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こんなに豪華!三国志演義の銅雀台の宴を再現してみるよ【後半】

2017年4月26日


 

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曹操(そうそう)の最大のライバルであった袁紹(えんしょう)から奪った領土である鄴(ぎょう)という都に

『銅雀台』と呼ばれるハイクオリティな宮殿を建造した曹操(そうそう)はそこで宴を催しました。

三国志演義本編では、ここで面白いエピソードが記されています。

銅雀台の宴が始まる前に、曹操(そうそう)は武官達にこう言います。

 

前回記事:こんなに豪華!三国志演義の銅雀台の宴を再現してみるよ【前半】

関連記事:銅雀台(どうじゃくだい)ってなに?どんな建物で何をするところだったの?

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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銅雀台における曹軍アーチャーNo 1決定戦

 

曹操(そうそう)「余の部下は、みんな凄いのは知っているけど、実際腕前競ったらどうなるの?」

こうして、銅雀台において、弓で的を射る「曹軍No1アーチャー決定戦」が行われます。

曹操(そうそう)は蜀産の赤い錦の袍(ひたたれ)を的として、柳の枝にかけさせ、

その下に垜(あずち=的の背後に山状に盛った土)を築かせました。

ここで曹操(そうそう)の親族を赤チーム、それ以外を緑チームとしてチーム分けをしました。

ルールは簡単、馬を操り仕切り線より向こう側に出ないように的に接近、

珠玉に彩られた祝宴用の弓と長身の矢を用いて的を射れば良いのです。

見事射抜いた者は「的の袍」をゲット!外したら罰として水を飲む!!

今回は三国志演義・銅雀台の宴、後篇を御紹介します。

 

前篇のあらすじ

 

赤チーム、若将・曹休(そうきゅう)が的を射て先制したものの、

緑チームの国境ディフェンシブキング・文聘(ぶんへい)が即座に的を射返します。

それを見た赤チーム・曹洪(そうこう)が射返し、的には三本の矢が立ちました。

対する緑チームの張郃(ちょうこう)をこれまでの将とは違い、

仕切り線まで近づくと後ろを向き、後ろ様に射当てました。

それをうけて、赤チームの夏侯淵(かこうえん)は後ろ様に射るとともに、

これまで射られた四本の矢の真ん中を射抜くという芸当を見せます。

「穴が五つもあいた袍なんて貰ってもなあ・・・」

等ということは誰も考えていない様子です。

 

優勝者決定・・・のはずが

 

夏侯淵(かこうえん)「この勝負、これにてわしに決まったぞ。」

と叫びました。

その声とともに、緑チームの元から一騎の馬が駆けます。

後に魏の五大将軍として知られる徐晃(じょこう)です。

 

 

徐晃(じょこう)「待て!錦袍はこの徐晃(じょこう)が頂戴した。」

夏侯淵(かこうえん)「わしの技を見なかったのか。取れるものならば取ってみよ。」

徐晃(じょこう)「取って見せるとも。真ん中を射当てたから何だと言うのだ。

わしは袍を直接頂戴致す。」

そう言うと徐晃(じょこう)は狙いを定めて矢を放ちました。

矢は的の赤丸には向かわず、的を据え付けた柳の枝を射切り落としました。

支えを失った錦の袍は、ゆらゆらと力無く舞い落ちていきます。

徐晃(じょこう)は馬を駆り、

仕切り線を飛び越えると宙を舞う袍の元に馳せつけ、これを掴み取りました。

そして、曹操(そうそう)の居る台の前に駆け参じると、

徐晃(じょこう)「丞相、有り難き幸せに存じます。」

曹操(そうそう)「・・・ (いや、これ的を射るゲームなんだけど・・・)。」

これには、曹操(そうそう)を含めた一同は驚きのあまり、

『お前、まだ的を射当てて無いじゃん』

というツッコミをすることもなく、あまりの力技に唖然とします。

 

今度こそ優勝者決定・・・のはずが

 

徐晃(じょこう)は馬を返そうとした時、また一騎の馬が緑チームより飛び出します。

一同が見ると、曹操(そうそう)の配下でも最高の豪の者として知られる許褚(きょちょ)でした。

許褚(きょちょ)「何処へ袍を持っていく。とっととわしに渡せ。」

徐晃(じょこう)「わしが頂戴した物を、何を抜かすか。」

許褚(きょちょ)は徐晃(じょこう)の前で凄んでいます。

そもそも『許褚(きょちょ)は射当てるどころか、弓で射てすらいないじゃん』

というツッコミがありますが、

許褚(きょちょ)は物も言わず馬を飛ばせてぶつかって行きます。

 

 

