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官渡の戦いが曹操の想定を超えて長期戦になったら群雄割拠の地図はどうなった?

2022年11月3日


 

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官渡の戦い 騎馬兵

 

 

三国志の歴史物語の前半を飾るハイライトのひとつ、「官渡の戦い」。曹操がライバルである袁紹を打ち破り、中原の覇権を確立することに成功した合戦です。

 

 

官渡の戦い 曹操 勝利

 

曹操が天下統一に向けて圧倒的有利に立つことができたのは、ここで勝利を掴むことができたおかげ。

 

赤壁の戦い

 

後の赤壁の戦いや夷陵の戦いに引けをとらない、歴史の分岐点でした。ともあれ「歴史の分岐点であった戦い」となりますと、ここからいろいろなイフ展開を考察してみたくなるのも歴史好きの定め。

 

キングダムと三国志 信と曹操のはてな(疑問)

 

 

たとえば、曹操対袁紹のこの対決、もし素直に決着をみなかったら、その後の歴史はどうなっていたのでしょうか?

 

袁紹と曹操

 

つまり、曹操が最終的に勝つという点は史実のままとしても、その曹操の想定を外れて袁紹軍が粘りに粘り、なかなかトドメをさせぬままズルズルと何年もの泥沼の長期戦となっていたら、他の英雄たちの運命はどのように変わったでしょうか?

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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いちばん得をするのは孫策と孫権

ポイント解説をするYASHIRO様

 

そのイフ世界を考えるにあたり、史実の官渡の戦いが進行していた最中、中原以外の土地の勢力図はどうなっていたかを見てみましょう。

 

呉の小覇王・孫策

 

まず江東の情勢ですが、ここでは「小覇」こと孫策が暴れまわっていました。

 

 

呉の勢力を率いる孫策

 

孫策は曹操と袁紹の戦いが続いている間、この地域の群雄たちを次々に制圧し、後の「呉」の基盤となる勢力圏を構築することに成功しています。

 

孫策と孫権

 

ここで曹操が袁紹退治に、史実よりもズルズルと何年もかかっていたら、孫策は、そしてその権力基盤を受け継ぐ孫権は、どう出たでしょうか?

 

 

孫策が亡くなり呉を継ぐ若き孫権

 

まず、孫策そして孫権の勢力拡大に、さらに時間的余裕が生まれることになります。曹操が南下してくるリスクがない以上、中国全土でいう南部の所領については、もっと大胆な冒険も可能となった筈です。

 

孫権に攻められ戦死する黄祖

 

あり得る戦略として、荊州の劉表の領土に侵入し、後の「呉」の最大版図に匹敵する巨大な勢力図を、この段階で早々と作り上げる余裕があったかもしれません。

 

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いっぽう劉備はおおいに損をする?

髀肉の嘆の劉備

 

官渡の戦いが長引いた場合、本来の「三国志」のもう一人の主人公、劉備玄徳はどうなるのでしょうか?

 

二刀流の劉備

 

実はこちらは史実の展開に対して、不利になる可能性が出てきます。というのも、官渡の戦いの時、劉備は袁紹の元に身を寄せ、その配下として曹操と戦っていたからです。

 

的蘆に乗って逃げる劉備

 

史実では、肝心の袁紹が曹操に敗れてしまったため、劉備は命からがら荊州に脱出し、劉表の元に身を寄せることになります。

 

三国志の主人公の劉備

 

これが官渡の戦いが長引いてしまうと、劉備はずっと袁紹の配下として働き続けてしまう話になります。劉備の独立のタイミングはどんどん遅れてしまいます。

 

はじ三倶楽部 スマホの誤変換でイライラする参加者(はてな)

 

「それでも曹操に袁紹が敗れるなら、いずれ劉備はけっきょく独立するのでは?」と思うかもしれません。ですが先ほど述べた通り、官渡の戦いが長引いている世界では孫策・孫権が既に劉表を攻撃して荊州に入っている可能性があります。

 

三国志の武器 雲梯車 劉備

 

劉備が独立するとしても、荊州を根拠地に選ぶことは現実的ではなくなっているでしょう。そうなると、致命的な問題が起こります。

 

諸葛亮孔明の天下三分の計に感化される劉備

 

劉備が、諸葛亮に出会う機会がなくなってしまうのです。たとえ劉備の志は高くとも、その諸葛亮、および荊州の諸将たちとの出会いがないと、とうてい蜀国の建国にはたどりつけないでしょう。

 

 

官渡の戦いが長引いただけで、諸葛亮を迎え入れるタイミングを失する。

 

 

龐統

 

その他、馬良や龐統、黄忠の参加もなかったことになる。これは劉備にとって相当に致命的な史実との違いではないでしょうか?

