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魏延の「反骨の相」は権力争いに利用された?魏延を誅殺した真犯人とは?

2019年6月1日


 

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亡くなる張飛将軍

 

 

関羽(かんう)張飛(ちょうひ)が亡きあとの(しょく)では、「武勇にすぐれた人材」という面では魏延(ぎえん)一人が目立つようになります。

 

 

蜀の魏延

 

 

実際、五虎将軍(ごこしょうぐん)に数えられなかったことが不思議なほど、彼の功績自体はめざましい。

 

 

魏延

 

 

劉備(りゅうび)に仕え始めた時期も、黄忠(こうちゅう)と同時、馬超(ばちょう)よりも早いというベテラン将軍です。キャリアの長さも申し分ありません。

 

献帝(はてな)

 

 

にも関わらず、なんとも人気がないのが魏延(ぎえん)。なんで他の勇将たちと、扱いが違うのか?

 

 

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監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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孔明に初対面から警戒されていた?『演義』の魏延

魏延の謀反を察する孫権

 

 

三国志演義(さんごくしえんぎ)』においては、「彼の人相には生まれながらの反骨の相(うらぎりものの印)があらわれている!」と、初対面の時から諸葛亮孔明(しょかつりょうこうめい)に警戒されてしまっています。

 

 

「ここにいるぞ!」と言いながら魏延を切る馬岱

 

 

それで周囲にも「あいつはいつか裏切りそうだから」というイメージが広まり、結局、本当に孔明の死後に反乱(と思われる軍事行動)を起こして、「やっぱり!」となった。でもこの問題、少し考えてみると、釈然としない話がいろいろと出てくるのです。

 

 

 

孔明が魏延を嫌っていた理由が、「人相」以外には特に見当たらない件

魏延と孔明

 

 

孔明は、「魏延には反骨の相がある」発言の際、「帷幕(いばく
)
に加えると、大事なところで裏切るから、今のうちに切ってしまいましょう」という意味のことを、凄い勢いで言っています。

 

表情 劉備

 

 

劉備が「そんな乱暴な」とその場を諫めることで、いったんは落ち着くのですが、初対面の相手に「殺せ」はひどくないですか?

 

韓玄(かんげん)

 

 

ひとつ、孔明の言い分として考えられるのは、魏延がそもそも前の主君である韓玄(かんげん)を裏切って劉備についた、という経緯があることです。

 

悪い顔をしている諸葛亮孔明

 

 

「前の主君を裏切ったやつは、いずれまた裏切る!」というのが孔明の理屈ですね。

 

 

馬良と孔明

 

 

でも、正直なところ、この論理はちょっと納得がいきません。三国志の時代では、敵軍の中の優秀な人材を寝返らせる工作は、かなり「常道」としておおっぴらに行われています。

 

 

孔明

 

 

そもそも、劉備も孔明も益州(えきしゅう)入りの際にはさんざん相手陣営に寝返り工作をしかけています。魏延に対してだけは、「前の主君を裏切ってくるなんて許せん」と言っているのだとしたら、諸葛亮孔明には似合わないほどに筋の通らない話をしている。

 

孔明

 

 

そう、ここで個人に対する嫌悪感をむき出しにしている孔明というのは、そもそも他の場面の孔明のキャラクターと、なんだかあっていないのです。

 

仲の悪い魏延と楊儀

 

 

さらに、その後の魏延の行動を見てみると、

・たしかに性格に問題があったらしく、周囲の将軍とはよくケンカになっていた

・しかしその行動は、あらっぽいとはいえ、彼なりに蜀の勝利に貢献しようという意図あってのこと

・敵軍に内通したり、寝返り工作に反応しかけたりした形跡は、特にない

・ただ、孔明の死後に、本国からの命令を無視して、自分の軍を率いてあわや蜀に乗り込むような動きを見せたことは確か。この際に魏延は反乱の疑いで殺されている

となっています。

 

蜀の魏延

 

 

孔明に「裏切り者の人相だ」と言われた以外は、性格が悪かったようですが、他にはアヤしい行動は別にないのですね。これでは孔明の言い分が、ますます不条理に思えます。

 

 

 

この問題を、ミステリーとして、探偵の気分で解いてみましょう!

