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三国時代に「魏・呉・蜀」による三国連合の大国成立は可能だったのか?

2024年5月4日


 

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世界史02 プーチン風大統領

 

 

いきなりですが、このところ殺伐とした国際ニュースが多いですね。「そんな時代に三国志ファンができることは何かないだろうか?」・・・といっても、そんなたいそうなことが簡単に思いつくわけもありませんが、そのかわりに、ふと、思いついたことがあります。

 

関羽と一騎打ちをする夏侯惇

 

 

三国時代だって戦争や陰謀だらけでしたが、古代中国の物語ということもあり、現代の複雑な世界よりは、英雄個々人の人格とか、英雄個々人の決断とか、そういうものに期待をかけることもできます。

 

 

愛妻家だった郭淮

 

 

そこで、今回は以下のようなifシナリオを考えてみたいと思います。三国時代が、英雄たち同士の「これ以上戦争を続けていても民に迷惑なだけだ!話し合いで解決しよう!」という大胆な決断で、平和的に終焉するシナリオはあり得たのでしょうか?

 

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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平和的な解決のカギを握るのは魏の曹家!

陸抗 vs 羅憲

 

「三国時代の平和的な終焉?そんなのは無理だ!」と思った方!

 

呉軍を撤退させた羅憲

 

はい、その通りでございます。それが無理だったから、あれだけ戦乱が続いたわけですからね。

 

蜀滅亡後も旧蜀の永安城を守る羅憲

 

ですが無理を承知で、「さまざまな機会が重なったら、魏呉蜀が互いに妥協し合い、平和的に三国が合流することがあり得たのではないか」と、今回はがんばって考えてみました。

 

 

魏の皇帝になる曹丕

 

 

そう考えていくと、どう考えても、カギを握るのは、三国で最大の強国だった魏の動向です。特に魏を指導していた曹家の判断です。最強である魏が、他の二ヵ国に「戦乱をやめないか」と持ち掛けた時のみ、平和的終焉の可能性があります。弱い立場のほうの呉や蜀が何を言っても、最強国が戦乱を望めば平和はあり得ないからです。

 

献帝(はてな)

 

では、魏のほうから平和を求める可能性はあったのか?たった一瞬だけ、その可能性が生まれるタイミングがあったと思います。曹操(そうそう)が存命中は、とうてい平和的解決は無理。曹丕(そうひ)献帝(けんてい)を追い出して皇帝になった後も、平和的解決は無理。

 

漢李カク・郭祭り78 献帝

 

つまり、たった一度のタイミングとは、曹操が亡くなった後、曹丕が献帝を追い出す前です。この段階で後漢王朝の温存に積極的な穏健勢力が魏の政権を奪取したら、その後の展開が大きく変わるのです。

 

後継者争いをしている曹丕と曹植

 

もっと具体的に言えば、曹操の後継者争いで、野心家の曹丕ではなく、穏健派の曹植(そうしょく)が勝利し、

 

曹植

 

曹植の周りの文人気質な人材が政権の要職を占めた場合です。

 

曹植

 

ここで、曹植の打ち出した方針が、「後漢を滅ぼさないで、曹家は魏王の立場に留まる。その約束をもって、呉や蜀とも和平を結ぶ」という大胆な路線変更だったとしたら?

 

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後漢継続を決断したことで成立する夢の三国連合王国!

多様化が進む蜀の国(文官)

 

最強国である魏が、この方針転換をしたら、呉と蜀もかなり考える筈です。ともあれ呉と蜀がまず気にするのは、「曹植がたまたまそういう方針だったとしても、次の曹家の後継者が、また天下奪取の方針を取ってしまえば、元の木阿弥ではないのか?」ということでしょう。そんな呉と蜀の不信感をぬぐい去るために、曹植政権はさらに歩み寄りを見せます。

 

漢中王になる劉備

 

孫権(そんけん)を呉王として、劉備(りゅうび)を蜀王として、正式にその地位を認め、かつ、呉と蜀からも政治家を参加させた、三国連合の人材が支える「三国連合委員会」を長安に作ります。

 

孫権と劉備と曹丕

 

新体制は、皇帝一人をトップに置き、曹家が魏、孫家が呉王、劉家が蜀王となって各地域を統治し、その利害関係の調停は、三国それぞれから派遣した行政官によって構成された皇帝直下の委員会が決める。いわば、連合王国体制です!

