曹操(そうそう)と言えば、人材コレクターとして、少しでも「お?」と思う人材には、
惜しみなく労力を使い自陣にスカウトしてしまう事で知られています。
その節操の無さは、徐庶(じょしょ)のような劉備(りゅうび)に属していた人材まで
及びますが、実は曹操の毒牙は、あの孔明(こうめい)にまで延びていた事が分りました。
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無名時代の孔明に鶏舌香を五斤プレゼント
あの曹操が孔明にツバをつけていた?劉備が激怒しそうな動かぬ証拠は、
全三国志文という、清の嚴可均(げんかきん)がまとめた三国志の時代の人物の書簡や
言論をアチコチから集めてまとめた文書にあります。
それによると曹操は、まだ無名時代の孔明に以下のような手紙を送っています。
「今奉雞舌香五斤 以表微意」
翻訳:今回、鶏舌香を五斤お送りしました、これは僅かばかりの私の気持ちです。
おおっ!これは、かなりイミシン、、確かに鶏舌香を五斤送って、
私の気持ちとしますとありますよ。
これは、かなりクサい、今となっては曹操も孔明も知られたくない過去かもです!
盛り上がってるけど、そもそも鶏舌香って何?
鶏舌香(けいぜつこう)は、香辛料のクローブの事です。
クローブは、インドネシアのモルッカ諸島原産の常緑低樹でインド医学の
アーユルヴェーダでは、つぼみを乾燥させ患者の治療にも使います。
胃腸を刺激して、食欲を増進する効果を持っているようです。
クローブには、甘みと苦み、そして舌にピリッと来る刺激があります。
森下仁丹にも配合されていると言えば、40代の人には大体の味が分るでしょうか?
このつぼみの形が鶏の舌に似ている事から、中国では鶏舌香と言います。
後漢末の中国において応劭(おうしょう)が書いた「漢官儀」という書物には、
当時の尚書郎(しょうしょろう)が皇帝に話をする際に鶏舌香を口に含んで
口臭を消していたという記録が残っているようです。
今風に考えると、ガムをかんで口の臭いを消していたという事ですね。
誰だって、自分に報告してくる部下の口が臭かったら嫌ですもんね。
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曹操が孔明に鶏舌香を送った理由
こうして考えると、曹操が孔明に鶏舌香を送った理由も見えてきます。
鶏舌香=尚書郎=宮廷で皇帝に仕えるなのですから・・
「チミも漢室で優れた才能を活かしてみないか?ウヒョ!」でしょう。
しかも五斤というのは、今の重さだと1キロにもなります。
今で言えば、ガムみたいなものとはいえ、当時は薬でもありますし、
はるか東南アジアの産物ですから、値も張ると思います。
当時の士大夫に取って、皇帝の側近くで仕える尚書郎は花形ですし、
出世の早道でもあります。
いかに孔明と言っても、気持ちはグラついたのではないでしょうか?
或いは、このようにも考えられる・・
ただ、この手紙がいつ出されたものか?までは分りません。
こんな高価なモノを送るのだから、人材をスカウトしようという下心があり、
孔明が劉備に仕官する前であろうと考えられているだけです。
しかし、逆に考えれば、鶏舌香=口の臭い消しなのですから、
曹操一流の挑発行為で、「孔明、貴様の口は臭いんだよ!」かも知れません。
孔明にしても、後に五丈原で、司馬懿(しばい)に女物の装飾品を送りつけ、
「貴様は女のようだ!(臆病者だ)」と挑発したという俗説もありますから、
案外、そういうゆるい心理戦だったのかも知れないです。
或いは、漢室に限らず、当時の群雄の宮廷では、鶏舌香を噛む習慣があり、
一種の外交儀礼として鶏舌香を送り合っていた、、
それだけの事だったりするのかも知れません。
三国志ライターkawausoの独り言
正史、三国志においては、曹操を激しく批判する孔明の言説は多いですが、
逆に曹操が孔明に言及した事は、ほとんどありません。
この事から、曹操にとり孔明はアウト・オブ眼中だったと考えられていました。
ですが、この手紙は、少なくとも曹操は孔明の才能を認め、配下に加える気があった
その可能性を示しています。
もしかすると、人材コレクションに忙しい曹操は、うっかり孔明のスカウトを忘れ
それに怒った孔明が腹いせに劉備に仕官してたりしてね・・
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—古代中国の暮らしぶりがよくわかる—