官渡の戦いは依然として膠着状態が続いていました。荀彧(じゅんいく)の励ましで、踏みとどまる事を決意した曹操ですが、さりとて、70万の袁紹(えんしょう)軍を打破する方法はありませんでした。
しかし、そんな中、一人の男が曹操(そうそう)軍に投降してきます。それは、袁紹軍の配下であった軍師、許攸(きょゆう)でした。この時、三国志上屈指の大戦争に決着が着こうとは、曹操軍は、誰も想像だにしていませんでした。
前回記事:48話:強気の曹操が弱気に荀彧が一喝
投降した許攸(きょゆう)の驚くべき情報
投降した許攸(きょゆう)は、驚くべき情報を曹操にもたらします。
「袁紹は、烏巣という場所に大食糧倉庫を築いて、ここに本国から送られた食糧を備蓄している、、だが、守りは手薄で、淳于瓊(じゅん・うけい)が率いている僅かな守備兵のみここを軽騎兵で焼き払えば袁紹軍は一気に食糧不足に陥いり、3日と持たずに敗走するでしょう」
曹操軍は、あまりの情報に俄かには信じられず、偽情報ではないか?という警戒の声もありました。曹操は念の為に、許都(きょと)の荀彧(じゅんいく)に手紙を送ると、、
「許攸は物欲が強く、上昇志向も人一倍です。ただ、人と協調できないので、軋轢が強く袁紹も、恩賞ばかりを求める許攸に飽き飽きしています。最近では、献策しても使われず、許攸がそれに不満を持ち我が軍に降った事は大いにあり得ます」という返事が戻ってきたので、曹操は許攸の情報を信用します。
許攸の情報を信じた曹操が取った行動とは?
曹操は、官渡城を曹洪(そうこう)に任せ、自ら5000の兵を率いて烏巣を急襲する事を決意しました。闇夜に乗じて、城を出た曹操軍は、袁紹に悟られないように、馬の口を縛り、袁紹軍の旗を用意し完全な偽装工作を行い烏巣に殺到します。
許攸の情報通り、烏巣(うそう)は、淳于瓊(じゅんうけい)達、僅かな守りしか置いていません曹操は、一斉に襲いかかると、烏巣の食糧庫に火を放ち、全てを焼き払いました。
袁紹の2将軍・曹操に降伏
事実を知った、袁紹は大慌てし、許都を抑えるべく、張郃(ちょうこう)と高覧(こうらん)を派遣しますが、両者は烏巣が落ちた事を知ると、許都の曹操軍にあっさりと降伏してしまいます。
ここに勝敗は決しました、袁紹は慌てて70万の自軍を纏めて、自領へと引き上げていきます。
袁紹の破滅が始まる
袁紹軍は、これで滅亡したわけではありませんが、敗戦の責任を巡って、家臣団が対立、袁紹も敗戦に気を病み、西暦202年には病没したのです。
これを機に、袁家では、後継者問題が持ち上がり、勢力が分裂し、もう、曹操と覇権を争うような勢力にはなりませんでした。こうして、曹操の官渡決戦勝利の立役者になった許攸(きょゆう)は、曹操に取り立てられますが、ここでも彼の上昇志向が仇になります。
許攸は、事あるごとに官渡決戦の自慢話をし、自分がいなければ、曹操は天下を獲れなかったと吹聴したので、それに腹を立てた曹操(そうそう)に殺されてしまったのです。
また、別の話では、曹操は許攸の自慢を笑って許しましたが、許褚(きょちょ)が立腹して、これを刺殺したとされています。いずれにしろ、許攸の鼻持ちならない性格が身の破滅を呼び寄せてしまったのですね、、