キングダム
朝まで三国志悪




はじめての三国志

menu

三国志の雑学

噛ませ犬じゃないよ!正史では立派な人・王朗

この記事の所要時間: 326



 

三国志演義の中で、若い頃は会稽太守として孫策(そんさく)と戦って敗れ、

老いては魏の司徒として蜀との会戦に参じて諸葛亮(しょかつりょう)との舌戦に敗れ憤死するという、

噛ませ犬役を担わされている王朗(おうろう)

正史三国志を見るかぎりでは、とても立派な人だったようです。

 

三国志演義は、歴史書の正史三国志やその注釈を元ネタにして作られた歴史物語小説です。

吉川英治(よしかわ えいじ)さんの三国志(小説)や横山光輝(よこやま みつてる)さんの三国志(漫画)のストーリー展開はおおむね

三国志演義に基づいています。

 

はじめての三国志:全記事一覧はこちら

関連記事:【マニアック向け三国志】捕まったことで運命の君主と出会った王朗(おうろう)

関連記事:そうなの!劉備と孔明は故郷について真逆のスタンスだった

 

 

魏の文帝も絶賛した一流の人物

荀彧

 

正史三国志とその注釈の記述から王朗像を探ってみましょう。

荀彧(じゅんいくでん)の注釈に引かれている『荀彧別伝』には、荀彧が推挙した当時の高名な人物として

郗慮(ちりょ)華歆(かきん)王朗荀悦(じゅんえつ)杜襲(としゅう)辛毗(しんぴ)趙儼(ちょうげん)」が挙げられています。

 

あんなすごい人を推挙したなんてさすが荀彧、お目が高い!とみんなが納得するような

すごい人のラインナップに王朗が入っているんですね

曹丕

 

魏の文帝(曹丕(そうひ))の時代に鍾繇(しょうよう)華歆・王朗が三公(最高ランクの3つの官職)についていましたが、

文帝は「この三公は一代の偉人である。後世これを継ぐのは難しいであろう

(これほどの三公はなかなか得られない)」と評しています(鍾繇伝)。

 

三国の中でいちばんおっきい国のいちばん偉い三つの役職のうちの一つを占め、

しかも、これほどの三公はなかなか得られないと絶賛された王朗。

まぎれもなく一流の人物であったはずです

 

高い学識

張昭

 

張紘(ちょうこうでん)の注釈に引かれている『呉書』に、魏の陳琳(ちんりん)から呉の張紘への手紙がありますが、

そこで陳琳は「こちらには景興(けいこう)(王朗のあざな)、

そちらにはあなた(張紘)と子布(しふ)張昭のあざな)がいます」と書いています。

 

建安七子の一人で名文家として有名な陳琳が、自分のことをへりくだりながら、

魏の代表的な文人として王朗を挙げ、

呉の君主・孫権(そんけん)も頭の上がらなかった高名な文人の張昭(ちょうしょう)らに匹敵する人物として扱っています。

 

王朗は『易経』『春秋』『孝経』『周官』の伝(注釈書)を著しており(王朗伝)、

後に魏の官吏登用の受験科目に王朗の易伝が採用されています(斉王紀)。

曹操、受験合格

 

名文家の陳琳が王朗を自分より上で張昭に匹敵する人物としたこと、

王朗の著作が官吏登用試験に採用されるほどであったことから、

王朗の学識の高さがうかがえます。

 

民を思う慷慨の士

村民

 

王朗伝の注釈に引かれている『魏書』に、王朗の人柄が記されています。

王朗は高い才能と広い学識をもっていたが、性格は厳格できちんとしており、
慷慨家であった。(中略)つねに、恵み深いという評判がありながら貧窮者を
あわれまない世間の連中を非難していた。したがって財物をほどこす場合、
さし迫った者を救うことを優先した。

※引用元:ちくま文庫『正史三国志2』井波律子・今鷹真訳 (中略)はよかミカン

 

