もし赤子の阿斗が自力で生き延び武闘派劉禅として蜀の皇位を継承したら?

2023年4月8日


 

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司馬昭の質問に回答する劉禅

 

世の中には厳しいことを言う方も多いようで、三国志さんごくしの一国、しょくにて劉備りゅうびを継いだ劉禅りゅうぜんのことを愚君と評価する人が後を絶ちません。彼の幼名である「阿斗あと」を暗愚の象徴のように使う人も後絶ちません。

 

阿斗を劉備まで届ける趙雲

 

のみならずまだ赤子だった劉禅りゅうぜん趙雲ちょううんが救出した「長坂の戦いちょうはんのたたかい」の感動的なくだりも、「むしろ趙雲があそこで赤子を助けず見殺しにしておいたほうが後のしょくのためにはよかった」などという声さえ聞かれます。

 

スキッパーキ(はてな)

 

実際、劉禅りゅうぜんはそこまで暗愚だったのでしょうか。趙雲ちょううんに救出されなかったほうが、しょくのためにはよかったのでしょうか?

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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まずは史実の確認!蜀降伏時の劉禅の対応をおさらいする

蜀志(蜀書)_書類

 

劉禅が非難される理由を、『正史三国志』の蜀書から拾ってみましょう。

 

劉禅と孔明

 

この文献によると劉禅は、「諸葛亮しょかつりょうが生きている間は道理に従った君主であったが、宦官かんがんたちに惑わされるようになってからは暗愚な君主であった」とはっきり書かれている上に、「しょせん白糸びゃくしはどうにでも染まるものである」と、部下によってどのような色にも染まってしまう、その主体性のなさにも言及しています。たしかにこれを見ると、リーダーの資質という点では疑問符がついてしまうのは正直なところ。

 

鄧艾(トウ艾)と一緒に木を切り蜀に前進する鄧忠(トウ忠)

 

そして一番問題とされているのは、鄧艾とうがい鍾会しょうかいという二人の魏将ぎしょうが大軍でしょくに攻め込んできたとき、徹底抗戦を主張する武闘派たちを退けて降伏してしまったこと。

 

降伏する劉禅

この降伏の際の劉禅りゅうぜんは、自らわざわざ棺を背負って敵将と会見し恭順の意を示すという、どうにも情けないパフォーマンスを行い、
「私は不徳なものですが、先代(劉備りゅうび)の遺産をむさぼり、このしょくの地に居座り続けてしまいました。本来ならばもっと早くあなた方にここを明け渡すべきところを申し訳ございませんでした」という恐るべし内容の降伏文書を提出したとされております。

 

正史三国志 vs 三国志演義で揉める現代人

 

世の中には厳しいことを言う方も多いようで、三国志の一国、蜀にて劉備を継いだ劉禅りゅうぜんのことを愚君と評価する人が後を絶ちません。
彼の幼名である「阿斗あと」を暗愚の象徴のように使う人も後絶ちません。

 

ブチギレながら阿斗を投げる劉備

 

のみならずまだ赤子だった劉禅りゅうぜん趙雲ちょううんが救出した「長坂の戦いちょうはんのたたかい」の感動的なくだりも、「むしろ趙雲ちょううんがあそこで赤子を助けず見殺しにしておいたほうが後の蜀のためにはよかった」などという声さえ聞かれます。

 

凡人すぎた楊雍(はてな)

 

実際、劉禅りゅうぜんはそこまで暗愚だったのでしょうか。趙雲ちょううんに救出されなかったほうが、蜀のためにはよかったのでしょうか?

 

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いっそのこと趙雲がスパルタに劉禅を戦場に放り出して鍛えていたら?

劉禅

 

しかしよくよく劉禅の言動を振り返ってみましょう。

 

白糸しらいと」のごとく何色にも染まるということは、彼には自分の「しん」というものがなかったということ。おそらく、典型的なお坊ちゃん育ち、苦労をしらない育ちをしてしまったがゆえ、主体性のない人格が彼に備わってしまった、ということではないでしょうか。そこで、こう考えてみましょう。趙雲が、阿斗こと赤ん坊時代の劉禅を、戦場から救出するのではなく、「阿斗様、あなたを救出することは、私には、できます。

 

ですがあなたも劉備様の後継者にいずれなられるお方なら、この程度の苦境は自力で脱出できるはず。小生はそれを信じて待っておりますぞ、御免!」と、敢えて戦場に放置していたら?

 

これが実は、後の蜀にとっても最高の対応だったのではないでしょうか?

 

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阿斗、地獄より生還す

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この展開では、しょくの運命はどうなるか?

