暖かい季節になると、冷たい食べ物がおいしくなりますよね。そこで本日は中華の冷菜「皮蛋豆腐」の超簡単な作り方をご紹介したいのですが、それだけだと「はじめての三国志」らしくないので、後半では三国志演義の中で「卵」の文字が登場するシーンをご紹介させて頂きます。(皮蛋の「蛋」は卵のことなので、ちなんでみました)
ピータンは中華食材コーナーで買える
写真左から二番目がピータンです。ピータンって、中華料理店でたまに出てきますが、いまいち馴染みがなくないですか?
大きめのスーパーに行くと中華食材コーナーに置いてありますが、見た目的に、ちっちゃい椰子の実みたいで謎な雰囲気なので、それを買って食べようと思ったことがない方も多いのではないでしょうか。ピータンの食べ方は簡単で、お店でピータンと銘打って売られているモサモサした謎のわらと粘土の混じったような物体を指でぐしぐしと削っていくと、中から灰色っぽい卵が出てきます(土が硬すぎる場合には、かたい物でたたくなどして土を割って中身を取り出します)。
その卵の殻をむくと、黒曜石のような色合いのゼリー状の、ゆで卵のような手触りのピータンが出てきまして、それをそのままガブリと食べてしまって大丈夫です。殻さえむけば生食可能です。下の写真は半分にカットしたものを、片方は断面を上に、もう片方は断面を下にしたものです。
ピータンはアヒルの卵でできた保存食
私が今日買ってきた株式会社耀盛號のピータンの外袋にはこんな説明書きがあります。「ピータンはアヒルの卵を調味液に漬け込み、その後で泥や、もみがらで包んで長期保存を可能にした物です」なるほど、外に付着している謎のモサモサはその製造過程で付いたものなんですね。ピータンの発祥は諸説ありますが、灰の中に偶然混入していた古い卵を食べてみたらうまかった、ということらしいです。変色して不思議なにおいのする卵をよく食べましたよね。
中国の神話に出てくる神農氏は、有用な草と毒草とを見分けて人々に教えていたそうですが、最期は毒草を食べて亡くなったという話があります。食えるかどうか分からん、というものを食べてみた勇敢な先人達のおかげで、今の食文化があるわけですね。アリガタヤ。
超簡単♪皮蛋豆腐の作り方
材料:絹ごし豆腐、ピータン、塩、ごま油、絹ごし豆腐の上に、塩をさらさらっと振ってごま油をとろーりとかけ、小さく刻んだピータンをのせればできあがりです。ピータンにみじん切りしたザーサイやネギなどを混ぜてもおいしいです。量や切り方はお好みで。私は一丁の豆腐にピータン1個つかいます。切り方は、7mm角くらいのさいの目切りです。ピータンには独特のにおいがありますが、切ったあと数時間おくとやわらぐそうです(私はすぐ食べますが)。
ピータンが余ったら、スライスしたトマトといっしょに盛り付ければ簡単冷菜がもう一品できます。中華ドレッシングを添えてテーブルに置くだけであら豪華。また、刻んだピータンを白がゆに入れれば、なんちゃってピータン粥になります。トッピングについてはお料理サイトに素敵なレシピがたくさんありますが、私はピータン大好きすぎるので何も加えません。
三国志演義の中で「卵」の文字が登場するシーン
さて、三国志演義の中の「卵」が出てくる名シーン(?)の数々を振り返ってみましょう。
1.第八回で、王允が董卓のボディガードである呂布をハニートラップに嵌めてくれるよう貂蝉にお願いするシーン。董卓の暴政のせいで「君臣有累卵之急(君臣ともに卵を積み重ねたように危うい)」という状況を貂蝉に訴えながら、一肌脱いでくれるよう懇願。
2.第四十回で、孔融が曹操の怒りを買って捕縛された時の、孔融の二人の息子たちのせりふ。彼らは悠然と碁を打っており、身近の者達が「はやくお逃げ下さい」と注進したが、「覆巢之下、安有完卵乎(ひっくり返った巣の下に割れない卵があるわけがない)」と言って、そのまま捕まって斬られた。
3.第四十三回、諸葛亮が呉を曹操との戦いに駆り立てるために呉に乗り込んだ時の、呉の薛綜のせりふ。諸葛亮の主君の劉備が曹操と敵対するのは「正如以卵撃石(卵で石を砕くようなもの)」と言い、諸葛亮が劉備と曹操との戦いに呉を巻き込もうとするのを阻止しようとした。
4.第四十七回、呉の黄蓋が曹操に送った偽の降伏状の中の文章。周瑜が鼻持ちならなくてもう嫌んなっちゃったから曹操軍に降伏しますという文脈の中で、周瑜のことを「輒欲以卵敵石(卵で石と競おうとしている)」と小馬鹿にする。
5.第六十回、主君の劉璋が益州に劉備を迎え入れることに黄権が反対した時のせりふ。「不聴臣言、則主公有累卵之危矣(私の言うことを聞かなければ、我が君は卵を積み重ねるように危うい)」と主張。
6.第六十九回、諸葛原が占いの名人・管輅の能力を試すために、三つの箱の中に蜘蛛、蜂の巣、燕の卵を入れて中身を当てさせた。管輅は全問正解。
7.第九十三回、蜀と魏の会戦前に、蜀の諸葛亮と魏の王朗が舌戦をした時の王朗のせりふ。かつて「社稷有累卵之危(漢の社稷が卵を積み重ねたように危うかった)」時に、魏の初代・曹操が天下を平定したのだ、と、曹操のすごいところをアピールして舌戦で優位に立とうとしたが、諸葛亮に論破され憤死。(ひどい脚色だ……)
8.第百十回、魏で司馬師が専横を極めていることに憤った毌丘甸のせりふ。父親に「国家有累卵之危(国家は卵を積み重ねたように危うい)」と訴えながら、司馬氏に対する蜂起をそそのかした。
9.第百十九回、蜀のラストエンペラー劉禅が魏に降伏した後、蜀の再興をもくろんだ姜維が魏の鍾会と共謀して魏に対する反乱を起こそうとしたが、失敗して殺されたシーン。姜維の亡骸を開いてみると「其胆大如鶏卵(肝の大きさは鶏の卵ほどだった)」とある。
三国志ライター よかミカンの独り言
「卵」の登場するシーンを見ると、壊れやすいものとして比喩的に使われていることが多いようですね。私が今日買ってきたピータンの周りの泥は柔らかかったですが、これまでに買ったことのあるピータンはほとんどが煉瓦のようにカッチカチに固まった泥に包まれていました。あれなら積み重ねてもそうそう割れないんじゃないかと思います。もし皆様がピータンを料理される際、それが煉瓦のように固い泥に包まれていましたら、どうか頑張って泥をはがして下さい。健闘を祈ります!
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