報告を受けた曹操は、
荀彧がまだ自分を試しているのだと直感し、
自ら出向く事にしました。
大雪の日、ヒゲが凍るまで待つ曹操
曹操が、荀彧の屋敷に出かけた日は大雪の日でした。
聚奎街(しゅけいがい)という所にあった荀彧の家の戸を叩きますが、
大門には鍵が掛っていて人はいないようでした。
曹操は、荀彧が戻ってくる可能性も考え、
ヒゲが凍りつくまで待った後に帰りました。
別の日、曹操はまた、忙しい公務の間を縫って聚奎街の
荀彧の屋敷を尋ねます。
しかし、今度は家人には会えましたが、肝心の荀彧が
許田(きょでん)まで泊りがけの狩りに出ていて会えませんでした。
曹操、墓掃除をしていた荀彧と面会
曹操は諦めず、三度、聚奎街の荀彧の屋敷を尋ねると、
今度は、近くで先祖の墓の掃除をしているとの返事でした。
曹操は、飾り立てた馬車を用意して墓に向かいます。
曹操が見た、荀彧は二十歳を過ぎたばかりの青年でした。
荀彧は孫子兵法書を熱心に読んでいて、
曹操が来たのに気づいていないようです。
その時、風に煽られて、兵法書が飛ばされました。
曹操はそれを追い掛けて拾い荀彧に手渡します。
曹操「荀彧様、曹操孟徳がご挨拶にやってまいりました」
※なに、このライトノベル風のシュチュエーションw
曹操の殺し文句炸裂、沢山、罵って下さい!
荀彧「私は一介の庶民に過ぎません、どうしてそのように、
丁重な物言いをなさるのですか?」
曹操「お見受けするに、あなたには王佐の才がおありです。
私は、あなたと天下の事業を共にしたく参上したのです」
荀彧「私は、あなたを罵りました、腹は立ちませんか?」
曹操「なんの!なんの!、道理のある事であれば、
幾ら罵ってもらっても構いはしません」
やった、曹操の殺し文句、いくらでも罵って!が出ました!
気持ちがグラついた荀彧は、最期にこう言いました。
「実は、墓を掃除している途中に足を痛めて
歩く事が出来ません」
「ハハッ!お安い御用ですとも・・」
曹操は、八重歯を光らせ、前に出て、
荀彧を馬車に乗せると、自分の屋敷に連れて帰りました。
※だから、なんで恋愛物のラノベ風なんだよ・・
以後、荀彧は曹操の軍師として、沢山の計略を立てて、
魏の天下統一に大きく貢献しましたとさ おしまい・・
三国志民話研究家、kawausoの独り言
モデルにしているのは明らかです。
しかし、民話に多い、悪役曹操ではなく、少なくとも人材獲得には心を砕き、
大雪の日にヒゲを凍りつかせてまで、荀彧を熱心に招く曹操と、
それを試す荀彧という軸が物語を面白くしています。
この民話を考えた人は、曹操と荀彧が好きだったかも知れませんね。
参考文献:三国志、中国伝説の中の英傑
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