 

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もうひとつの大胆な仕掛けは劉備を献帝の後見人に据えること!

曹丕と仲良く文通する呉質

 

とはいえ、これを提案してもまだ呉と蜀は不安を持つでしょう。たとえ三国の合議制による委員会を作っても、いざとなれば、国力で最強の魏が力にものをいわせて約束を反故にするのではないか、と。呉と蜀を納得させ、本当に戦乱の時代の平和的終焉を宣言するには、もう一歩、魏が大胆な歩み寄りをする必要がありそうです。

 

馬謖を信用していない劉備

 

そこで目をつけるのは、孫権よりも劉備を説得することでしょう。劉備が戦っていた目的は、漢王朝の復興でした。

 

三国志の主人公の劉備

 

その目的を叶えてやるために、曹植政権が提案するのは、献帝の補佐役として劉備を皇室のナンバーツーとし、かつ、「もし未来において献帝の血筋が途絶えた場合には劉備の子孫が皇帝を継ぐ」という約束まで取り交わすのはどうでしょうか?

 

魔のトリオ攻撃が劉備を追いつめる!05 蔡夫人、張允、蔡瑁、劉備

 

こうすれば、魏が事実上の強国として引き続き三国の中では主役になるとはいえ、劉備とその家族が、皇帝の一族にがっつりと入り込み、皇室を握ることになります。この座を保証すれば、劉備としては戦争を続ける必要はなくなります。

 

諸葛亮孔明の天下三分の計に感化される劉備

 

むしろ劉備自身が諸葛亮(しょかつりょう)を引き連れて、進んで長安に入り、皇室と一緒に暮らし、曹家が約束を裏切らないよう目を光らせる体制をとるでしょう。

 

司馬昭の質問に回答する劉禅

 

戦争の危険がないならば、蜀王の座は、劉禅(りゅうぜん)に任せておいても安泰でしょう。もう一人の英雄、孫権としても、このような体制で平和がやってきて、かつ、自分の一族の呉王としての座を保証されれば、文句は言えないのではないでしょうか。

 

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まとめ:唯一の懸念は司馬一族の動向!

曹植は軟弱ではなかった

 

曹操亡き後に曹植が魏を継承し、なんと献帝を排除せずに漢王室を安泰化させ、劉備に後見役を頼み、以降の中国の政治は三国連合委員会の議決で決めることとする。この連合王国なら、平和宣言を行い、戦乱の時代を終えられるかもしれません。

 

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三国志ライターYASHIROの独り言

三国志ライター YASHIRO

 

ただひとつ、このシナリオで気になることがあります。劉備と曹植が存命中はこの体制でよいとして、彼らが亡き後、あの司馬懿とその一族がおとなしくしているか、ということです。

 

司馬師と司馬懿

 

この三国連合の微妙な体制の欠陥をうまくついて、結局は司馬師(しばし)なり司馬昭(しばしょう)なり司馬炎(しばえん)なりが権力の奪取を図れば、いかに皇室と一体になっているとはいえ、劉禅では対抗できないかもしれません。

 

三国志を楽しく語るライターYASHIRO様

 

そのような懸念は残るものの、あくまで一時的な平和体制でもいい、「三国の英雄たちが歩み寄って平和な決着を迎える」三国志物語のイフ展開を考えてみました。この連合王国案、うまくいくか、そしてそもそも司馬一族を食い止め長期政権になれたかを含め、皆さま、ご感想はいかがでしょうか?

 

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YASHIRO

とにかく小説を読むのが好き。吉川英治の三国志と、司馬遼太郎の戦国・幕末明治ものと、シュテファン・ツヴァイクの作品を読み耽っているうちに、青春を終えておりました。史実とフィクションのバランスが取れた歴史小説が一番の好みです。 好きな歴史人物: タレーラン(ナポレオンの外務大臣) 何か一言: 中国史だけでなく、広く世界史一般が好きなので、大きな世界史の流れの中での三国時代の魅力をわかりやすく、伝えていきたいと思います

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