 

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その他の地域の趨勢は大きく変わらない?

凡人すぎた楊雍(はてな)

 

孫策孫権兄弟が有利、劉備に不利となったこの世界。その他の群雄たちはどうなるのでしょうか?

 

 

まず劉表は不利です。じゅうぶんに勢力を養った孫策孫権の、格好の侵攻対象となるでしょう。劉璋については、あまり変わりません。史実でも益州にこもったまま、ずっと受け身でいた劉璋

 

劉璋(りゅうしょう)

 

官渡の戦いが長引いたところで同じように益州に引き籠り、天下取りの趨勢には影響しなかったのではないでしょうか。

 

馬騰

 

馬騰についても、あまり変わりません。けっきょくは袁紹を倒した後の曹操に撃破されたでしょう。

 

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まとめ:つまり三国鼎立の主役の一角が変わる!?

袁紹に仕えていた朱霊

 

すなわち、曹操が袁紹を倒すのに何年もズルズルとかけてしまったこの世界では、その間に孫策が巨大な勢力圏を作り、安泰な権力を孫権に譲り渡し、劉表は早々に滅亡し、劉璋や馬騰は「二大強国」化した曹操と孫権の恰好の餌とされます。

 

龐統と孔明を手に入れた劉備

 

そして最大のポイントは、この世界には「諸葛亮を手に入れた劉備」がいません。

 

桃園3兄弟(劉備・張飛・関羽)

 

劉備は中原の辺りを、関羽と張飛を連れてウロウロとしながら、曹操に対して思い出したようなゲリラ戦を仕掛けては潰される流浪の山賊頭領といったところになるかもしれません。

 

正史三国志_書類

 

つまり、この世界では「三国鼎立」の形にならず、歴史書も「三国志」と呼ばれず。そもそもこの時代がこれほど長く愛される物語にまで洗練されなかったかもしれないのです!

 

ただし。

 

三国志を楽しく語るライターYASHIRO様

 

「いや、そのイフ考察は寂しい。曹操と孫権の二大強国世界でも、なんとかしても三国鼎立が起こるシナリオはないか?」というのならば、おもいきって、劉璋の動きに期待してもいいかもしれません。

 

祁山、街亭

 

というのも、このイフ世界が曹操と孫権にほぼ二分されたとしても、劉璋はひらすら益州の防衛にいそしんでいるだけで、後の劉備の「蜀」にかなり近い支配圏を維持できることになります。

 

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三国志ライターYASHIROの独り言

三国志ライター YASHIRO

 

さらに、そこに荊州を脱出した諸葛亮や龐統が亡命してくれば、曹操の、孫権の呉、そして劉璋の蜀(?)という、意外な三国鼎立になっていたかもしれません。

 

劉璋と劉備

 

この場合、劉璋が曹操や孫権とやり合える三英雄の一角を担えたかどうかが未知数ですが。守りに徹底する劉璋軍というなら、もしかしたら、ある程度、やりきれるかもしれない。いかがでしょう、そんな三国志なら、読んでみたいでしょうか?だめでしょうか?

 

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YASHIRO

とにかく小説を読むのが好き。吉川英治の三国志と、司馬遼太郎の戦国・幕末明治ものと、シュテファン・ツヴァイクの作品を読み耽っているうちに、青春を終えておりました。史実とフィクションのバランスが取れた歴史小説が一番の好みです。 好きな歴史人物: タレーラン(ナポレオンの外務大臣) 何か一言: 中国史だけでなく、広く世界史一般が好きなので、大きな世界史の流れの中での三国時代の魅力をわかりやすく、伝えていきたいと思います

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