「徳」が出世に直結する古代中国では、見せかけだけで恵み深そうな態度をとる人が

多かったのでしょう。で、王朗さんはそんな連中に憤る慷慨家だったのですね。

「財物をほどこす場合、さし迫った者を救うことを優先した」というのは

真心がない人にはなかなかできないことですよね。

 

私利私欲の人だったら、食いつなぐだけでいっぱいいっぱいな人を助けても

自分の役に立ってくれる余力がなさそうだから後回しにして、

少し困っているけどわずかな手助けでもりもり力を取り戻しそうな人を先に助けて、

恩を売って自分のために働かせようとするに違いありません。

王朗はそういうさもしい勘定では動かず、本当に困っている人を助けたのですね。

 

民の暮らしを考えながら国家の計をたてる

 

王朗伝にある上奏文を見ると、王朗が民の暮らしぶりを想像しながら

国策を考えることのできる政治家であったことがわかります。

下に引用するのは、兵乱がやまない現況に対して、王朗が二十年の計を述べた上奏文の一部です。

裁判が事件の真実をつかめば、無実に死ぬ囚人はなく、
壮年の男子が土地の生産力を充分に発揮させ得るならば、飢饉に陥る民はなく、
貧窮者や老人が米倉から食物を支給されるならば、飢饉による死人はなく、

結婚が時機どおり行われるならば、男も女もつれあいをもたぬうらみはなく、
胎児の養育が必ずまっとうされれば、みごもった者に身体をそこなうかなしみはなく、
新生児を持つ者には必ず労役免除の措置をとれば、みどりごは育たない心配はなく、

成年に達してのち労役を課すれば、未成年者に家庭を離れるかなしみはなく、
半白の人を戦にかりたてなければ、老人に行き倒れの災難はございません。

医療と薬によってその病気を癒し、寛大な労役によってその仕事をたのしませ、
権威と刑罰によって強者を抑え、恩情と仁愛によって弱者をすくい、
福祉政策によって貧窮をたすけます。

十年ののちには、成年に達した若人が必ずや街にあふれましょう。
二十年ののちには、必勝の兵士が必ずや野に満ちましょう。

※引用元:ちくま文庫『正史三国志2』井波律子・今鷹真訳

 

一つ一つの家庭がどんな暮らしをしているのか。

暮らしを安定させて大勢の若者たちが働けるようになるまで何年かかるのか。

こういう考え方ができる政治家は、案外少ないのではないでしょうか。

 

三国志ライター よかミカンの独り言

よかミカンの独り言

 

正史三国志とその注釈を見たところ、王朗は高い学識を持つ一流の人物であり、

真心を持つ本物の政治家であるという印象を受けました。

 

正史やその注釈に書かれていることを鵜呑みにすることはできませんが、

少なくとも同時代人に高く評価された人物であったことは間違いありません。

 

会稽太守として孫策に敗れたことは正史にもありますが、諸葛亮とは舌戦もしていなければ

憤死もしていません。三国志演義でひどい脚色をされちゃったなー、って感じです。

 

皆様が三国志演義を読んで「あははは。噛ませ犬」と笑った後には、

ぜひ「でもこれ脚色なんだよね」ってちょっとだけ思ってあげて下さいね!

 

はじめての三国志:全記事一覧はこちら

関連記事:劉備は剣術を使うことができたのか正史・演義から調べてみた

関連記事: 【よかミカン紀行】甘寧がブイブイいわせてた重慶ってこんな街!

