龐統(ほうとう)の助言を入れて、全ての船を鎖で繋いだ
(そうそう)曹操ですが、これに反対する意見もありました。
「軍船を全て繋いでしまえば、火を掛けられただけで
我が軍は全滅してしまいます」
という呉軍による火計を心配する意見です。
しかし、曹操は、
「心配には及ばぬ、我が軍は風上にあり、呉軍は風下、
火を放てば、炎上するのはやつらだ、、
そんな危険な事を侵してまで火攻めなどするものか、、」
と笑って構いませんでした。
確かに、曹操の言い分の通り、この時期の風は、
呉軍にとっては逆風であり、火攻めは自殺行為に等しかったのです。
前回記事:78話:龐統初登場、連環の計発動!
諸葛孔明の赤壁の戦い
ここまで作戦を詰めていながら、風が来ない事に、
周瑜(しゅうゆ)は苛立っていましたが、
ここで孔明(こうめい)が立ちあがります。
「周都督(ととく:水軍の大将)、頃合いですな、
私が風を起し曹操めをうち滅ぼしてみせましょう」
「貴殿が風を?今は冗談など許されない時ですぞ」
周瑜は孔明をにらみつけますが、
孔明は涼しい顔で笑い、周瑜に風を呼ぶ為の祭壇を
造るように依頼します。
(馬鹿な、、いかな孔明でも、ただの人間に風を起せるものか、、
面白い、出来なかったら、今度こそ命をもらうぞ)
周瑜は、孔明の指示通りに、祭壇を造ります。
孔明は、祭壇に上ると、儀式用の剣を奮い、護摩を焚いて、
何事かの呪文を唱えています。
その様子を呉の将兵も周瑜も魯粛(ろしゅく)も、
固唾を飲んで見守ります、それは数時間も続きました。
孔明は東南の風を吹かす
そして奇跡は起きました、それまで南から東になびいていた
大軍旗が東から南になびきはじめたのです。
「おおお、、、奇跡だ、、」
将兵達は、顔を見合せて驚くやら、怯えるやらです。
(馬鹿な、、孔明とは人か魔物か?)
周瑜は、戦慄を隠し切れませんが、そうこうしている間にも
孔明が祭壇から降りてきます。
「周都督、お急ぎ下さい、東南の風は、数日しか持ちませんぞ」
赤壁の戦いで黄蓋の苦肉の策
周瑜は、即座に黄蓋(こうがい)に命じて、
曹操に翌日の夜には降伏するので、
矢を射掛けないようにしてほしいと手紙を出します。
しばらく色良き情報が無かった曹操は、有頂天になります。
呉の重臣である黄蓋が降伏すると呉の結束力も相当に弱まるからです。
翌日の真夜中、靄の立ちこめる中を黄蓋と甘寧(かんねい)が乗り込んだ
小舟、10隻余りが、曹操の大船団に向かって静かに進んでいきます。
船には、魚油が積みこまれ、船体には兵士ではなく燃えやすい
乾燥した藁が満載に載せられています。
万が一、曹操が変心して矢を射掛ければ、たった10隻の小舟など
ひとたまりもありませんが、曹操は黄蓋の降伏を信じ切り
兵士達も静まり返っています。
「おい!近づきすぎだぞ、これではぶつかる止まれ!」
曹操の兵が、余りにも船足が早い黄蓋の船に注意を促します。
しかし、黄蓋の船は止まりません、止まるばかりか
中央の6隻ばかりの船からは炎があがり、
乗組員は、衣服を脱ぎ棄て続々と海に飛び込んでいます。
「わ、、わなだ!!黄蓋の降伏は偽りだーーー!
矢を放てー 船を寄せるなーーー!」
「はっはっは、もう遅いわい、間抜け共が!!」
黄蓋は、槍を構えて、曹操の船に飛び移り、
敵兵を斬り捨てながら、曹操の船にも、油を撒き始めます。
6隻の船は、次々と曹操の船団に突っ込み、その場で炎上、
火炎は順風に煽られ、あっという間に曹操軍の軍船を火炎で
舐めつくして燃え広がります。
火炎は闇に沈んだ長江を明るく照らし、対岸の岸壁までも
真っ赤に焼き尽くします。
寝起きの曹操は驚く
寝入っていた曹操が飛び起きて甲板に出ると、
辺りは紅蓮の炎に包まれ、逃げ惑う兵士の声が渦巻いていました。
「なんだ、、、、これは、、、、、」
曹操は、ここで漸く、自分が龐統や黄蓋に、そして何より
周瑜に騙されていた事に気が付くのです。
数千隻を数えた曹操の大水軍は炎上し、陸地である烏林まで
炎は到達しました。
陸地に到達したのを幸いに逃げようとする曹操軍の兵士に
待ち構えていた呂蒙と甘寧が襲撃を掛けます。
「雑魚に構うな、まずは曹操だ、それが無理なら、
夏候惇でも曹仁でもいい、片端から皆殺しだア!!」
甘寧と呂蒙は雄たけびを上げて、曹操軍に突入します。
火に追われる曹操軍は戦うどころではありません。
曹操の失敗でとんてもない状況に
出口の烏林を塞がれた曹操軍の兵は焼け死ぬか、
河に飛び込み溺れ死ぬか、陸を目指して呉軍に斬られるか、、
いずれかの方法で数を減らしていき、
たったの数時間で壊滅してしまいました。
これが三国志史上に名高い、赤壁の戦いです。
80万人という大軍を率いた曹操は、この瞬間に
全てを失い、逃げ惑う敗者になるのです。
耳で聞いて覚える三国志
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どうも、kawausoでーす、好きな食べ物はサーモンです。
歴史ライターとして、仕事をし紙の本を出して大当たりし印税で食べるのが夢です。
もちろん、食べるのはサーモンです。