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【はじめての孫子】第5回:戦わずして人の兵を屈するは、善の善なる者なり

この記事の所要時間: 516

曹操軍

 

さて、『はじめての孫子』第5回目、謀攻篇であります。

戦争は国の大事であり、勝っても負けても国に大きな損害を与えると主張する孫子ですが、

では、彼はどのような方法で戦争に勝つことを理想としたのでしょうか?

 

今回は、孫子を出典とする名言の中でも特に有名な、あの一言が登場します。

 

前回記事:【はじめての孫子】第4回:兵は勝つことを貴ぶ。久しきを貴ばず

関連記事:三国志を楽しむならキングダムや春秋戦国時代のことも知っておくべき!

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「謀攻篇」の要点

 

・味方のみならず、敵の一兵をも殺さないのが最善である

・敵の作戦を見ぬいて、それを事前に防ぐのが一番良い戦い方である

・君主は将軍を信頼し、無闇にその指揮に口を挟んではいけない。

・勝利するために最も大切なのは、敵と自分の双方を熟知することである。

 

敵の兵士をひとりも失うことなく勝つのが戦争の極意?

photo credit: Sunrise via photopin (license)

photo credit: Sunrise via photopin (license)

 

『孫子曰く

凡そ用兵の法は、国を全うするを上と為し、国を破るはこれに次ぐ』

 

最も理想的な戦争の勝ち方とは、敵の兵士を一兵たりとも損ねることなく勝つことだと、孫子は主張しています。

 

味方の兵士ではありませんよ。

敵国の兵士を、です。

 

たとえ、対峙しているのが一万人を超える軍団だろうと、たった5人の小隊であろうと、

これを一人たりとも殺すことなく、勝利するのが最善の策だと孫子は言っているのです。

 

いくら百回戦って百回勝利しえても、実際に戦って敵に損害を与えてしまうのは良い勝ち方とは言えない。

戦闘することなく相手を屈服させること。それこそが理想である。

 

……確かに一切の損害を出すことなく、戦争に勝てればそれ以上良いことはありません。

けど、そんな無茶なこと、本当に可能なのでしょうか?

 

最上の勝ち方の秘訣は、敵の計画を未然に打ち破ること

photo credit: Magic Forest via photopin (license)

photo credit: Magic Forest via photopin (license)

 

実際に戦うことなく戦争に勝つ最善の方法として、

孫子はまず、相手の計画を未然に打ち破ることを上げています。

 

この場合の計画とは、言うまでもなく敵国が自国を攻めようとしている計画のことです。

確かに、相手の計画を未然に防いでしまえば、結果的には自国が勝利したことになりますね。

 

続いて孫子は、敵国とその友好国との同盟関係を断ち切ることが次善の策だと述べています。

 

敵がいざ攻撃をしようとしても、その同盟国との関係が悪化してしまえば、うかうかと攻めてくるわけにはいきません。

敵国の同盟関係を分裂させるのは、結果的に自国の戦力を使わずに勝利することに繋がる、というわけです。

 

敵の計画を未然に防ぐことができず、敵国の同盟関係を分裂させることも出来ない。

そういう状況になってしまったらこれはもう、敵と直接戦うしかありません。

 

孫子は、できるだけ敵軍を野戦において撃破しなければいけないと説いています。

野戦というのは、城や砦ではない、普通の戦場で行われる戦闘のことですね。

 

そして、もっとも下策であり、やってはいけないこととして、孫子は城攻めを上げています。

 

なんで城を攻めてはいけないのか?

兀突骨

 

以前、『空城の計って何?門を開けて敵軍をお出迎え?』という記事でも触れましたが、

城にこもって戦う方法=籠城戦とは、守る方にとって圧倒的に有利な戦い方です。

 

古代中国における城とは、都市を意味します。

この時代の都市は、領主の宮殿を中心として市街地があり、その外周を高く強固な塀が覆っていました。

このような都市を城塞都市と呼び、中国の他ヨーロッパなどでも多くみられました。『進撃の巨人』を想像すると、イメージしやすいかもしれません。

 

関連記事:悲しみの巨人、兀突骨(ごつとつこつ)は実在してた?

 

都市ひとつが丸々一個の城になっているのですから、そこに備蓄できる物資の量もハンパではありません。

城を包囲して持久戦になれば数ヶ月、下手をすれば一年以上も戦いが続くことになります。

 

なにより、城の守りの要である城壁は強敵です。

高さ十数メートルを超える城壁ですから、おいそれと乗り越えることはもとより、打ち壊すことも一筋縄ではいきません。

 

三国志の時代には、城壁を破壊するための投石兵器である霹靂車(カタパルト)や、

城壁を乗り越えるハシゴを備えた雲梯車と呼ばれる兵器があったようですが、孫子の時代はこれよりもずっと昔の話です。

城を攻める有効な手段はなかったと言っても過言ではないでしょう。

 

孫子は城攻めを行うには、まず事前準備に三ヶ月、そして城攻めを行う陣地構築のための土木作業にさらに三ヶ月、

つまり城攻めの準備だけでも半年は必要と見積もっています。

 

準備が十分整う前に堪えきれずに攻撃を実行してしまったらどうなるでしょう?

 

将軍は兵士に対して城壁を登って攻撃するように命じ、兵士たちは致し方なく、わらわらとアリのように城壁を登るしかありません。

そうなったら守り手にとっては絶好のチャンス、敵を攻撃し放題です。

あっという間に兵士の三分の一が戦死し、守備側にはほとんど損害もないでしょう。

 

そうなったらマジ目もあてられんから止めとけ。

……と、孫子はだいたいそんなようなことを言っています。

 

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