三国志後伝とはどんな内容?江戸時代にやってきたアフター三国志小説

2020年11月23日


 

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孔明と劉備、関羽、張飛

 

今回は三国志後伝(さんごくしこうでん)についてお話したいと思います。三国志後伝はその文字から推測できるように、三国志の後……正しく言うならば三国志演義の後のお話です。

 

三国志(歴史)を誇張しまくる羅貫中 ver2

 

お話の完成度は三国志演義のレベルが高すぎるために比べることは難しいですが、三国志ファンから見れば色々と感慨深い内容となっています。この三国志後伝がどんなお話なのか、どのようなものなのか、今回はざっくりとご紹介しましょう。

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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三国志後伝(さんごくしこうでん)とは?

同年小録(書物・書類)

 

前述したように、三国志後伝は三国志演義の続きの世界を描いた小説です。作者は酉陽野史(ゆうようやし)(ゆうようやし)といい、三国志演義の世界を作り上げた羅貫中(らかんちゅう
)
とはまた別の人物です。

 

三国志演義_書類

 

その成立時期は中国における明の時代であり、三国志演義が生まれた時代と同じですね。内容からすると三国志演義が出来てから生まれたのが三国志後伝だと思われます。

 

 



後伝と演義と平話

三国志演義の作家 羅貫中

 

三国志後伝は三国志演義を書いたと言われる羅貫中が書いたものではありません。しかし、その続編と言った方が分かりやすい内容となっています。また三国志演義のように史実、民間伝承などを取り込んでいきながら、作者のオリジナリティもふんだんに溢れた内容となっているのが特徴でしょうか。

 

斉王になる司馬攸

 

また三国志平話(さんごくしへいわ)の内容も踏まえられており、こちらでは劉備(りゅうび)のひ孫が晋と戦うのですが、この影響をかなり受けている内容であり、三国志、三国志演義に出てきたキャラクターたちの孫が多く出てくるのも特徴です。

 

 

三国志後伝人気

周瑜、孔明、劉備、曹操 それぞれの列伝・正史三国志(本)

 

 

そんな三国志後伝ですが、三国志演義が大人気となった中で生まれたにもかかわらず、中国ではそこまで人気を集めることはできなかったようです。が、そんな三国志後伝は実は海を渡り、日本にやってきていました。

 

にぎわう市(楽市・楽座)

 

そして江戸時代の日本では翻訳され、「通俗続三国志(つうぞくぞくさんごくし)」「通俗続後三国志(つうぞくぞくごさんごくし)」として、そこそこの人気を得ていたようです。ここからも日本人の三国志好きが分かりますね。

 

 

三国志後伝の始まり(ざっくり)

匈奴の劉淵

 

さて三国志後伝の主人公は、劉備の孫である劉淵(りゅうえん
)
です。とはいえこれはあくまで話の上での設定であることを忘れてはいけません。また劉淵に限らず、数多くの武将たちの孫たちがたくさん出てきます。

 

こういう点は、三国志演義好きには溜まらないポイントですね。

 

降伏する劉禅

 

始まりをざっくりと説明すると、劉淵が蜀の滅亡時に成都(せいと)を脱出。

 

関興と張苞

 

匈奴(きょうど
)
の地にて再起を目指しているところに、同じく蜀、漢王朝の再興を目指している関羽(かんう)張飛(ちょうひ)趙雲(ちょううん)などの蜀の名臣たちの子供たちが集っていくというストーリーです。

 

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三国志後伝の終わり(かなりざっくり)

漢王朝として独立した劉淵

 

劉淵たちが戦うのはもちろん晋王朝(しんおうちょう)。こちら晋王朝でも三国志演義お馴染みのキャラクターたちの孫世代がたくさん出てきます。こちらには夏候惇(かこうとん)司馬懿(しばい)の孫だけでなく、陸遜(りくそん)凌統(りょうとう
)
らの孫も出るのが面白いところ。

 

行軍する兵士達b(モブ)

 

そして戦いに次ぐ戦いの中で、見事晋王朝打倒の夢を叶えます。とは言え、史実から大きく離れてハッピーエンドということはなく、劉淵が建てた北漢王朝(ほくかんおうちょう)は天下を統一することなく滅亡してしまうエンディングとなっていますね。

 

三国志後伝のポイント

三国志平話

 

三国志後伝は三国志演義、三国志平話の流れを汲んだ歴史小説ですが、少し触れたように大まかな流れは史実に沿って流れていきます。劉淵の設定や、晋や呉に仕える嘗ての武将たちの子孫らとの戦いなどは創作部分ですが、最後の終わりでも漢王朝はまた滅ぶところなどは、史実の流れに沿っていると言えるでしょう。

 

ただし石勒、張賓らなど史実の上で晋との戦いの中で活躍した人物たちは、だいたい蜀の名臣たちの子孫になっています。この辺りは人によってはやや評価が分かれるところで「蜀びいき」「設定に無理がある」という印象が残るのは否めないところです。

 

しかしそれを踏まえて読めば、三国志ファンには一度は読んでみて欲しい作品と言えるでしょう。ただ八王の乱など、三国志演義でいえばより後の話がベースになっているので、その辺りのお話を頭に入れてから読むことをお勧めします。

 

興味を持たれたならば

李斯

 

そんな三国志後伝ですが、原書は世界中で二冊しか確認されていないとやや不遇な扱いではあるものの、現代ではインターネットの普及などもあり、読むことは可能です。

 

また日本では「通俗続三国志(つうぞくぞくさんごくし)」、「通俗続後三国志(つうぞくぞくごさんごくし)」という名で日本語に翻訳され、現代語でもインターネットで読むことができます。ぜひ興味を持たれたなら、一度見てみて下さいね。

 

オススメ:続三国志演義─通俗續三國志─(外部リンク)

 

 

三国志ライター センのひとりごと

三国志ライター セン

 

前述したように、三国志後伝のお話の舞台は晋王朝であり、八王の乱(はちおうのらん
)
五胡十六国(ごこじゅうろっこく
)
についてなども踏まえた話が出てきます。この事もあるので、個人的に最大限に楽しむならばこの辺りに目を通してから読むのが良いでしょう。

 

しかしそれらも現代では少し調べればたくさんの情報が出てきて、共有することができます。便利な時代に感謝しつつ、三国志の世界をまた少し、広げてみませんか?

 

参考:三国志後伝 / 通俗続三国志 / 続三国志演義─通俗續三國志─(外部リンク)

 

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三国志平話

 

 

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セン

両親の持っていた横山光輝の「三国志」から三国志に興味を持ち、 そこから正史を読み漁ってその前後の年代も読むようになっていく。 中国歴史だけでなく日本史、世界史も好き。 神話も好きでインド神話とメソポタミア神話から古代シュメール人の生活にも興味が出てきた。 好きな歴史人物: 張遼、龐統、司馬徽、立花道雪、その他にもたくさん 何か一言: 歴史は食事、神話はおやつ、文字は飲み物

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