曹操(そうそう)によって、地獄絵図のような長安から逃げおおせた献帝(けんてい)ですが、彼の気持ちは全く晴れませんでした。
それはそうでしょう、菫卓(とうたく)に保護された頃には少年だった献帝(けんてい)も今では立派な青年に成長していたのです。もう自分の権威というものを充分に意識し、自らの手で政治を行いたいそういう気持ちが芽生えても不思議はありません。
が、、、混乱の世の中は彼の望みを叶えられるようには動きません。
献帝の苦悩
菫卓(とうたく)に好き放題され、それが終われば李傕(りかく)・郭汜(かくし)が更に酷い政治をしそれから逃れたと思えば、今度は曹操(そうそう)が、権威を利用して自分の思うがままの政治をしている、、
ここで献帝(けんてい)はブチ切れてしまいます、、献帝(けんてい)の最初で最後の反抗期が爆発してしまうのです。
「朕(ちん)を蔑ろにする曹操を暗殺してしまえ!!」
献帝(けんてい)は、側近の菫承(とうしょう)に曹操(そうそう)を暗殺するように命じるのです。菫承(とうしょう)は、この計画を馬騰(ばとう)や、この頃に曹操(そうそう)の客だった劉備(りゅうび)に持ち掛けて賛同を得て行きます。
曹操暗殺計画の作戦内容
さて肝心の暗殺計画ですが、これが意外なほどにシンプル。曹操(そうそう)の主治医を説き伏せて、曹操(そうそう)が飲んでいる薬湯に毒を放り込んで殺すというものです。
曹操(そうそう)の主治医も、菫承(とうしょう)の計画に賛同して、これで、計画は上手く行くかと思いきや、とんでもない落とし穴が待っていました。
菫承(とうしょう)の使用人が曹操(そうそう)に暗殺計画をゲロしちゃったのです。それも、この使用人、菫承(とうしょう)の愛人と密かに肉体関係を持っていて、それが菫承(とうしょう)にバレて、酷く鞭で打たれたのを恨んでの密告という
なんともまぁ、昼の連ドラのようなドロドロしたお間抜けぶり、、
密告を知った曹操
もちろん、密告を知った曹操(そうそう)は激怒します。
「おのれ、クソガキ、俺が保護してやらなければ飢え死にしていたものを拾ってやった恩も忘れおってェ!!」
曹操(そうそう)は、即座に菫承(とうしょう)を逮捕して殺害し、事件に関与した人間も容赦なく殺害しました。
幸いに劉備(りゅうび)は、計画が漏れた頃には袁術(えんじゅつ)を討伐に向かっていて、その場に居なかったので難を逃れましたが、以後は、曹操(そうそう)に執拗に生命を狙われる身の上になります。
もちろん、曹操(そうそう)が暗殺計画の加担者達を厳しく処断したのは自分の生命が狙われたからでもあります。
曹操の狙い
しかし、それ以上に「自分に逆らえばどうなるか?」という事を献帝(けんてい)に思い知らせようという意図が強いものでした。
事実、これ以降、献帝(けんてい)はすっかり曹操(そうそう)に怯えてしまい、都合の良い操り人形の人生を生きる事になってしまうからです。それにしても、自分の使用人に愛人を寝とられ、それを処罰して恨まれて暗殺計画が露見するとは、、菫承(とうしょう)の人間性というか、その粗雑さが現れています。
献帝(けんてい)にもう少し人を見る目があったら、計画は上手く行ったかも知れないのにねぇ、、