劉表の野望!まさかの「儒教復活」をイデオロギーに劉表が天下統一に乗り出したら三国志はどうなっちゃうの?

2023年12月2日


 

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キングダムと三国志 信と曹操のはてな(疑問)

 

皆さんは、三国志初期の群雄の一人である劉表(りゅうひょう)について、どのようなイメージをお持ちでしょうか?『三国志演義』やその流れをくむ作品を読んだ人であれば、劉表といえば、流浪の劉備(りゅうび)を突然保護してくれた親切な人、という程度の印象かと思います。

 

正史三国志_書類

 

しかし、『正史三国志』を読むと、劉表の印象はガラリと変わります。劉表は、後に魏呉蜀が激しく争奪戦を繰り広げる戦略的な要衝、あの荊州(けいしゅう)を、劉備や孫権(そんけん)が台頭するよりも前の段階において、しっかと地盤として握っていた権力者です。

 

劉表

 

 

しかもこの劉表、先祖代々この荊州という土地を地盤にしていた名士というわけでもありません。董卓(とうたく)に任命されて荊州に赴任してから、地元の豪族や山賊まがいの連中を、時に抱き込み、時には謀殺し、ほぼ一代で自身の勢力下においた立派な群雄の一人なのです!

 

ポイント解説をするYASHIRO様

 

どうやら、政治や計略について、かなりの手腕があった上に、そもそも戦略的要衝の荊州を早い時期に地盤にしていたとは!となると、想像が膨らんできますよね。この劉表、やり方によっては、天下を狙えた候補の一人だったのではないでしょうか?

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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劉表が天下を統一するために依るイデオロギーが存在した!?

靖王劉勝の子孫と勝手に名乗る劉備

 

「いや劉表が天下を狙うというのは難しいだろう?彼には曹操(そうそう)のような強固な権力への野心もなければ、劉備の漢王室復興のような夢もない」と思うかもしれません。ところが!『正史』を追うと、劉表のキャリアには、無視できない背景があるのです!

 

孔子と儒教

 

それは、劉表はこの時代の中国における、「儒教(じゅきょう)の教養」を体現するような人物だった、という点です。彼は天下が荒れる前、儒学を熱心に勉強し、学者としてたいへんな声望と人脈を得ていました。

 

袁術、劉表

 

そういえば、三国時代の、劉備・孫権・曹操と並べてみても、「儒教を手厚く保護します」というイデオロギーを旗印に天下に号令した英雄はいません。劉表がここに目を付け、「わしが天下を取った暁には儒教を基盤にした治世をもたらす!」と宣言したら、三国志の展開はどうなったのでしょう!

 

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儒教を保護する英雄というポジションは実は大望されていた!?

儒教の教えを大切にした若き王莽

 

ここで、三国時代における儒教の立場を思い返してみましょう。もともと後漢が腐敗し崩壊へ向かって行ったのは、政治家たちが礼節や仁徳を忘れ、宦官(かんがん)たちが私利私欲の為に横暴を繰り広げていたことが一因でした。その混乱の時代に現れた強烈な個性である曹操は、決して儒学者を弾圧はしませんでしたが、旧来の風習を嫌う曹操は、しばしば、儒教にシンパシーの強い部下とは軋轢を起こしています。

 

楊修

 

鶏肋(けいろく)の事件で有名な楊修(ようしゅう)も、もともとはその儒教の教養が曹操に疎んじられていたという説がありますし、名参謀だった荀彧(じゅんいく)と曹操が次第に疎遠になったのも、荀彧が儒学者出身だったことが一因と言われています。後漢末期には儒教出身の名士(めいし)は不遇だった。新時代を代表する曹操陣営ですら、辛い思いをしている。ならば!

 

朝まで三国志 劉表

 

荊州で劉表が「わしは曹操とも孫権とも違う!儒教を中心とした社会を作れるぞ!」と呼びかければ、これはなかなかインパクトがあったのではないでしょうか!

 

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儒教を旗印に天下統一を目指す劉表の勝ち筋とは?

