辛毗は嘗ては袁紹の元におり、袁紹の死後は息子の袁譚に仕えていました。その後は紆余曲折あり、曹操に仕えることになります。
そして皇帝となった曹丕を支えて……というか諫めることに定評がある人です。しかし辛毗は曹操、曹丕だけでなく、曹叡の時代にも(周囲を諫めることで)活躍しました。その活躍の一端を、ご紹介したいと思います。
とにかく曹丕を諫めた辛毗
さて別記事で詳しく書きましたが、辛毗と言えばあの曹丕、それも皇帝となった後の曹丕相手でも遠慮なく諫めることをした人です。飢饉の際に大量移民をさせようとした曹丕を諫める(痛み分け)、雉狩りを楽しむ曹丕を諫める(成功)、呉に出兵した曹丕を諫める(結局途中で引き返した)……。
曹丕に「どうしてお前はそうも厳しいことを言う」と言われていますが、それでも曹丕は辛ピを遠ざけるようなことはなかったようです。
曹丕崩御
そんな曹丕も崩御しました。次の皇帝は曹丕の子、美貌で有名な曹叡です。当時、朝廷では劉放、孫資の二人の大臣が勢い盛ん。新しく皇帝となった曹叡からも気に入られていたと言います。
となれば周囲はこの二人にできるだけ気に入られようとしました。人々はまるで列をなすかのように二人と親しく付き合おうとしましたが、辛ピはそういった人々に同調するようなことはありませんでした。
息子(※辛憲英の弟)
これを心配したのが息子の辛評です。「父上、あの二人からもし睨まれたら大変ではありませんか?」息子の心配ももっともですが、辛ピは笑って息子を諭しました。「曹叡様はまだ聡明まではいかずとも暗愚ではない、あの二人に睨まれても危険なことなど何一つもないよ」
余談ですが辛ショウくん、お姉ちゃんとの逸話でもそうですが、ちょっと頼りないけどきちんと周囲の人に話を聞いて相談できる子ですね。
やっぱり諫める辛毗
さてこの後、辛ピを中央政治に関わらせようぜ!と尚書僕射のお話が上がります。ただこの時に辛ショウの不安が的中したのか、劉放、孫資の反対があってそれは取りやめになりました。因みにこの時に二人は「辛ピ殿は誠実で信頼できるけど、強情で妥協するということを知らない」と言っています。割と正当な評価だ
その後、別役職に就けられた辛ピは曹叡の宮殿造営を何度も諫め、それは聞き入れられなかったものの北芒山の後事の時はこれを聞き入れられることに成功しています。兎にも角にも粘り強く諫める人です。
曹叡を諫める(※なかったかもしれない)
後、諸葛亮の北伐が始まります。この時に司馬懿の失策により歴戦の武将である張コウが戦死しました。曹叡は張コウが討たれたことを哀しみ、陳羣もこれに同意しています。
しかし辛ピはこれに反論。「今国に求められているのは皇帝陛下と一人の将軍、どちらと言うのですか!」と発破をかけ……たという話ですが、これは「なんか言い方が辛ピっぽくない」と信ぴょう性が疑われています。
何気にここに張遼が引き合いに出されたりしてます。そりゃ張遼作戦ミスで死なせたら司馬懿の首も逆回転よ
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周囲も諫める辛ピ
そうこうしている間に始まったのが五丈原の戦いです。この時、魏は持久戦を選び、迂闊に諸葛亮と戦わないように申し付けられました。しかし持久戦は不満が強く出ます。
そこで曹叡は辛ピを司馬懿の元に派遣しました。派遣されてきた辛ピは血気に逸る諸将を静粛にさせ、皆、辛ピには従ったと言います。兎にも角にも周囲を諫めることに長けている人物ですね、辛ピは。
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三国志演義での辛ピ
因みにこの五丈原の戦い、三国志演義でもきちんと描かれています。諸葛亮と持久戦を行う司馬懿に、反対する諸将。敵の挑発に不満が爆発しそうな魏軍の元に到着したのが、既に80も超えた辛ピです。辛ピは司馬懿の意を組み、諸将を落ち着かせます。
不審に思った諸葛亮が魏軍を探らせると、黄金の鉞を持った厳めしい老人が軍門に立ちはだかって魏軍は動かないという報告が。
「ああ、ああ、その老人は辛佐治であろう」諸葛亮は辛ピが出てきたことで、自分の挑発が成功することはないと悟ったのでした。
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三国志ライター センのひとりごと
辛ピのお話でした。三国志演義とは違い、正史では司馬懿が血気に逸って張コウを討ち取られ足りとしている所を見ると、辛ピが派遣されたのはそんな司馬懿を落ち着かせるための可能性もありますね。
ともあれ、曹丕だけでなく、曹叡、そして魏の諸将と、辛ピが諫めて宥めた人物は多数。全く持って国には欠かせない人物ではないか、と思いました。
どぼーん。
参考文献:魏書辛ピ伝
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