馬刺し、牛刺し、魚の刺し身、日本人は肉を生で食べるという事に
抵抗が無い世界的にも珍しい民族です。
しかし、世界の大半の国では、必ず肉と魚には火を通して食べます。
それは、生肉には寄生虫がいて、時としては重篤な症状を発症するからです。
三国志では知謀の士として知られる陳登(ちんとう)も、この寄生虫により死にました。
生食は大変危険、寄生虫の宝庫

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なぜ、海外では肉や魚を生で食べないのか?それは生の肉や魚には、
かなりの高確率で寄生虫が存在しているからです。
例えば、生のイカや鮭、アジやサバにはアニサキスという寄生虫が付着しています。
アニサキスとはどんな寄生虫?
(写真出典元:wikipedia アニサキス)
このアニサキス、先端に鋭い歯が生えていて、
人間の胃袋に入ると胃壁を喰い破って外に出ようとします。
その痛さは想像を絶するもので、大の大人が悲鳴をあげ泣き叫ぶ程です。
もちろん、孵化しないで体外に排出される事もありますが、
生のイカやアジ、サバを食べる時には、覚悟が必要です。
豚や牛肉、馬肉にもいる寄生虫
(写真出典元:wikipedia 無鉤条虫)
魚ばかりではなく、畜肉にも寄生虫は存在します。
豚肉には、旋条虫(せんじょうちゅう)、馬肉にはサルコシスティス・フェアリー、
牛肉には、無鉤条虫(むこう・じょうちゅう)という寄生虫が
付着している事が多いです。
症状は様々で少数なら自覚症状がないケースもありますが、
大量感染すると、吐き気やめまい、体重減少などが起き、
寄生虫が腸管を閉塞すると手術しないと生命の危機になります。
古代中国では、肉や魚を生で食べていた・・

photo credit: Wuhan / 武汉 | several pieces of several puzzles / 好久没吃过鱼头 via photopin (license)
日本では、生の魚を細切りにして薬味で和えたものを
鱠(なます)と言いますが、この鱠は古代中国にも存在していました。
儒教を体系化した事で有名な孔子は、生肉を細切りにして、
酢や醤油、味噌、生姜、韮、大蒜などの薬味で和えた膾(なます)が
大好物だったようです。
また、内陸部では、河や沼から揚がる淡水魚を捌いて鱠にして食べていたようです。
現在でも、福建省の清流県や寧化県に住む客家(はっか)は草魚という
体長2mにもなる巨大魚を鱠や刺し身で食べ、広東省の仏山市でも、
淡水魚の草魚(そうぎょ)を鱠で喰う伝統があり、中国当局が寄生虫が
危険だから生食を止めるように通達しても、「古くからの伝統だから」と
中々止めないようです。
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陳登が赴任した広陵は、長江に面していた・・
陳登が、寄生虫に悩まされたのは、広陵太守をしていた頃のようです。
広陵とは揚州にあり、長江に面している土地です。
先に書いた、広東省、仏山市とも、そこまで離れていませんので、
ここでも、草魚を生で食べる習慣があったのでしょう。
陳登は勧められてか、自ら食べたか分かりませんが、
魚の生食をしてしまい、そこで寄生虫に感染してしまいました。
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