犯人探しをする名探偵国淵

 

 

いったい何があったのか?探偵になった気分で、ちょっと考えてみましょう。つまり、「わるもの」扱いされている魏延が、実は、何かの事件の犠牲者だったのではないか、とあえて勘ぐってみるのです!

 

名探偵郭嘉

 

 

ここで少し『三国志演義』から離れて、『正史』のほうを確認しましょう。正史での魏延については、先の「反骨の相がある」云々のエピソードは出てきません。

 

 

周瑜、孔明、劉備、曹操 それぞれの列伝・正史三国志

 

 

それどころか、孔明が魏延を特別に警戒していた、というような記述もないのです。「孔明が生前に魏延を警戒していたというのは後世の創作らしい」という可能性が高いのです。となると、次に気になるのは、「なぜ、孔明が魏延を激しく嫌っていたという話が付け足されたのか」のミステリーです。

 

 

 

ひとつの仮説:魏延は単純に孔明の死後のどさくさの中で「粛清」された?!

孔明を持ち上げる魏延

 

 

前後の状況をみると、あくまで仮説ながら、こんな可能性が見えてくるのではないでしょうか?

 

・孔明は、魏延のことを別にどうとも思っていなかった(普通に使える武将として、戦いの際に部下として使っていた)

・魏延を嫌っていたのは、むしろ孔明の後輩にあたる蜀の重臣たちだった

・孔明が死んだあと、当然、魏延はそのキャリアの長さから重職に就くべき立場だった。軍事面ではトップレベルの将軍に抜擢されてもおかしくないキャリアだった

・それを嫌った重臣たちが、魏延をハメて殺した?

・さすがにそれでは後味が悪すぎるので、「いや実は生前の丞相閣下(孔明)が、前々から『魏延は裏切るから気をつけろ』と言っていたのだ」ということにした(孔明はすでに亡くなっているので、死人に口なし)。

・その話が膨らんで、『演義』の時代には、孔明が魏延の人相にこだわるという釈然としないエピソードになった

 

孔明と劉備、関羽、張飛

 

 

つまり、孔明という偉大なリーダーが急死した後の権力争いがあった、とみるわけですね。世界のどんな国でも、カリスマ的な指導者が亡くなった直後は、謎の死に方をしたり、謎のスキャンダルで失脚したりする重臣が出てくるものです。その犠牲者が魏延だったのでは、という仮説です。

 

 

もしそうだとすると、魏延をハメた真犯人は誰だ!?

不満が溜まる魏延

 

この仮説を採用した場合、気になるのは、「魏延をハメたうえに、それを孔明のせいにした可能性のある真犯人は誰?」ということですよね。

 

 

負けた魏延

 

 

あくまで空想なので、誰でも疑いの対象にはできるのですが、魏延と反目をしていた人物、ないし、魏延と権力を争う立場にいた人物となると、候補がかなりいます!

 

三国志ライター YASHIROの独り言

三国志ライター YASHIRO

 

蒋琬(しょうえん)費禕(ひい)姜維(きょうい)馬岱ばたい)、動機から探るならこのあたりは全員怪しい。事が事だけに、誰か一人が真犯人ということではなく、このあたりの人間全員の共謀だった可能性すらあります。

 

魏延からの提案を却下する孔明

 

いずれにせよ、孔明も魏延も、この問題については何も語らないまま亡くなってしまった以上、けっきょく「孔明と魏延の関係はなんだったの?」の謎は、永遠にミステリーとして残りそうですね。

 

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魏延特集

 

 

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YASHIRO

とにかく小説を読むのが好き。吉川英治の三国志と、司馬遼太郎の戦国・幕末明治ものと、シュテファン・ツヴァイクの作品を読み耽っているうちに、青春を終えておりました。史実とフィクションのバランスが取れた歴史小説が一番の好みです。 好きな歴史人物: タレーラン(ナポレオンの外務大臣) 何か一言: 中国史だけでなく、広く世界史一般が好きなので、大きな世界史の流れの中での三国時代の魅力をわかりやすく、伝えていきたいと思います

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