曹操は人妻好きだと言われています。秦宜禄の元妻の杜氏を夫人にしていますし、何咸の未亡人である尹氏も妾にしていますし、張済の未亡人を妾にして張済の甥に相当する張繍に背かれてひどい目に遭ったこともあります。
物語系の逸話では袁紹と一緒によその家に忍び込んで花嫁泥棒をしたこともありますし、呉の孫策の未亡人の大喬と周瑜の妻の小喬を欲しがっていたという話もあります。ちょっと人妻を欲しがりすぎですね。どういう心理なんでしょうか。
人妻と付き合いたがる男性の心理
インターネットで調べたところ、人妻と付き合う男性の心理は大きく分けて次の4つのようです。
1.都合が良い(結婚を迫ってこない、分かれるのが簡単、養う必要がない)
2.人の物を奪っていることに優越感を覚えて興奮する
3.既婚女性の包容力にひかれる
4.満たされていない女性を自分が助けてあげたいというヒーロー願望
(↑既婚女性は旦那さんに放っとかれて満たされていないという先入観がある)
これ、合ってるんでしょうかね?
ネットで参照したのは女性が書いたらしい記事ばかりだったので、男性から見たら「クックック、本当はそればかりでもないのさ。大きな声では言えないけどね」ってことがあるんじゃないでしょうか。
今回の記事はkawauso編集長からテーマを頂いて書いているのですが、編集長も男性だからご自分では書けないんですよ、きっと。「こんなこと書いたらボクがこう思ってるみたいじゃないか!」ってなりますからね。
曹操は責任を持つ男
先ほど挙げた4つの心理のうち、「1.都合が良い」は曹操にはあてはまりません。曹操は秦宜禄の元妻の杜氏や何咸の未亡人の尹氏をちゃんと自分のところに迎え入れており、連れ子の面倒もみています。三国志明帝紀の注にひかれている『魏氏春秋』には、曹操が自慢げに「世の中にワシほど妻の連れ子をかわいがる男はいまい」と語った言葉が記されています。杜氏の連れ子の秦朗も尹氏の連れ子の何晏もちゃんと出世しています。曹操は責任を持つ男、都合のいい遊び相手として人妻を欲しがったのではありません。
関羽からの略奪愛
人妻と付き合いたがる4つの心理のうち、「2.人の物を奪っていることに優越感を覚えて興奮する」は、曹操にあてはまりそうです!秦宜禄の元妻の杜氏は曹操が呂布を滅ぼした時に捕虜になったのですが、当時曹操と同じ陣営で戦っていた関羽が杜氏をぜひ自分の妻にしたいと再三にわたって曹操にお願いしていました。関羽がそこまで言う女性はどんなものだろうかと好奇心から目通りした曹操は、一目で気に入り杜氏を自分のものにしてしまいました。
曹操はつねづね関羽の立派な人柄を評価していました。関羽は見事なひげを生やしており、同性から見ても惚れ惚れするほどの偉丈夫であったことと思います。“関羽ほどの男が欲しがった女を、俺は手に入れてやった!”曹操の略奪愛には、こんな心理があったのではないでしょうか。
世界の大半を敵に回しながら戦う男
人妻と付き合いたがる4つの心理のうち、「3.既婚女性の包容力にひかれる」も、曹操にあてはまりそうです。曹操は長いものには巻かれないツッパリ人生で世界を切り拓いていった人です。有力者でも法をおかせば処罰する、品行方正でなくても有能であれば評価する。旧来の価値観の中で安穏と過ごしていた人々が目くじらをたててバッシングするような革新的な政策を勇気とど根性で進めていった、敵だらけの戦う人生でした。
既婚女性の持つおおらかな雰囲気に癒やしをもとめたとしても不思議ではありません。(既婚女性がなぜおおらかかと言うと、結婚してみて「こんなはずじゃなかった!」という経験を乗り越えてきているからです)
ヒーローになりたかった曹操
人妻と付き合いたがる4つの心理のうち、「4.満たされていない女性を自分が助けてあげたいというヒーロー願望」、これは曹操にぴったり合致する気がします。妻の連れ子をかわいがっていることを自慢していた曹操。
困っているご婦人を俺が面倒みてあげているんだ、という状況に満足を覚えていたに違いありません。曹操には奥さんが大勢いて、亡くなる時には女性たちのその後の身の振り方をこまごまと心配してあげていましたが、面倒をみる相手が大勢であればあるほど、自分がしっかり面倒をみればみるほど、曹操の心は満たされたことでしょう。
三国志ライター よかミカンの独り言
略奪愛で優越感を覚える、敵が多いから癒やしを求める、女性を助けてあげたい。曹操の人妻ハントはいかにも戦う男らしい心理に基づいているようです。「英雄色を好む」という言葉がぴったり。大丈夫、人妻のめんどうを見なくてもあなたは充分ヒーローです、って言ってあげたいです。