魏王に就任する曹操

 

しかし、たとえそのような大義名分を掲げたとしても、劉表に、そもそも天下統一への「勝ち筋」はあるのでしょうか?私もいろいろ考えたのですが、結果、残酷ながら、「河北(かほく)を制圧した後の曹操にはどうしても勝てない」というのが結論でした。となると、劉表が天下を統一するのに必要な勝ち筋は、スピード感が命です。おそろしく早い段階で天下統一に向けて行動するしかないのです。

 

袁紹に追い詰められる曹操

 

具体的には、袁紹(えんしょう)と曹操が戦っている間に、劉表は電撃的に行動し、いきなり劉璋軍に奇襲をかけて、益州(えきしゅう)を奪ってしまうこと。これしかありません。

 

三国志の武器 重戦車 曹操

 

そして、曹操が官渡(かんと)の戦いで袁紹軍を破り、河北に大勢力を完成させた時には、劉表はすでに、荊州と益州をおさえた「劉表の蜀国」を建国し終えていること。この電撃的な「蜀国独立」を果たせば、地の利を活かして曹操との決戦に備えられるでしょう。そして、荊州と益州を抱える巨大勢力となった劉表ならば、孫権を上から目線で抱き込んで同盟に参加させることもできるでしょう。

 

赤壁の戦い

 

このシナリオでは、曹操の天下分け目の最終決戦は、赤壁(せきへき)ではなく、荊州を舞台に、曹操対劉表孫権同盟軍、という形で戦われることになります。おまけに、人材としては、荊州と益州を押さえていれば、本来は劉備軍に吸収されるはずの黄忠と魏延が配下に入ります。なかなか、強力な劉表軍が完成するのでは?

 

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まとめ:天下三分まで突き進んだ後が苦しいかも

三国志を楽しく語るライターYASHIRO様

 

ただしこのシナリオ、まだ問題が残っています。

 

司馬亮を気遣って兵士たちが扇で仰ぐ

 

「荊州と益州を含めた大勢力を築く」と先ほどから述べていますが、それってつまり、正史でいう「劉備・孫権・曹操」の天下三分の計とまったく同じ構図が出来上がり、その「劉備」のポジションを劉表が早期に乗っ取ってしまう、というだけとも言える話。

 

曹操から逃げ続ける劉備

 

となると、問題は天下三分が成立した後です。「あの劉備ですら、荊州と益州を持っていながらも、曹操を倒すのは無理だった。劉表が荊州と益州を握っていたとしても、果たして、劉備以上に戦えるのか?」そうなのです。

 

劉表死す

 

私が考えられたのも、ここまで。劉表の野望は、史実における劉備の最大版図と同じくらいの大勢力を作るところまで。その後は、けっきょく、曹操軍の豊富な人材と物資力に押され始めるでしょう。

 

馬に乗って単身荊州へ赴く劉表

 

唯一、劉備にもできなかったような大逆転の鍵があるとすれば、よりどころとなる儒教イデオロギーがどう作用するか、です。まさかの!曹操軍の儒教系の人材、つまり、揚修、荀彧、荀攸が、こぞって劉表に寝返るという「儒教系キャラの胸アツ大集合」事件が発生すれば、夢の劉表大逆転もあり得るかもしれません!ですが、そこまでは、さすがに夢を見すぎでしょうか?

 

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三国志ライターYASHIROの独り言

三国志ライター YASHIRO

 

「いや蜀を建国したところで後継者問題でガタガタになり、結局は流浪の劉備を呼んで国を譲るしか道がなくなり、最後は蜀の君主は劉備になっちゃう」って?おお、そうかもしれません。

 

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YASHIRO

とにかく小説を読むのが好き。吉川英治の三国志と、司馬遼太郎の戦国・幕末明治ものと、シュテファン・ツヴァイクの作品を読み耽っているうちに、青春を終えておりました。史実とフィクションのバランスが取れた歴史小説が一番の好みです。 好きな歴史人物: タレーラン(ナポレオンの外務大臣) 何か一言: 中国史だけでなく、広く世界史一般が好きなので、大きな世界史の流れの中での三国時代の魅力をわかりやすく、伝えていきたいと思います

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