今日は漢詩の時間です。
『七歩詩』 by曹植
煮豆持作羹
漉豉以爲汁
萁向釜下然
豆在釜中泣
本是同根生
相煎何太急
これは、曹操(そうそう)の死により、
同母弟の曹植(そうしょく)が自分の即位に不満を持つと疑って
出した課題の詩です。
「七歩歩く間に兄弟の歌をつくれ。
できなきゃ叛意ありとみて殺すからな」
そう脅されて、曹植は上に上げた詩をつくりました。
「まめのスープが 飲みたいよ
まめがらつぶして だしにしよ
まめがらボウボウ 燃えていて
かまの中では まめシクシク
おんなじ根から 生えたのに
なんで一緒に 殺し合う?」
意訳してみればこんな感じです。
さすがの曹丕も、これには「ウッ」となり
曹植を殺すことをやめて、降格処分に留めました。
これだけを聞くと、
「曹丕、なんてやつ!」
と思ってしまいます。
ですが、実際のところ、曹植は単なる被害者なのでしょうか?
幼いころから比べられて育つ
曹丕も曹植も、曹操の正妻、卞夫人の子供です。
年齢的には5歳違いで、二人の間にはもう一人兄弟がいます。
曹操は、たぐいまれな戦略家であると同時に、文学者でもありました。
曹丕も曹植も、その父の血を色濃く受け継ぎ、
文才に恵まれます。
そのためでしょうか。曹操は二人の文才に注目し、
弟曹植の方が優れているとして、肩入れをします。
しかし実際のところ、
曹植は文才には優れていましたが、私生活ではがさつなところがあり、
自由気ままに暮らしていました。
逆に曹丕は、曹操の後継者として早くから教育を受けていたために
儒学に深く通じ、武芸にも優れていました。
自己をおさえ、優等生の生活をして、帝王学をひたすら極めていきます。
それなのに、父は、文才だけを見て、曹植を高く評価しています。
曹丕としては、心にどんどん澱がたまっていったのです。
関連記事:儒教(儒家)ってどんな思想?|知るともっとキングダムも理解できる?
関連記事:諸子百家(しょしひゃっか)ってなに?|知るともっと三国志が理解できる?
なかなか後継者を決めない曹操
曹操は魏王に即位しましたが、
このときになっても、後継者を誰にしようか決められませんでした。
それではもう、争ってくれと言わんばかりの事態です。
曹丕は自分こそが跡継ぎに相応しいと思いつつも、
なぜ父は自分を指名してくれないのかと不安でたまりません。
曹植は、父に愛されているという自覚がありますから、
もしかしたら、自分が後継者かもしれないと期待してしまいます。
こうなると当事者二人だけの問題では済みません。
宮廷が、曹丕派と曹植派にわかれ、
側近たちから互いの悪口を、あることないこと吹き込まれます。
どんどん溝は深まるばかりです。
関連記事:権力に執着した曹操が魏王になるまでに荀彧と荀攸との間に亀裂が生じる
関連記事:荀彧と曹植はオシャレ男子だった?三国時代の男子は化粧をしていた
関連記事:貴族はみんな兄弟げんかをする!袁紹VS袁術、曹丕VS曹植,孫和VS孫覇
調子に乗る曹植
曹植は、自由奔放すぎました。
父に愛されているという自信と、実の兄である曹丕がそこまで
ひどいことはしないだろうという甘えがあったのかもしれません。
ある日、外出のときに、
皇帝専用の道を通り、勝手に司馬門(しばもん)を開かせました。
この門は、曹操が諸侯の監視のために、いつも閉ざしていた門でした。
曹植のこの軽はずみな行動には、
自分が天子にでもなったかのような傲慢さがかいま見えます。
おそらく普段のふるまいのはしばしにも
こういった目につく行動があったのでしょう。
曹丕、曹植兄弟の争いは、
どちらが完全に悪いとは言い切れないものだったのです。
関連記事:三国志の英雄たちの詩を調べたら司馬懿ヒドすぎワロタwww
こちらの記事もよく読まれています
よく読まれてる記事:曹操の詩の世界を体験してみよう
よく読まれてる記事:三曹七子にも並ぶ女流詩人、蔡文姫の数奇な人生
よく読まれてる記事:曹丕の残忍さがよく分かる曹丕の妻、甄氏の悲劇
この記事を書いた人:東方明珠
■自己紹介:
通称「はじさん」のはじっこライター東方明珠です。
普段は恋愛系のノベルやシナリオを書いています。