 

覇を競う乱世に新たな秩序を打ち立てた曹操の生涯
曹操孟徳

 

よかミカン

よかミカン

投稿者の記事一覧

三国志好きが高じて会社を辞めて中国に留学したことのある夢見がちな成人です。

個人のサイトで三国志のおバカ小説を書いております。

三国志小説『ショッケンひにほゆ』
https://3594.fun 

【劉備も関羽も張飛も出てこない! 三国志 蜀の北伐最前線おバカ日記】

好きな歴史人物:
王充(おうじゅう。後漢初期の思想家)
※ はじさんのサイト内検索で王充の記事が出てきます

何か一言:
三国志のお話の世界の広がりは無窮。
日々新しい三国志が生まれています。
ご一緒に三国志の新しい歴史を刻みましょう。

関連記事

  1. 劉焉(りゅうえん)ってどんな人?益州に独立国を建国した漢
  2. 華麗なる中華世界を彩る武器~羽生結弦選手の武器
  3. 三国志の著者・陳寿のミステリー 前編:蜀滅亡
  4. 【三国志の素朴な疑問】呂布は何歳だったの?
  5. 三国志史上で一番絵が上手なのは誰だ!?ヒント、姓は曹です
  6. 【よかミカン紀行】甘寧がブイブイいわせてた重慶ってこんな街!
  7. 実は鐘会はマザコンだった!人生を狂わせた母の愛
  8. 【これは悲しすぎる】今や忘れさられた袁術の墓

google検索フォーム

過去記事を検索できます

ピックアップ記事

おすすめ記事

  1. 王異(おうい)ってどんな人?戦乱の中で数々の逸話を残してきた女性武将
  2. 陸遜の妻は誰?妻はなんと大喬との間の子供だった?
  3. 【キングダム】信が王騎の矛を受け継いだのには隠された意味があった!
  4. 大都市西安の碑林博物館をよかミカンが見学したよ
  5. 三国志の時代は農民に至るまで腰に剣を佩いていた
  6. 【光武帝の伝説の戦い】劉秀の評判がこんなにも高い秘密はここにあった!

三國志雑学

“はじめての三国志150万PV" “広告募集"

はじめての三国志 書籍情報


著:kawauso 価格480円
※Kindle読み放題対応

ピックアップ記事

おすすめ記事

孫権のツンデレ外交に蜀の天才外交官・鄧芝の能力炸裂!蜀呉同盟を復活させたお話 馬謖が山上に布陣しなければ第一次北伐は成功したの? 天才軍師の条件ってなに?諸葛亮孔明・司馬懿仲達・黒田官兵衛・大村益次郎に共通している条件とは? 漢帝国樹立に尽くした名軍師・張良は仙人になるために◯◯を取り入れていた! 藤崎竜先生の過去作品や絵柄・天才的な画力を紹介! はじめての三国志チャンネル 第2回目 – 赤兎馬を飲む 【001】 井伊直弼が暗殺されたのは何故?暗殺へのステップを解説 【三国志で例えるよ】初心者でも『エドワード黒太子』が分かる。西洋史の基礎&豆知識!

おすすめ記事

  1. 【はじめての水滸伝】主役級を一挙公開、これが好漢だ!
  2. 周瑜は孫策よりも名門で君主になってもおかしくなかった
  3. 【はじめてのセンゴク】毛利家の暗躍と荒木村重の反乱
  4. 【センゴク】織田信長は長年、本願寺に苦しめられた理由とは?
  5. 竜にも階級があった!?某国民的・神龍が登場する漫画は中国史に忠実だった!
  6. 【光武帝の伝説の戦い】劉秀の評判がこんなにも高い秘密はここにあった!
  7. 【三国志の3大軍師を比較】孔明、周瑜、郭嘉の●●●ランキング!
  8. 【ビジネス三国志】陳琳や周瑜、諸葛亮孔明に学ぶ失敗学

はじさん企画

袁術祭り
李傕祭り
帝政ローマ
広告募集
まだ漢王朝で消耗してるの?
HMR
ライフハック
君主論

ビジネス三国志
春秋戦国時代
日常生活
曹操vs信長
架空戦記
ライセンシー
北伐
呂布vs項羽
編集長日記
はじめての三国志TV
“曹操孟徳" “黄巾賊" “赤壁の戦い" “THE一騎打ち" “夷陵の戦い" “kawausoのぼやき記事" “よかミカンのブラック三国志"
“水滸伝"
PAGE TOP