兗州の刺史で、漢王室にゆかりのあるスター劉岱が、
青州を発端とする黄巾の残党に攻め込まれて討ち死にします。
兗州東郡の太守であった曹操は、
鮑信らの勧めに従って劉岱亡き兗州のトップに出世することになります。
官位は黄巾討伐をかねて軍事力を有する兗州牧。
曹操は鮑信の協力を得ながら百万(非戦闘員を含む)を超える青州の黄巾の残党を打ち破り、
その勢力を吸収することになります。
「ピンチは最大のチャンス!」まさにこのときの曹操の成長ぶりです。
納得できない袁術のとった方法とは
もともと兗州は袁紹派の劉岱が指揮っていました。
そこにまた袁紹の家臣のように従う曹操が代役となりましたので、
当時、荊州北部に勢力を広げていた後将軍の袁術は納得できません。
中央政府との連携の末、金尚というものを兗州の刺史に据えて、兗州一帯の奪取を謀ります。
袁術直々に本拠地の南陽を出陣したということですから並々ならぬ覚悟であり、
十中八九勝てると踏んでいたのでしょう。
戦の名目
当時は官軍と逆賊董卓(正規軍)、官軍と賊徒の戦いが繰り広げていました。
群雄割拠とはいえ、官軍と官軍の勢力戦いは漢王室をないがしろにする謀反です。
実際になぜ官徒同士でここまで戦いが広がったのか。
その経緯として朝廷から何枚も出される全く同じ官位や役職がありました。
袁紹側からの訴えで豫州刺史が決まったかと思うと、
同時に袁術側から承認を求められて豫州刺史が決まる。
同時にふたりの刺史が存在することになります。
どちらが正しい刺史なのかを周辺の諸侯を巻き込み戦いが始まるのです。
ですから名目上は私領の拡大ではありません。正統性の証明です。
私は朝廷を握る董卓の関東諸連合への離間の計だったのではないかと考えています。
とりあえず袁術は名前だけの金尚を盾に、傀儡の政治運営の手を兗州に広げようと画策したのです。
徐州牧の陶謙とも結託しています。
陶謙は裏から手を回し青州の黄巾の残党を兗州に攻めこませて弱体化させるねらいでした。
準備は万端です。
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袁術の誤算
ここで袁術はその誤算によって戦に敗れます。
それは曹操が逆境に打ち勝ち、黄巾の残党を吸収し、軍事力を大きく高めるということをまったく想像していなかった点です。
滅亡寸前まで弱っていると考えていた袁術は、劉詳を先鋒として軍をふたつに分けて兗州の陳留郡に攻め込みます。
対して曹操は陳留郡の匡亭で劉詳を破り、また封丘に布陣する袁術の本陣に対峙します。
袁術は曹操の成長と「青州兵」の強さを知り、決戦か退却かを悩みます。
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退路を断つもの
そのとき、袁紹派の荊州牧、劉表が袁術の退路を断っていたのです。
そのため袁術はまともに兵糧の補給を得ることもできませんでした。
つまり完全に兵站を切られたのです。
本拠地の南陽に戻ることもできません。
そこで自らが推薦し、州刺史に取り立てていた陳瑀を頼ることになるのです。
逃亡の先は……
そこが南の揚州でした。
しかし意外にも陳瑀は袁術の南下、受け入れを拒絶します。
実は嫌いだったのでしょう。
袁術は策略をもってへりくだった姿勢をみせて油断させ、寿春を奪ってしまいます。
陳瑀は徐州へ逃亡(従弟の陳珪がいます)、以後、袁術や孫策に敵対する勢力となります。
袁術は揚州刺史を追い出し、州府のある寿春を勝手に自らの本拠地にしてしまうのです。
さすがは自由人、袁術!
もしも兗州を袁術が押さえていたら
袁術は荊州北部、兗州から豫州までを抑え、同盟者の徐州の陶謙、
幽州の公孫瓚と併せると最大勢力になっていたことは間違いありません。
曹操は活躍の場を失い、袁術の配下になっていた可能性もありますし、
袁紹も袁術の家督相続を認め、関東は河北から江南にいたるまで統一されていたかもしれません。
三国志ライター ろひもと理穂の独り言
やはりなんといっても歴史を変えたのは曹操が黄巾百万を降した奇跡でしょう。
苦心の末の勝利で曹操は大きな勢力となり、運命を切り開いていきます。
戦わずとも相手を威圧できていた袁術は、
その境遇に胡坐をかいていたために関東統一のチャンスを失ってしまうことになるのです。
曹操だからこそなし得た逆転劇だったのでしょう。
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