キングダムにおいて、対趙攻略戦の総大将に任じられた将軍、王翦(おうせん)。
その強さは異常で、魏攻略戦では、魏軍の白亀西(はっきさい)を総大将に立てた
百戦錬磨の廉頗(れんぱ)と戦い、二軍与えられた中の一軍のみで多くの城を陥落させ、
合従軍編では、燕軍に当たり、山岳戦に慣れている敵将、オルドを神出鬼没の
用兵で疑心暗鬼にさせ、山に足止めした上でフェードアウト。
次には、楚の別動隊の前に出現して撃滅させ、函谷関の失陥を防いでいます。
大ピンチの時には、頼りになる王翦ですが、何故か人気はないのです。
その理由とは、一体なんなのでしょう?
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この記事の目次
李牧に匹敵する智謀を持ちながら、仲間に信頼されない理由とは
このように、大きな手柄を挙げながら、王翦が仲間に信頼されない理由は、
いみじくも、魏攻略戦で廉頗が言った言葉に尽きます。
「あくまでも自分本位を貫き、副将の立場を弁えず、
総大将蒙驁(もうごう)の作戦を勝手に変更し、仲間に信頼されないようでは、
とうてい英雄とは呼べん」
王翦は、目の周りをマスクで覆い、普段から表情が変わらず、
相手に自分の心を読ませまいとしています。
これは裏を返せば、気を許せる人間が周囲にいないという意味であり、
逆に相手の内心を把握しようという行為でもあるのです。
河了貂(かりょうてん)も、王翦の目は、味方も不安にさせると言っていますし、
人を寄せつけない冷たい光を放っているのでしょう。
それに加えて、序列を無視した、事前に通告もない勝手な戦略の変更ですから、
味方であっても、王翦が何を考えているか分からず、
恐怖や不信を生み出していると言えます。
自分の領地を国と呼び敵将を執拗にスカウトする態度
王翦の人気の無さには、彼が、自分の領地を国と呼び、敵将でも、
能力があるものは執拗に勧誘する点にもあります。
魏将で、廉頗の配下である弓の名手の姜燕(きょうえん)もスカウトされていました。
このような点から、王翦には、自分の国を造る野心があるのでは?
と警戒され、実力がありながら、遥か昭襄王(しょうじょうおう)の時代から、
日陰者として敬遠されていたというのです。
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史実の王翦はどうだったのか?
ここまでは、キングダムの設定ですが、事実の王翦も曲者でした。
史実の彼も漫画に劣らぬ戦争の天才であり、謀略で李牧(りぼく)さえ破った
名将ですが、彼が何よりも恐れたのは実は敵では無く、味方でした。
もっと具体的に言えば、秦王を恐れていたのです。
王翦が、いつから秦に仕えたかは定かではありませんが、
紀元前225年には隠居を願い出る位ですから、
或いは、昭襄王の時代から、仕えていた可能性もあります。
だとすれば、かつて、同僚だった白起(はくき)が大きな手柄を立てながら、
宰相、范雎(はんしょ)に活躍を疎まれ、讒言により秦王から死を賜ったのを
リアルタイムで見ている筈です。
その軍才において、白起にさえ劣らない王翦は、
それを見て、明日は我が身だと思ったのではないでしょうか?
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秦王政に、恩賞の約束を執拗にねだり小者感PR
この王翦の秦王に対する警戒感は、信(しん)と蒙恬(もうてん)が
楚攻略に失敗し秦王政が、隠居した王翦を呼び出し、
秦の全軍60万人を預け、函谷関防衛に向かわせた時でも発揮されます。
ここで、王翦は、何度も秦王に恩賞の屋敷や土地の事について
確約を取り付けようと使者を出して回答を求めているのです。
それに呆れた部下が大事の前にそんな些細な事を
心配するべきではないと言うと・・
「今、私は秦の総兵力を預かっている、少しでも私に
野心があると見做せば、秦王は戦が終わってから、
ワシを危険視して即座に殺すだろう。
土地や屋敷の恩賞にしか関心がない小者だと思わせればいい」
王翦は自分を危険視するかも知れない秦王政を恐れ、
あえて、天下に野心なんかありません。
恩賞で頭が一杯ですという意思表示をしたのです。
秦王政は、王翦の小者ぶりに呆れ、恩賞を約束すると同時に
警戒心を解きました、それにより王翦は天寿を全うできたのです。
人を信じず、徹底して疑い保身に徹した賜物でした。
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キングダムライターkawausoの独り言
かたや、王になろうとしているという野心家のキングダムの王翦。
逆に、小者ぶりをPRしてまで、秦王の疑いから逃れようとした史実の王翦。
正反対に見える両者ですが、本当の自分を誰にも悟らせまいと
細心の注意を払っている点は共通しています。
キングダムは史実に準拠していますが、キャラクターには、
史実に反しない範囲でのオリジナリティが認められています。
なので、漫画の王翦が史実の王翦に寄っていくのか、
新解釈で王への野望を追い続ける独自の王翦像が描かれるのか、
全く分りませんね。
原先生が描く、王翦の今後の行動が楽しみです。
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