公孫淵(こうそんえん)の反乱は、呉にも微妙な混乱をもたらしました。
それが、呉の重臣、張昭(ちょうしょう)と主君、孫権(そんけん)の対立です。
呉の建国当初からの重臣と三代目君主の意見の食い違いは、
まるで子供のような大喧嘩に発展していきます。
前回記事:133話:公孫淵の反乱と司馬懿の台頭
この記事の目次
切っ掛けは公孫淵の帰順・・
西暦235年、長年、魏に臣従していた遼東の公孫淵から
使者が来て呉に帰順したいと申し入れてきました。
孫権は、魏を牽制する上で、遼東の公孫淵を味方に引き入れるのは、
ベストな戦略と考えていたので、これを喜びます。
気を良くした孫権は、公孫淵に燕王の位を与えようとします。
しかし、これに真っ向から反対した者がいました、張昭です。
張昭が猛反対、公孫淵は信用できないペテン師です!
張昭「畏れながら申し上げます、公孫淵という男、
叔父を追放して強引に遼東を支配して以来、あっちにふらふら、
こっちにふらふら、余り芳しい噂を聞きません。
今回の件も所詮、魏に自分を高く売る為に我が国に接近しただけ、
ここで王位など授けたら、やがて天下の笑い物となりますぞ!」
孫権「今から、そう断言したものでもあるまい、、
朕の見た所、公孫淵は中々時流を見る目がある男。
或いは、この辺りで魏と手を切り、我が国と誼を結んで、
領地の拡大を望んでおるやも知れぬではないか!!」
それでも張昭は公孫淵に燕王の称号を授ける事に反対しました。
孫権は怒り、張昭を無視して燕王の位を授けると決定すると、
怒った張昭は、病気と称して朝廷に出仕しなくなります。
怒った孫権は、張昭の屋敷の入り口を漆喰で塗り固める
100%当てつけの張昭の行動に孫権の怒りも爆発します。
孫権「張昭のやつめ、病気と称して出仕しないとは子供のような真似を
そっちがその気なら、永遠に出れないようにしてやるぞ!」
孫権は、張昭の家に漆喰を持っていき入り口を石で塞いで、
漆喰を塗って出られないようにしました。
それを知った張昭は怒り、屋敷の内側から入り口を石で塞いで、
漆喰で塗り固めてしまいます。
「仰っしゃる通り、二度と屋敷から出ません!」という皮肉でした。
呉の使者、公孫淵に斬殺される・・
ところが孫権の見込みは大きく外れました。
公孫淵を燕王に封じる使者が遼東に到着すると公孫淵は変心し、
使者を斬り、その首を洛陽に送ってしまったのです。
魏帝、曹叡(そうえい)は、これを喜び公孫淵を大司馬に任命します。
張昭の予言通り、孫権はコケにされ呉は天下の笑いものに
なってしまったのです。
孫権「公孫淵の野郎~朕をコケにしよって、
ウギギギギ・・・お、覚えておれよォォッ!!!」
孫権は怒り狂いますが、今、魏に接近している遼東を征伐すれば、
魏が介入してくるのは間違いないので泣き寝入りするしか
ありませんでした。
孫権、謝罪する為に張昭の屋敷を訪れるが・・
一方で重臣の張昭が居なくなった朝廷からは、威厳が消えていました。
孫権は、自分の判断が間違っていた事もあり、張昭に謝罪して、
戻ってきてもらおうと張昭の屋敷を尋ねます。
裏口から使者を派遣して、謝罪の意を伝えた孫権ですが、
張昭からは、「病気で挨拶も出来ません」という返事だけです。
それで孫権は、再びブチ切れてしまいました。
孫権「こ・の・や・ろ・う、、朕が自ら頭を下げているってのに
この路上で放置プレイか?
いいだろう、じゃあ、意地でも家から出してやるぞ!」
孫権は、部下に火を起こさせて、張昭を脅します。
孫権「おい!出てこないなら、こんなボロ屋敷焼き捨てるぞ!
朕は本気だぞ!いいんだな?」
すると張昭は、戸締りを厳重にし絶対に屈服しない構えに出てきます。
孫権は閉口して、部下に火を消させました。
暫くすると、嫌がる張昭を、息子達が抱きかかえて、家から出てきましたので、
孫権はこれ幸いと、張昭を自分の馬車に乗せて宮殿に帰り、改めて丁重に謝罪しました。
これによって、張昭は渋々、再び出仕するようになりました。
西暦236年、呉の偉大な御意見番、張昭死す
しかし、翌年の236年、張昭は、81歳でその生涯を閉じます。
赤壁の戦いでは、飽くまでも漢朝の回復を望み降伏を主張した張昭ですが、
内政官としての能力は確かで、孫策(そんさく)から託された孫権を、
父のような厳しい目で指導・監督し続けました。
孫権との喧嘩は一度や二度ではありませんが、お互いに相手を
大事に思っている事は確かで、最後には和解するのが常でした。
ここで、張昭が死んだ事で、孫権を強く抑えられる存在は消滅し、
孫権の治世にも暗雲が立ち込めてきます。
次回記事:135話:明帝曹叡の死と司馬懿への遺言
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