両馬が近づいて徐晃(じょこう)が弓で殴り、

許褚(きょちょ)はそれを掴み取って彼を引きずり落とそうとします。

そして、両者馬を下りての取っ組み合いとなりました。

曹操(そうそう)は急いで、二人を引き離させた時には、

景品であった袍は跡形も無く引き裂かれていました。

 

結局、優勝者は・・・。

 

曹操(そうそう)は二人を台に呼び寄せたが、お互い睨み合ったまま、

一触即発の様子でした。その有様を見た曹操(そうそう)は笑って言いました。

曹操(そうそう)「余は貴公らの手並みを見たいと思っただけじゃ、

錦の袍の一枚や二枚は惜しくは無い。」

そう言って大将達を皆台上に呼び、全員に錦の袍を与えました。

ナンバーワンよりオンリーワンと言いますか、

結局曹操(そうそう)は部下全員に景品を与えるつもりだったのでした。

大将達は礼を述べて、袍を受け取りました。

その後、曹操(そうそう)は大将達に座に着かせると、楽の音色が響き渡り、

酒や料理、山海の珍味が運び込まれます。

文武百官は、盃を交わして料理に舌鼓を打ち、盛大な酒宴となりました。

 

祝宴での文官からの賛美

 

曹操、今度は文官達を見遣り、「武官達は存分に騎射の手並みを戦わせ、武勇の程を披露してくれた。

貴公達とて、いずれ劣らぬ博学の士、この高台に上った上は、

美しき詩文をもってこの盛時を祝ってはくれぬか」

 

王朗(おうろう)・鐘繇(しょうよう)・王粲(おうさん)・陳琳(ちんりん)らが

『曹操(そうそう)の徳を称えた詩』を書き上げ、

そこには『天命を受けて至高の位(帝位)に昇るべし』との心が含まれていた。

曹操(そうそう)は一つ一つ取り上げて読み、笑いを浮かべました。

『帝位につけ』とは、曹操(そうそう)自ら献帝から皇帝の位を譲り受ける、という恐れ多いことですが、

文官達は、曹操(そうそう)は既にそれほどの地位であると述べているのでした。

 

それに対して曹操は・・・

 

曹操(そうそう)は一同に言います。

曹操(そうそう)「いずれの詩も見事な出来栄えじゃ。

ただ、詩は見事じゃがここから読み上げられるほどわしは

優れてもいないしましてこれ以上高い位につこうとも思わぬ。

わしにはさしたる才能もないのに推挙され、

天下が乱れたため隠遁しながら天下の治まるのを待ってから仕官するつもりであった。

それが、朝廷に召しだされたので、

志を変え国の為に賊徒を討ち平らげて功名を挙げることになっただけじゃ。

死後に『漢の故征西将軍曹侯の墓』とでも書き残されれば本望と思っておった。

それが、董卓を亡ぼし、黄巾の賊徒を平定し、袁術呂布・袁紹を破り、遂に天下を切り従え、

身は宰相となるに至ったのに、これ以上の望みがあろうか。

わしがおらねば、皇帝の名を冒す者が出たか知れぬ。わしが兵権を握っているのを見て、

天下を奪おうとの野心があるが如くあらぬ疑いをかける者もあるがそれは誤りじゃ。

わしが一度兵権を離せば、わしの命を狙うものが現われ、わしが死ねば国は傾くであろう。

それ故、虚名を求めて実害を招くようなことはしないのじゃ」

一同はこの言葉に感嘆し、平伏するのでした。

 

三国志ライターFMの独り言

 

今回ご紹介させて頂いた銅雀台の宴は、あくまで三国志演義におけるフィクションの宴ですが、

実際にはこれと同じようなことが行われていたと考えられます。

本来、この場面で重要な事は、曹操(そうそう)が文武官達に最後に述べた、

「高位について下さい(つまりは帝位)」

との言葉に対して、

「わしには分が過ぎたモノ、そのような気は毛頭ない。」

との返事です。曹操(そうそう)は「権力を握っても献帝(けんてい)から

権力を取り上げるようなことはしない(簒奪の意思は無い)」、言いたかったのでした。

また、物語としても曹操(そうそう)の部下達が、

互いの武芸を競い合うというのは面白いシーンでもあると思います。

通常の戦では味方同士で実力を競うこと等ありませんので、

自軍内でナンバーワンを決めるというのは、フィクションとはいえ中々面白い展開です。

 

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三国志は、大昔の出来事ですが、物語をいろいろな視点や切り口で見ていくと、新しくて面白い発見があるのが好きです。 人物像や対人関係、出来事、時代背景、逸話等々、古い話とはいえ、学ぶべきところはたくさんあります。 埃をかぶせておくにはもったいない、賢人たちの誇りがあります。

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