字(あざな)について、もう少し詳しく、〇三五三です。
三国志に初めて触れたアナタ、不思議に思いませんでしたか?
劉備(りゅうび)とか関羽(かんう)とか張飛(ちょうひ)とか、三国志の英雄たちのことを、現代の人たちは普通「姓+名前」で呼ぶのに、孔明だけ、諸葛孔明と「姓+字」で呼ぶ人が多いことが。
諸葛亮(しょかつりょう)と呼ぶ人もいることにはいますが、基本的に「孔明(こうめい)」と呼ばれています。
なぜでしょうか。二文字で呼びやすいからでしょうか。確かに司馬懿のことも「仲達」と呼ぶ人は多いですが、それは「死せる孔明、生ける仲達を走らす」ということわざが有名だからのような気がします。
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孔明は偉大な人だから、字で呼ぼう
『三国志演義』の主人公は、劉備といって間違いありませんが、劉備は物語の途中で亡くなってしまいます。そして『三国志演義』は、主人公の死後もまだまだ話は続いていきます。
劉備死後の後半は、劉備の遺志を継いだ孔明が、魏軍に戦いを挑んでいく物語となっています。つまり、孔明は後半の主人公ということになります。この孔明という人。たいへん頭脳明晰で、かつては「伏龍」の異名を持ち、おまけに容姿端麗、その上に忠義心が厚く、蜀のために尽力した偉人です。
豪傑たちに慕われはしたものの、本人自体はそれほどすごいことがなく、人柄のよさだけはバツグンという、前半の主人公、劉備に比べて、孔明は非の打ち所のない完璧なタイプです。
『三国志演義』生みの国である中国でも、孔明は絶大な人気があるそうです。(逆に劉備はあまり人気がないとか……)
そこで、思い出してみてください。字とは、成人男性が「こういうふうに呼んでください」とつけた名前。諱(本名)は、「ごくごく近しい目上の人のみが呼ぶことを許される」名前。
孔明様のことを、「亮」だなんて恐れ多くて呼べない!
そんなふうに考えられ、諸葛孔明と呼ばれるようになったわけです。
字には意外と性格が表れている?
繰り返しますが、字というのは、成人男性が、あとからつけた名前です。
「こういうふうに呼んでもらいたいなあ」という願望がギッシリ詰まっています。
そこで、試しに、有名な武将たちの字を挙げてみようと思います。漢字を見てみると、そのキャラクターの性格が表れているような気がしてくるので不思議です。
流行ものが好き?
劉備「玄徳」
張飛「翼徳」
曹操「孟徳」
程昱(ていいく)「仲徳」
司馬徽(しばき)「徳操」
闞沢(かんたく)「徳潤」
みんな「徳」の字をつけすぎですよ!
流行の名前というのは、現代に限らず、昔からあったようです。
「伯仲叔季」は兄弟の順番
孫策「伯符」
孫権「仲謀」
孫翊(そんよく)「叔弼」
「俺のことはアニキと呼べ」
「じゃ、俺、弟な」
という孫家兄弟の会話が聞こえてきそうな名前です。
「伯」は一番の意味、「仲」は二番の意味、「叔」は三番の意味です。
ちなみに、「季」は最後という意味です。前漢の初代皇帝、劉邦は末っ子だったので字が「季」でした。
司馬懿「仲達」も次男です。董卓「仲頴」も次男ですね。みなさんわかりやすいです。
強そうな人たち
呂布「奉先」
趙雲「子龍」
甘寧「興覇」
馬超「孟起」
控えめそうな人たち
周瑜「公瑾」
魯粛「子敬」
諸葛誕「公休」
周泰「幼平」
字から人となりを想像してみても楽しいかもしれません。
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