塩の密売人というのは冤罪?関羽の密売人説を否定してみた

2021年2月12日


はじめての三国志_ページネーション

こちらは2ページ目になります。1ページ目から読む場合は、以下の緑ボタンからお願いします。

関羽の密売人説(1P目)

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


【誤植・誤字脱字の報告】 バナー 誤字脱字 報告 330 x 100



【レポート・論文で引用する場合の留意事項】 はじめての三国志レポート引用について



後漢末期の塩の専売

 

後漢時代の初期は専売ではなく民間での販売を許可していましたが、第3代章帝(しょうてい)が再び専売を復活させており、自ら安邑(あんゆう)にある塩池の視察を行っています。しかし、続く和帝(わてい)の代になると民衆が飢えたために税収が減っているという上奏があったことから正式に専売を撤廃。

 

民間での販売を許可し、そこから税金を徴収する方式に変更しました。

 

孔明

 

その後、三国時代になってからは蜀漢(しょくかん)で塩官が復活するなど国営化が進められていきますが、少なくとも後漢末期は専売されていたわけではなく課税するという方針だったようです。

 

関連記事:驚愕!蜀漢の塩の精製が意外にハイテクだった!

関連記事:三国時代、魏・蜀・呉はそれぞれどんな経済政策を打ち立てたのか?

関連記事:蜀錦を益州ブランドにした諸葛亮の販売戦略

 

関羽は密売人ではなく脱税者?

 

前述したように後漢時代は民間による塩の販売は許可されているので、販売をしても密売にはなりません。違反をするとしたら税金を支払わない脱税のはず。ちなみに塩の密売をした際の刑罰は時代によっても異なりますが、一番重いものが五代十国時代(ごだいじっこくじだい)の打首。

 

基本的に密売をした量によって棒叩きや財産没収、投獄など刑の重さが変わる量刑方式でした。しかし、脱税の罪はそこまで重くありません。前漢の武帝時代は密告方式で脱税者を報告させ、違反者は全財産の没収に加え1年間僻地での服役、密告者は報奨として違反者の財産の半分が与えられました。

 

死ぬことに比べればだいぶ軽い罪なので、わざわざ亡命するとは考えにくいです。

 

関連記事:【新解釈・三國志】NO斬首!と叫ぶ孔明、三国志で斬首はどんな刑罰

関連記事:死刑か肉刑か?魏の宮廷を二分した刑罰論争

 

密売は後付設定

蚩尤(神)

 

北宋時代のことを記した書物の中には解池に蚩尤(しゆう)という悪神(あるいは蛟龍(こうりゅう))が現れ、水を枯らしてしまったので、張天師(ちょうてんし)という人物が関羽を召喚して退治させたという記述が散見されます。

 

そろばんを叩く関羽

 

こうした記述に端を発して関羽は守護神や財神としての地位を確立していくのですが、財神信仰を広めたのは主に商人たち。

 

少し前の時代を振り返ると、唐代末期には塩の密売をする人たちが増えて黄巣(こうそう)の乱に至っていますし、五代十国時代でも銭鏐(せんりゅう)という人物が密売人から立身している点を考えると宋代も多くの商人が塩の密売をしていたはず。

 

以上のことを踏まえると密売をしていた商人たちが、同郷の英雄である関羽にシンパシーを感じて密売者に仕立て上げたのではないでしょうか。

 

関羽

 

関羽が商売人だった可能性は高く、豆腐売り、緑豆売り、ナツメ売りと様々な民間伝承が残っています。早期から関羽が商人として知られていたのであれば、解州の商人=塩の密売人と関連付けられたとしても不思議ではありません。

 

関連記事:蚩尤(しゆう)とはどんな神?キングダムからガンダムまで大人気の苗族の祖神

関連記事:関羽はどうして人気になったの?どんなところが魅力?

 

三国志ライターTKのひとりごと

TKさん(三国志ライター)

 

密売人という文字だけを見ると罪人という印象を受けますが、北宋時代の商人は国から塩の販売を許可されたことでアンダーグラウンドの世界から一躍大富豪へと転じたので、密売人という肩書はある意味勲章のようなものだったのかもしれません。

 

関羽の青銅像

 

つまり、関羽を密売人とすることも少し変わったリスペクトだったということです。筆者は関羽が密売していた商人からも好かれるくらい人気があった、とポジティブに解釈をしておきたいと思います。(笑)

 

関連記事:なぜ関羽は祀られるようになったの?初期の関羽信仰から神様になった経緯

関連記事:関羽の多すぎる異名を中国の三大宗教、民間信仰毎にまとめました

関連記事:関羽の武力ばかりに目が行くが、他能力はどうだったの?関羽の能力を考察

 

塩と人類の歴史

 

 

  • この記事を書いた人
  • 最新記事
TK

TK

KOEIの「三國無双2」をきっかけに三国志にハマる。
それを機に社会科(主に歴史)の成績が向上。 もっと中国史を知ろうと中国語を学ぶために留学するが 後になって現代語と古語が違うことに気づく。


好きな歴史人物:
関羽、斎藤一、アレクサンドロス大王、鄭成功など

何か一言:
最近は正史をもとに当時の文化背景など多角的な面から 考察するのが面白いなと思ってます。 そういった記事で皆様に楽しんでもらえたら幸いです。

-はじめての蜀, 関羽
-