魏呉蜀の三国の英雄たちが激しく凌ぎを削りあった三国志。
三国の君主である、魏の曹操、呉の孫権、蜀の劉備、それぞれが相性ピッタリな人材を部下として従えていた点も、三国志を面白くしている所以でしょう。ですが敢えて、史実とは違う主従の組み合わせを考えたくなるのも、三国志ファンの楽しみのひとつ。
とりわけ、そのような「史実と少し違う主従の組み合わせ」をイフ展開として考えたくなるのは、劉備軍のファンの方ではないでしょうか?
なるほど劉備のところには、諸葛亮、関羽、張飛など、強力な人材が揃っていました。
ですが彼の勢力圏が大きくなるにつれ、有能人材の「数」不足に悩んでいた様子があるのです。「あともう一人でもよい、強力な武将が劉備の陣営にいてくれれば!歴史展開はずいぶん蜀に有利になったのではなかろうか?」と劉備軍ファンの方は思うことが多いのでは?
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「曹操軍のオオモノの引き抜き」という奇跡が実現したら?
そこで今回は、以下のようなイフ展開を考えてみましょう!
悩める晩年の劉備のところに仙人が現れ、こう言ってきた、というシナリオです。「劉備殿、そんなに人材にお困りなら、わしが仙術で、曹操軍のオオモノの一人の運命を、あなたの陣営に参加する運命に書き換えて差し上げよう。ただし、誰が来るかは選べませぬ。あくまでサイコロ運のように、曹操軍のオオモノの中の、誰か一人がランダムでやってくるだけの仙術ですぞ」
「それでもよいではないか!蜀の経営にこんなに困っておるのだ!曹操のところの有能な武将なら、どんな人物でも、ぜひ迎えたいものだ!」と、劉備は答えます。
「よろしい!では仙術実行じゃ!かーーっ」
その後、ウキウキと待っていた劉備のところに、一人の武将がやってきます。夏侯惇です。
やってきたのはまさかのあの男!
「よりによってお前か!」
因縁の相手の訪問に劉備もさぞかし驚くことでしょう。
「いや、実は私自身も何が起きたかさっぱりわからんのだ。ただ、急に身の回りで色々なことが起きて、気がついたら、いつのまにか流浪の身に落ちていて、気がついたらよりによってこんなところに立っていたのだ」夏侯惇もまた、隻眼の顔に戸惑いの色を浮かべていることでしょう。
しかし、ここはさすがの劉備!気を取り直して、「うーん、だがそういう可哀想なことなら、わしのところで働くか?」と声をかけるでしょう。こうして突然、劉備陣営に加わった夏侯惇!あなたなら、どのように使うべきと思いますか?
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とつぜん始まった夏侯惇の違和感バリバリ生活
そもそも夏侯惇といえば、曹操軍の大将軍として軍事指揮の経験が豊富な武将。となると、さっそく前線に向かってもらい、劉備軍の重鎮の誰かと組んでもらいましょうか?
ところが、劉備陣営の諸将との連携をさせようとすると、意外なほどに、よいポジションが思いつきません。
張飛とは相性が最悪そうなことは、すぐ見当がつきます。かといって、関羽とも、趙雲とも、黄忠とも、馬超とも、仲良くできそうなイメージがありません。誰と組んでも、今までの経緯もあり、気まずい空気が流れ、かつ無口な夏侯惇はコミュニケーションも下手。微妙な空気が軍議のたびに立ち込めるでしょう。
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夏侯惇の使いどころのヒントは『演義』よりも『正史』にあり!
しかし夏侯惇が、かように「劉備軍の誰と一緒になっても仲が悪そう」に思えるのは、もしかすると後世に物語として編纂された『三国志演義』のイメージが強すぎるからかもしれません。実は歴史書である『正史三国志』のほうに目を転じると、夏侯惇の印象が少し変わってくるのです。
『正史』の記述によると夏侯惇は、「工事や農作業があれば、現場に出向き、率先して作業をやってみせる働き者だった」とか、「驕らず、また贅沢もしないため、下からの信頼は大きかった」とか、そういった「堅実な管理職」の印象に変わるのです。そこで、意外や意外!
劉備陣営にきた夏侯惇、いっそ文官に任命したらどうでしょう?蜀の国はなにせ劉備が劉璋から奪取した土地。開墾や治水、道路工事など、やるべき実務はたくさんあったはずです。
「なに?俺が国づくりを?」
「そうだ。お前には民の生活向上と、蜀の生産力向上を目標に持ってもらいたい」
そう言われた夏侯惇、最初は驚くかもしれませんが、もともと曹操のところでも、工事現場や農地開拓の現場が好きだった人物「ふむ、それも面白そうな仕事だ」と納得し、まさかまさかの名文官にオオバケするかもしれません!
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夏侯惇に宮中で留守番をさせると起こること
夏侯惇をムリに前線に使わず、成都に置いたまま、文官の仕事をやらせること。これには意外な効果も期待できます。職場である蜀の宮中を毎日ウロウロしていれば、隻眼の猛将出身としてはどうしても、劉禅の後継者としての資質が気になってくる筈!
「劉禅様!総大将たるもの、そのような姿勢ではいけませぬぞ」などと、劉禅の帝王教育にだんだん口を出すようになってくれればしめたもの。劉禅が常日頃から夏侯惇の影響を受けながら成長すれば、劉禅自身もオオバケするかもしれません。夏侯惇が劉禅に影響を与えてくれれば、史実と比較し、蜀の未来にとてもよい影響になることでしょう。
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まとめ:劉備の没後に後腐れもナシ!
「でも、夏侯惇がそんなふうに成都の宮内で大きな顔をしていると、劉備の没後に不穏な種になるのでは?」ですって?大丈夫なのです!
実は夏侯惇は、長生きはせず、劉備よりも少し前に亡くなるくらいの寿命なのです!文官として蜀の基盤国力を固めた上に、劉禅の根性をビシビシ鍛えてくれたところで、なんと都合のよいことに劉備よりも少し前に寿命が尽きる!劉備没後に何か不穏な事件を起こす心配もありません!
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三国志ライターYASHIROの独り言
こうなると蜀の夏侯惇、「文官にする」プランは、かなり良い使い道ではないでしょうか?むしろ、曹操のところでは、軍事ではやや「かませ」的な扱いだった夏侯惇。彼本人にとっても、人生の後半は蜀の文官に大転職するキャリアコース、意外に幸せではないでしょうか?
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