曹操(そうそう)が赤壁の戦いに入る直前、
益州の劉璋(りゅうしょう)は、漢中との国境で起きた
張魯(ちょうろ)との争いに悩まされていました。
前回記事: 85話:曹操を油断させた潼関(どうかん)の大勝利
五斗米道の存在が邪魔な劉璋
五斗米道(ごとべいどう)という新興宗教の3代目の教祖である張魯は、
死をも恐れぬ強力な信徒を擁して、なかなか強力であり
実戦経験の少ない劉璋軍を脅かしていたのです。
このまま、軍事衝突を続けていても不利になると考えた劉璋は、
配下の張松(ちょうしょう)を曹操に派遣して救援を求めようと考えます。
しかし、この使者に立った張松は、とんでもない喰わせ者でした。
張松の思惑と誤算
彼は、劉璋が自分を優遇しない事に失望し、曹操に益州を獲る事を勧め
水先案内人になって、曹操配下として出世しようと企んでいたのです。
ところが、タイミングの悪い事に、この頃の魏は天下統一間近という事で
多忙であり、同時に軍も慢心し切っていました。
遥々、益州から来た張松は、3日もの間、何の音沙汰もなく待たされます。
「無礼な、、これが一国の使者に対する扱いか」
張松は憤慨しますが、兎も角待つしかありません。
3日後に曹操と面談が出来た張松
ようやく、3日目に面会が叶った張松ですが、
曹操は張松の容貌が醜く、小男である事で人物を軽くみてしまいます。
カチンと来た張松は、曹操が注釈を付けた孟徳新書を揚脩(ようしゅう)
から借りてその場で丸暗記して見せ曹操を驚かせると同時に、
その内容を酷く批判してしまいます。
曹操を批判した張松
怒った曹操は、張松を掴まえて、百叩きの計に処しました。
痣だらけの身体で魏から追い出された張松は、曹操に幻滅します。
張松:「曹操は、もう少し大人物かと思っていたが、これでは駄目だ、、
こんな狭量では、益州を獲らせてもワシが出世する目は無さそうだ、、」
劉備を頼る張松
そこで、張松は江夏城に居た、劉備(りゅうび)を頼る事にするのです。
劉備に招かれた張松は、曹操の時とは打って替わり、大歓迎を受けます。
張松に会い歓迎の意を示します。
以前、曹操に袖にされていただけあって、劉備の対応は、
張松の心を感動させるには充分でした。
劉備軍の対応に感動する張松
「流石に劉備は、大人物だ、これは益州を売るなら劉備かも知れぬ」
張松は、劉備の態度に満足して、曹操に渡すつもりだった、蜀の地図を
劉備に渡して、劉備に蜀を獲らせる為に尽力するようになります。
張松は、自分勝手で私心を優先する人でしたが、一方で
優れた智謀も持っていました。
劉備は、張松を厚遇する事で、益州攻略の第一歩を記す事になります。
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