関羽の(かんう)仇討ちの為に、呉を滅ぼすと誓った劉備(りゅうび)は、
ついに自ら長江を渡ります。
これには、馬良(ばりょう)や黄権(こうけん)も、何かあれば退却が
難しくなると反対しますが、劉備は、それを押し切っての進軍でした。
しかし、呉の領内に入っても、陸遜(りくそん)は逃げ回り、
一大決戦が起こりません、広大な呉の領地です75万という大軍でも、
まるで大海に浮かぶ、木の葉のようなものです。
前回記事:114話:蜀キラー陸遜、劉備を打ち破るための不気味な沈黙
陸遜の作戦に気づく劉備
ここで、劉備はようやく陸遜の作戦が分かりました。
「陸遜め、わざと戦闘を避けて、我々を疲弊させて退却させる狙いだ」
すでに、劉備が蜀を出てから1年が経過していました。
兵は拙速を貴ぶという兵法の原則から考えても長過ぎです。
最近では、蜀軍も長い野営生活で疲労が溜まり、士気も低下して
動きも鈍くなりつつありました。
75万の大軍も、拠点を抑える為に裂いていて、
細い、一列の隊列になっています。
補給線も伸びきっていて、後方との連絡や連携も難しくなっていました。
陸遜を挑発する劉備
劉備は、早く決着をつけるべく、陸遜を散々に挑発します。
付近には、伏兵を忍ばせて、呉軍が攻撃してきたら、一気に叩くつもりでした。
ところが、陸遜は、伏兵を察知して、決して挑発には乗りません。
劉備は、既に手詰まりになっていました、勝利しているつもりが、
遥かに呉の領内に誘いこまれていたのです。
季節が変わり、陸遜が遂に動く
季節が秋を迎えた、ある日の夜半、いよいよ、陸遜が動きました。
陸遜:「諸君、いよいよ、侵略者を滅ぼす時が来た、見よ、劉備の陣営を、
兵は一列にだらだらと陣地を敷き、相互の連絡は取れない、、
劉備玄徳は兵法を知らぬ、愚か者だ、これより全軍をあげて、
蜀の陣地に火をかけ一斉に焼き払うぞ!!」
呉軍は、夜陰に乗じて、寝静まっている蜀軍の陣地の枯草に
次々と火矢を射掛けました。
蜀軍の陣地は飛び火
それぞれの陣地は、それほど距離が離れていません、
枯れ草は、あっという間に燃え広がり蜀軍の陣地に飛び火します。
これまで呉軍を「腰抜け」と侮っていた蜀の兵士は、
とっさの事に大混乱になり、同士討ちを開始しました。
陸遜は、これに乗じて、蜀の陣営に次々と火を放ち、
50あった、蜀の陣地の内、40を焼き払いました。
逃げるのに必死な劉備
劉備は、戦うどころではなく、馬に飛び乗って、敗走しますが、
どこを見ても炎に包まれる、蜀の陣地と斬り殺された蜀兵の
死体の山です。
「なんという事だ・・私は、私は、何と言う愚かな事を・・
おおお、、蜀の人民に孔明に合わせる顔がない、、」
劉備は、失意のあまり、何度も落馬しそうになりながらも、
何とか、配下に励まされ、呉の追っ手をかわしながら、
後方へ、後方へと落ちのびます。
夷陵の敗戦
劉備は、この夷陵の敗戦で、数万人という死者を出します。
王甫(おうほ)、張南(ちょうなん)、傅彤(ふとう)、程畿(ていき)、
というような優秀な武官と文官を失い、或いは捕虜にされました。
関羽の仇討ちで開始された夷陵の戦いは、蜀の国力をすり減らす
惨憺たる大失敗に終わったのです。
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