 

まず、長坂ちょうはんの戦いで放置された阿斗あとうは、険しい自然の中、野獣たちに囲まれながらなんとか生き延びます。数年後、荊州けいしゅうの農民たちが、山で野獣と暮らしている不思議な少年を見つけ、拾ってくれるでしょう。知力も体力も申し分なく、山奥で野獣たちと共にサバイバルしてきただけに第六感が冴えわたる、この野生児やせいじは評判となり、

 

馬謖を信用していない劉備

 

やがて「耳がやけに大きな不思議な少年」の噂が、劉備りゅうびにも届きます。「耳がやけに大きい?もしや!」と、趙雲ちょううんを派遣する劉備りゅうび。数年ぶりに劉禅りゅうぜんと再会した趙雲ちょううんは、立派な少年になったその姿に涙し、「あの時はあえてあなたに厳しいことをしてしまいました。すべてはしょくの未来の為のスパルタ方針。お許しくださいませ」と泣きながらその手をとって、劉備りゅうびの元に案内するでしょう。

 

趙雲

 

趙雲ちょううんはその夜、すべての責任をとって自害。そのような哀しい事件がありましたが、野生の力を身に着けた劉禅りゅうぜんは、頼もしい皇太子こうたいしとして、劉備りゅうびの生前から各戦線に転戦し、奮迅の働きを示し始めます。

 

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まとめ:武闘派劉禅の指揮のもとに蜀は決して滅びない?

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やがて劉備りゅうびが亡くなり、かような二代目に率いられることとなったしょく

 

すぐに戦争したがる姜維

 

当然、劉禅りゅうぜんは武闘派のリーダーとして、諸葛亮しょかつりょう死後も姜維きょういら武闘派の諸将をもっぱら使いこなします。宦官たちの横行は早い段階で発見し、てきぱきと粛清してしまうことでしょう。

 

皇帝・劉禅が住んでいる宮殿や成都を警備する伊賞

 

ただし、そんな劉禅りゅうぜんが君主になったとしても、との国力差は、覆せるものではありません。遅かれ早かれ、鄧艾とうがい鍾会しょうかいしょく侵入は起こることでしょう。ただしその後の展開が違ってくるはずです。

 

君たちはどう生きるか?劉禅

 

鄧艾とうがい鍾会しょうかいが率いる大軍に真正面から戦って勝てるはずもなく。劉禅りゅうぜんは降伏文書を送ります。喜んだ鄧艾とうがい鍾会しょうかい成都せいとに入城すると、屈強な劉禅りゅうぜんが、なぜか、二つの棺を両肩に背負って現れます。

 

劉禅

 

鄧艾とうがい鍾会しょうかいが驚きつつ、「棺を背負ってお出迎えいただくとは恐縮です。降伏の恭順の気持ちが、我らにも伝わりましたぞ。それにしても、なぜ、棺を二つ抱えているのですか?」と質問すると、劉禅りゅうぜんは、「もちろん、これは尊公そんけんら二人のための棺だからに他ならぬ」と言い捨てる。

 

兵士 朝まで三国志

 

それを合図に四方から市街に潜んでいた姜維きょういの部隊が出現。の大軍は狩られに狩られ、鄧艾とうがい鍾会しょうかいの首は劉禅りゅうぜん本人によって切り落とされ、二つの棺に納められることでしょう。その後、劉禅りゅうぜんは戦場と化した成都せいとをあっさりと棄て、軍を連れて山中に脱出。

梁山泊(水滸伝)

 

の軍勢が何度、遠征をしかけても、巧みなゲリラ戦でこれを翻弄するという、『三国志さんごくし』というよりは『水滸伝すいこでん』のような物語になるかもしれません。

 

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三国志ライターYASHIROの独り言

三国志ライター YASHIRO

 

それでも、との国力差を考えると、けっきょくしょくが逆転して天下を獲るなどというのは夢のまた夢となりましょうが。いかがでしょう、ここまで戦い抜く、野生の皇帝劉禅りゅうぜん、見てみたいと思いませんか?いささか無理がありますでしょうか?

 

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YASHIRO

とにかく小説を読むのが好き。吉川英治の三国志と、司馬遼太郎の戦国・幕末明治ものと、シュテファン・ツヴァイクの作品を読み耽っているうちに、青春を終えておりました。史実とフィクションのバランスが取れた歴史小説が一番の好みです。 好きな歴史人物: タレーラン(ナポレオンの外務大臣) 何か一言: 中国史だけでなく、広く世界史一般が好きなので、大きな世界史の流れの中での三国時代の魅力をわかりやすく、伝えていきたいと思います

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