中国人に次いで三国志に親しんでいるのは、日本人と言って間違いないでしょう。
すでに江戸時代の黄表紙や浮世絵には、関羽、張飛、孔明のような、
三国志のお馴染みの人物が写実的な筆致で活々と描かれています。
そればかりでなく、楚漢の戦いにおける、張良や、劉邦、項羽、
韓信のような人物も黄表紙の馴染みの人物でした。
江戸時代から日本人は、三国志を論じ、水滸伝を論じ、楚漢の戦いを
論じて楽しんでいたのです。
三国志ブームは現在だけのものではなく、歴史のあるモノだと言うのが
分かると思います。
さて、その三国志ですが、2つが存在するという事をご存じですか?
三国志は2つある!正史と演義二つの三国志の違いとは?
一つは「三国志演義」といい明の時代に羅貫中(らかんちゅう)或いは
施耐庵(したいあん)という人物が描いたものです。
演義というのは、元々「物事を分かりやすくする」
という意味で、難しい歴史を理解しやすくしたという意味です。
まあ、ちょうど、今三国志を解説している、
この記事のようなものですかねぇ(自画自賛)
三国志の話は、中国の元の時代になると大衆演劇として
人通りが多い通りで講談として語られるようになります。
そうなると面白くなければ飽きられてしまうわけでして、
講談師は、三国志が面白くなるように事実ではないフィクションを
くっつけて、難解な部分を簡潔にして大衆人気を博したのです。
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劉備玄徳の元に集まる豪傑たち
こうして三国志は、劉備玄徳という情け深い仁義の武将が、
関羽や張飛、孔明のような武将・知将の助けを得て、
漢を自分の思うままにしようとする、菫卓や曹操のような
憎むべき悪役に立ち向かうという筋立てになっていきました。
14世紀頃の中国は異民族のモンゴル人に支配されていたので、
漢民族は滅びゆく漢王朝の再興に命を懸けた劉備を
不屈の闘志を持つ民族の英雄として賞賛したのでした。
その為、強大な悪の曹操に対抗する、劉備、関羽や張飛、孔明は人間離れした
超人として描かれ話を迫力あるドラマチックな物にしています。
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正史三国志について
さて、もう一方の三国志は、正史三国志と言われます。
作者は、陳寿(233~297年)という歴史家で
魏を滅ぼした晋の時代の官僚、成立は280年頃と考えられています。
こちらは、全部で65巻からなる、本格的な歴史書で、
魏国志30巻、本紀4巻、蜀国志15巻、呉国志20巻で構成されています。
魏国志が圧倒的に多い事でも分かる通り、魏の視点に立って
物語が展開していくので厳密には公平であるとは言えません。
ですがフィクションが多い三国志演義と違い、正史は時代も三国志に近く
可能な限り信憑性の高い史料を採用しています。
蜀びいきではない現実の三国志を体験したい人には正史三国志はオススメです。
ですが、この正史三国志、三国志演義のように人気がありません。
何故かというと、これは辞書のように、登場人物の履歴が並んでいるだけで
物語の構成になっていない上に、時系列的な造りでもないからなのです。
もし、あなたが正史三国志を読むなら、それなりの知識を頭に入れて
読み進めないと、途中で話がこんがらがってしまうでしょうね。
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