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逆転勝利の劉表
初平2年(191年)に董卓は袁紹・曹操などの軍勢が押し寄せて来たので危機的状況に陥りました。焦った董卓は洛陽から長安に遷都します。劉表は董卓討伐に参加することはなく荊州統治に専念します。
ところがしばらくすると、荊州の南陽に袁術が入り込んできました。この時期、天下は袁術と袁紹の2人が争っていました。袁術は公孫瓚と孫堅を味方につけて劉表と敵対します。一方、劉表も袁紹と手を組んで袁術に対抗しました。こうして荊州をめぐって袁術との戦いが始まりました。
袁術は子飼いの武将である孫堅を、劉表は部下の黄祖を派遣します。当初は孫堅軍が有利に動きます。だが、兵力補充のために城から脱出した黄祖を孫堅が追撃したところ、待ち伏せていた伏兵の襲撃にあって孫堅が戦死。
劉表軍が逆転勝利をおさめました!孫堅の遺体は最初は渡そうか迷ったのですが、桓階という人物が劉表を説得。孫堅の遺体は無事に家族のもとに帰ってきました。
張繍と賈詡を支援
袁術は孫堅の戦死後、南陽の政治に失敗したので荊州から撤退。時は流れて建安元年(196年)に董卓軍の残党である張済が荊州に略奪にやってきました。
彼は興平2年(195年)に李傕・郭汜・董承たちと一緒に献帝をめぐる政治闘争を繰り広げていましたが、曹操の介入により敗北。その後は盗賊として各地を荒らしまわっていました。しかし所詮は盗賊。最後は討たれてしまいます。
張済が死んだことで喜んでいた部下に対して劉表は「困っていた張済に自分が何もしなかったから戦死させてしまった。弔辞は受けるが祝辞は受けない」と言いました。
それどころか南陽にいる張済の部下を支援してあげました。それが張済の族子の張繍と軍師の賈詡です。彼らにとって劉表は恩人だったのです。
張繍と賈詡は劉表と連携して建安2年(197年)から同3年(198年)にかけて曹操を苦しめることになりました。
評価が低い劉表(晃のポイント)
建安5年(200年)に曹操と袁紹は天下の覇権をめぐって戦いました。官渡の戦いです。この時、数年間に渡り同盟関係を結んでいた張繍は曹操に降伏。劉表も降伏するかと思ったら拒絶。袁紹に付くのかと思えば、はっきりとした態度を表に出さない。
最終的には中立を貫くことで決着をつけました。こういった態度から劉表は「優柔不断」というレッテルを貼られてしまい正史『三国志』や他の史料でも評価が低いのです。
かつて劉表から支援を受けた賈詡も「平和な世では手腕を発揮出来るのだが、疑い深くて決断力が無い」と劉表に対してはプラス・マイナスの評価です。これは当たり前のことです。賈詡は晩年、魏(220年~265年)で天寿を全うしているので敗者のことを良く言うはずありません。
ましてや正史『三国志』や裴松之が注として採用した『魏書』・『魏略』・『漢晋春秋』は曹操やライバルの劉備を良く書いています。滅ぼされたり、国造りの土台となった劉表の評価が低いの自然の道理なのです。もちろん史料の信ぴょう性はのぞきますけど・・・・・・
劉表の最期
建安13年(208年)に劉表は病にたおれてこの世を去りました。享年は65~67歳だったようです。劉表は死ぬ前に客人として待遇していた劉備に荊州を譲ろうとしたそうですが、これは王沈の『魏書』に記されている内容です。
『魏書』は低評価の書物として知られており、曹操が勝った相手を貶めて、曹操のライバルの劉備を誉めるのは当たり前でしょう。だから簡単に中身を鵜呑みにするわけにはいきません。
おそらく劉表は劉備に何も託さなかったでしょう。劉表の死から間もなく、荊州は曹操に降伏しました。だがその後、荊州をめぐって劉備・曹操・孫権の3つの勢力が争うようになるのです。
三国志ライター 晃の独り言
以上が劉表の生涯でした。『三国志演義』の劉表は優柔不断で猜疑心の強い人物として描かれていますが、正史の劉表は荊州着任当初は宗賊をあっという間に撃退してしまい、荊州を平和にしたので見事な政治手腕の人物と思います。ところが実際は20年に渡り、かなりの苦労をしながら統治に専念していたようです。今回は書ききれなかったので、いつか機会があれば執筆しようと思います。
※参考文献
・高島俊男『三国志 人物縦横断』(初出1994年 のち『三国志きらめく群像』ちくま文庫 2000年)
・満田剛「劉表政権についてー漢魏交替期の荊州と交州」(『創価大学人文論集』20 2008年)
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