曹丕(そうひ)ってどんな人?魏書には正当性を表す記述ばかり!?


歴史上初めての禅譲(ぜんじょう)

曹丕皇帝

 

まあ紆余曲折を得て無事に太子となり、曹操が没した220年に魏公を継いだだけでなく、後漢の献帝から禅譲を受け、魏王朝を開きます。「禅譲」とは、皇帝が血縁者でない徳のある人物へ地位を譲る事です。平和裡に行われたら禅譲、無理に暴力的に奪うことは簒奪と呼びます。徳を失った皇帝が追われて代替わりすれば放伐です。神話上の五帝の時代から行われてきた…と伝わりますが、儒教が体系化する中で生まれた考え方のようです。そして曹丕は実質、禅譲を行った最初の皇帝です。ちなみに10世紀の五代十国時代、漢民族国家の後周で行われたのが最後です。曹丕の前に禅譲を行ったのは神話の時代なのですから、後漢に徳が無くなったので魏を建国する、という運びにするのは、とてもとても気を使って行われたことでしょう。一応新の王莽も前漢から禅譲を受けた…とありますが、ほぼ簒奪ですので、初めては曹丕で良いのではないでしょうか。

 

 

魏の正当性を述べるばかりの「文帝紀」

曹丕 スイーツ

 

実は魏書文帝紀の大部分が、禅譲の正当性を示すための記述で埋められています。形としては、民(ここでは魏公国の臣下や後漢の大臣達)からの要望を受けて、献帝からも詔勅が発せられ、これらを18回も断り続けた曹丕が最後には受け入れる…となっています。当時の人々の禅譲、皇帝位についての考え方を知るには良いところだと思うのですが、正史でエピソードを追って読みたい場合、ここを細かく読むのは苦行以外の何物でもない…私は辛かったです。

 

 

禅譲の後、40歳の若さで亡くなる

40歳の若さで亡くなる曹丕

 

禅譲が済んだ後は、どこへ行幸した、誰が降ってきた、呉を討伐したなど治世について書かれています。しかし文帝治世は何と7年間という短さでした。風邪をこじらせて肺炎にかかったことが原因と伝わっており、40歳の若さで崩御します。死の間際、側近の司馬懿(しばい)や陳羣(ちんぐん)達に後事を頼み、曹叡(そうえい)を後継ぎに指名しました。

 

治世の短さも相まって、文帝紀は曹丕個人についての記述というより、魏建国のために設けられた…という印象をうけます。いま手元にあるちくま文庫の『正史三国志 魏書1』だと、全90ページ弱(武帝紀は120ページ以上)のうち何と50ページが、曹丕誕生時の瑞兆だとか、禅譲に関わるやり取りの記述に割かれています。その後には即位に伴う祭祀や体制作り、そして治世についての記録、崩御に際しての弔文など。彼自身の評については最後の5ページしかありません。


最後の5ページ中のエピソード

曹丕 恋文

 

その僅かな紙幅から垣間見れる曹丕本人のエピソードをご紹介します。まずは「筆を下せば文章となる」と謳われた文才です。詩作のほか、文芸論『典論』、君主論『太宗論』といった文章を遺しています。また正史にはありませんが、後漢時代の説話を集めた『列異伝』の編者だとも伝わります。そのほか、若い頃には著述に励み百篇ものたくさんの文学作品を記したり、皇帝になってからも儒教の経典集『皇覧』を編纂させました。

 

註に載る『典論』から引用された本人の自己申告では、戦場の陣でも書物を離さなかった曹操を見習い、たくさんの本を読んだんだ、と振り返っています。だけど作文・詩作と読書、武術以外に、父のような多彩な趣味は無かったんだとも。ただキ(其の下に木)という遊戯は得意で極めたそうです。


曹丕萌えー

ツンデレ曹丕

 

若い頃の武術自慢も載っています。荀彧(じゅんいく)相手に騎射の妙技をドヤ顔(が私には見えました)で話すシーン、初めて読んだ時には結構萌えました。

冷酷、簒奪者という悪いイメージが付いている曹丕

 

よく冷酷、簒奪者という悪いイメージが付いてまわり、実際そうした逸話が残っている曹丕ですが、繊細で神経質ながら曹操の期待に応えようと頑張り、後ろ指を指される帝位にもキッパリと就き、宦官の弱体化、法整備、九品官人法の採用と内政重視の充実した治世を敷いた…ちょっと捻れて扱いにくい、けど名君。そんな曹丕の姿が見えたような気がしました。

 

関連記事:九品官人法(きゅうひんかんじんほう)は悪法?どうして曹丕は採用したの?

関連記事:【列異伝】なんと!曹丕は中国初オカルト小説の作者だった?

 

【魏のマイナー武将列伝】
魏のマイナー武将列伝

 

 

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