蜀の武将か、はたまた魏の武将か。蜀書にも、魏書にもその伝は立てられておらず、いくつかの文が散文されて記録されている武将の一人。それが孟達です。
元々は劉璋に、そこから劉備に、そして魏に行き、最期は反逆しようとして司馬懿に誅殺された武将。彼の裏切りの歴史……と言っては皮肉が過ぎますが、その足取りと行動から蜀の土地事情が読める所もあります。
今回はその辺りをご紹介していきましょう。
孟達の情報から詔を発する曹丕
さて孟達が魏に降ってから、曹丕にやたら気に入られたのは皆さんご存知のこと。
その孟達が曹丕に言った言葉の一つに「蜀の肉は味が薄いので、蜜や飴をかけて味を足しているのです」というものがあります。何を考えたのか曹丕はこれを詔として話したので、歴史に記録されてしまったのですが……この話から、蜀の土地事情が窺い知れるのです。
こちらもCHECK
-
そうだったのか!?曹丕はスイーツ男子。詩にスイーツの想いを込めちゃったよ!
続きを見る
蜀の土地事情「蜀の肉は味が薄い」
この言葉で気になるのは「蜀の肉は味が薄い」ということ。つまり味わいに欠ける、旨味に欠ける、そういうことでしょう。
肉の味わいが薄い理由として考えられるのは、そもそも土地が牧畜に適していない、更に言うと「畜産に回すエサ不足」と言った所でしょうか。つまり蜀の土地自体が痩せており、食料が乏しかった……と考えられます。
って、これだけ言うと「おいおい想像で語るんじゃないよ!」と思われるかもしれませんが、とある諺がこれを補強してくれるのです。
こちらもCHECK
-
曹丕はけっこうグルメだった!?蜀の食文化にも食いつく!
続きを見る
蜀犬日に吠ゆ
「蜀犬日に吠ゆ」とは、蜀の犬が日に吠える様。これは蜀は雨が降ることが多く、太陽が出る時間が少ないので、珍しく太陽が出ると犬が怪しんで吠える、転じて
「物を知らないために、当然であることに疑いを持つ様」を表しています。このような諺ができるということは、昔から「蜀の土地では日が照らない」ことが共通認識であったということ。そして日照時間が短いということは、つまり植物の生育が悪く、食料が育ちにくかったのではないかと推察できます。
こちらもCHECK
-
曹丕のグルメエピソードがまたひとつ鍾繇が送った五熟鍋とは?
続きを見る
蜀の食糧の味付け
さて食料に乏しいということで、牧畜にもあまり向かず、そこから肉の味わいが薄い、生育状態があまり良くない食肉を食べていた。これに味を足すために、蜂蜜などで味を補った、というのは想像ができますね。
そもそもとして素材の味が無ければ食べ応えがないですし、味付けで補うというのは普通のことです。で、ここで味付けのお話に移りましょう。
こちらもCHECK
-
北方三国志に登場する張飛の野戦料理!戦いを終えた者たちが食する『漢の料理』
続きを見る
【次のページに続きます】