
強烈なキャラクターに溢れている、革命期からナポレオン時代のフランス史の中でも、特に「悪辣きわまりないが有能な政治家」として異才を放つ人物が、ナポレオンの外務大臣、タレーラン。
とっぴな空想とは百も承知ですが、そのタレーランが、諸葛孔明のポジションになり替わり、蜀の丞相を務めていたら、いったい三国志の展開はどうなったのでしょうか?ヨーロッパの地図をも自在に操った男だけに、三国の勢力関係も巧みに操り、蜀の運命を変えたのではないでしょうか?
そんなとっぴな「イフ展開」を、フランス史も三国志も両方好きなライターとして、このたび私が考えてきました!
この記事の目次
まず「中国統一は、あきらめましょう」とハッキリ言うでしょう
もしタレーランが蜀の丞相になったら、最初に何をするか?今後の戦略方針を、ハッキリとこう示すことでしょう。「蜀が天下統一をする、などという夢物語は、こんりんざい、捨てましょう」と。なにせ、このタレーラン、主君であったナポレオンがイケイケだった時代にも、「フランスが大国になろうなどと考えるのは、むしろ滅亡のもと」と警告し続けていた人物なのです。
19世紀の大国フランスの政治家でありながら「領土拡張なんかは不要」と冷徹に言い続けていた男。蜀の状況を見るなり、「魏や呉に勝とうなどという考えはきっぱり捨てて、今の領土で豊かに長生きする方法を考えましょう」とあっけなく言うことでしょう。
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次に魏延と「嫌われ者どうしの仲良しぶり」を宴会でアピールする
とうぜん、このタレーランの方針は、「漢王朝の復興こそが蜀の大義だ!」とする、マジメな蜀の武将たちからは猛反発されます。その声を防ぐために、タレーランならどうするか?
ヒントになるのは、タレーランがナポレオン政権下で失脚の危機にあったときのこと。彼は、同じナポレオンの政権下で、本来は犬猿の仲だったはずの警察大臣のフーシェと急接近します。あるとき、パーティーの場で、「いやあ、フーシェさん!」と大勢が見ている前で仲良しぶりをわざわざアピールしたのです。
これは明らかに、周囲の政治家への「みせつけ」。フーシェというのも、陰謀まみれの、とんでもない奸雄。「私を粗末に扱うと、このフーシェと悪魔のコンビを組んで、反乱を起こしちゃうよ?」というプレッシャーを、主君であるナポレオンを含めた周囲に与えたわけです。
そんなタレーラン、蜀でも似たことをするでしょう。おそらくは、「反骨の相がある」などといわれていろいろ警戒されて不遇な目にあっている魏延に目を付け、宴会の場で「やあ魏延さん!」とめちゃくちゃ仲良しアピールをするでしょう。蜀の真面目な武将たちに対する、「オレのいうことをきかないと、魏延と手を組んで、反乱を起こしちゃうかもよ?」という、みせつけです。
魏延とタレーランが悪魔のコンビを組んで勝手を始めたらたまらないと、蜀将たちも青くなるでしょう。
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つづいて魏と呉の間に不穏な国境問題が頻発する
その次に、何が起こるか?
おそらくタレーランは、魏と呉それぞれに使者を送り、「戦争はやめて、仲良くしましょう」と言い出すでしょう。それぞれ中国統一を狙っている魏も呉も、そんなことの言うことをきくわけがない。ところが、ここで不思議なことに、魏と呉の間で、国境紛争や、妙な衝突事件が頻発するようになります。タレーランが仕組んでおいたさまざまな裏工作が影で効き始めたようです。
急速に魏と呉の緊張関係が高まると、どちらも蜀のことをおろそかにできなくなる。双方とも、蜀を自陣に引きこもうとしてくる。これによって、勢力としては一番後塵を拝していたはずの蜀が、まさにそれゆえに、三国の中でちやほやとされる、絶妙な立ち位置になるわけです。蜀が天下を諦め、「魏呉の間でバランサーとして生き続け、平和に暮らす」戦略を選択してしまったら、晋による統一は起こらず、「魏呉蜀」の三国時代が、もう100年くらい続いたかもしれません。
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その次にやることは、私腹を肥やすこと?!
このようにして、平和に蜀を発展させる基盤を、外交工作だけで完成させたタレーラン。この功績には誰も文句を言えないでしょう。ただ一点、問題が発生します。タレーランのことですから、このように成功を収めると、「この国を救ったのだから当たり前でしょう?」という顔をして、さまざまな利権を手中にし、汚職まみれ、贅沢三昧の生活をするでしょう。
三国志の中では、このような「悪辣キャラ」は滅亡フラグですが、実際のタレーランは金銭問題まみれでも生涯安泰、楽しく暮らしたオオモノです。蜀でも同じように、私腹を肥やしながら好き放題を始め、しかも安泰な地位にとどまることでしょう。
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まとめ:劉禅とならむしろこの人物を使いこなせた?!
このようなキャラクターは、劉備が存命だったら許されなかった存在でしょう。しかし実際のタレーランは、ブルボン復古王朝では、王様をバカにしながらもその下で見事に活躍しました。タレーランは、自分の理想や意志が薄いぼんやりした主君の下につくほうが、活躍できるようです。
となると、劉禅との相性は、むしろ抜群だったのではないでしょうか?
私腹を肥やすという一点も、劉禅ならば、「うん、でもまあ、タレーランはあれだけ働いているのだから、よいではないか」と見逃してくれるかもしれません。ただし、その「蜀」の世界では、マジメな姜維や馬岱あたりはどこかで抹殺され、適度におだてておけば案外使い心地のよい魏延あたりが、いいように利用されている立場であるとも気づかず、軍事面を統括して偉そうに幅をきかせている、そんな人材配置の国家になるでしょう。
関羽や張飛は草葉の陰で「あんな金の亡者に牛耳られるとは情けない」と大泣きすることでしょう。でもそれについても、劉禅は、「まぁ、これでみんな平和に暮らせるならよいではないか」とのんきに構えることでしょう。
ナポレオン フーシェ タレーラン情念戦争1789-1815 / 鹿島 茂
三国志ライターYASHIROの独り言
そんな「蜀の平和」、皆様は、どうお考えでしょうか?民衆にとっては、意外に悪くないかも?
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