『三国志演義』の中には南蛮の王が象(ぞう)兵を用いて戦うシーンが出てきます。これは、物語を盛り上げるための演出なのかそれとも実際の戦いにも象が使われていたのか検証してみたいと思います。
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象の飼育は殷時代から
殷代の青銅器には、リアルな象をかたどったものが数多くあります。また、象牙の簪(かんざし)や桶(おけ)なども多数見つかっています。
中国河南省安陽県にある殷代の都跡、「殷墟(いんきょ)」では複数の王墓と一緒に「獣葬墓」が見つかっています。獣葬墓とはその名の通り、動物を埋葬した墓で、ウマ、スイギュウ、シカ、ブタ、イヌなどのほかに、トラ、ヒョウ、クジラなどの珍しい動物の骨もありました。象の墓にいたっては、2個も発見されました。
このことから、殷王室には動物園があり、珍獣を集めていたのではないかと言われています。また、南方から貢物としてやってくる象とは別に、「獲象」していたという記述も見つかっています。殷代には中原にも野生の象がいたのです。
漢の時代までには、中原の野生の象はいなくなっていました。しかし、漢時代の歴史書である『漢書』にも漢王宮には動物園があり、象が飼育されていたとあります。象は人々にとって比較的、身近な動物であったと考えられます。
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象兵の記録は春秋時代から
春秋時代の書物、『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』に象を戦で使用した記録があります。紀元前506年、楚(そ)の昭王(しょうおう)は呉(ご)軍との戦争の際に、象のしっぽに火を縛りつけて、敵陣に放ちました。
時代が下り、漢時代。司馬遷は『史記』大宛列伝の中で、「インドでは人々は象に乗って戦う」と書いています。中国において、かなり古代から象兵による戦いは行われていて、漢の時代にも、象兵の概念は生きていました。つまり、三国時代に象兵はいたと考えてもいいのではないでしょうか。
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