関索とは何者?三国志演義と花関索伝に登場する関羽と胡金定の子

2015年5月31日


 

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関羽 関索

 

三国志演義』には、関羽(かんう)の息子として、数名の人物が登場します。

 

父・関羽とともに亡くなる関平

 

有名なところで、父である関羽と共に荊州を守り、

共に戦死した関平(かんぺい)、父の死後、孔明による北伐にも参加した関興(かんこう)などが挙げられます。

 

その中でも謎とされている人物が関索(かんさく)です。

史実には一切記されていないという、この関索という人物は一体何者なのでしょうか?

 

監修者

ishihara masamitsu(石原 昌光)kawauso編集長

kawauso 編集長(石原 昌光)

「はじめての三国志」にライターとして参画後、歴史に関する深い知識を活かし活動する編集者・ライター。現在は、日本史から世界史まで幅広いジャンルの記事を1万本以上手がける編集長に。故郷沖縄の歴史に関する勉強会を開催するなどして地域を盛り上げる活動にも精力的に取り組んでいる。FM局FMコザやFMうるまにてラジオパーソナリティを務める他、紙媒体やwebメディアでの掲載多数。大手ゲーム事業の企画立案・監修やセミナーの講師を務めるなど活躍中。

コンテンツ制作責任者

おとぼけ

おとぼけ(田畑 雄貴)

PC関連プロダクトデザイン企業のEC運営を担当。並行してインテリア・雑貨のECを立ち上げ後、2014年2月「GMOインターネット株式会社」を通じて事業売却。その後、「はじめての三国志」を創設。戦略設計から実行までの知見を得るためにBtoBプラットフォーム会社、SEOコンサルティング会社にてWEBディレクターとして従事。現在はコンテンツ制作責任者として「わかるたのしさ」を実感して頂けることを大切にコンテンツ制作を行っている。キーワード設計からコンテンツ編集までを取り仕切るディレクションを担当。


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突然登場する謎の登場人物

劉備読書

 

三国志』をはじめとする史書に関索の名前は一切記載されていません。

そのことから架空の人物であるとされる関索ですが、一方、『三国志演義』での描かれ方にも、不思議な点があります。

 

周瑜、孔明、劉備、曹操 それぞれの列伝・正史三国志

 

『三国志演義』では実在した関羽の息子である関平(ただし『演義』では関羽の養子とされています)や関興が登場、活躍していますが、

関索の名は関羽が死に至るまで登場しません。

 

孔明君のジャングル探検

 

関索は孔明の南伐のエピソードの際に突然登場します。

関索は関羽の三男であるとされ、荊州で関羽が敗死した際、自身も大ケガを負って療養していたという生い立ちが語られています。

 

唐突に意味ありげに登場してきたこの関索なる人物、しかし、その後物語に大きく関わることはなく、気がついたときにはいつのまにか退場しているという始末。関羽の息子ということなら、関平や関興が十分活躍しているので、わざわざ新たに架空の人物を登場させる意味はどこにもありません。

 



『三国志演義』以外では有名な関索?

水滸伝

 

『三国志演義』と並んで中国四大奇書(ちゅうごくよんだいきしょ)のひとつとされる小説『水滸伝』に登場する楊雄(ようゆう)という人物は作中で

『病関索(びょうかんさく)』=『顔色の悪い関索』とあだ名されています。

 

燕青(水滸伝)

 

『三国志演義』が成立した15世紀以前、武将や盗賊の呼び名として『厳関索(げんかんさく)』『小関索(しょうかんさく)』『朱関索(しゅかんさく)』といったあだ名が用いられていた記録があり、また、一部の地方には関索の名を冠した地名も残されています。

 

どうやらこの関索という人物、『三国志演義』が誕生する以前には相当有名で人気もあったようなのですが……。

 

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1967年に発見された『花関索伝』

水滸伝って何? 書類や本

 

1967年、上海近郊の農地で明(みん)の時代の墳墓が発見されました。その副葬品の中には11冊の書物などが含まれていました。

その一冊が『花関索伝(かかんさくでん)』です。

 

『花関索伝』は関羽の血を引く青年が、恩義のある(関羽を含む)三人の人物の名から一字ずつ取って「花関索」と名乗り、

後に劉備の麾下として活躍するという物語です。

 

三国志平話

 

『三国志演義』には元になった『三国志平話(さんごくしへいわ)』という絵物語が存在していますが、

『花関索伝』はこの『三国志平話』と良く似た装丁・形式で作られており、『三国志平話』以降、それをマネて作られた読み物であると考えられています。

 

研究の結果、三国志演義に登場する関索は、この『花関索伝』に登場する花関索がベースとなっていることが判明しました。

 

まるで“メアリー・スー”な花関索

張飛の虎髭

 

『花関索伝』は、主人公である花関索がすべての出来事の中心にあって、なんでも一人で解決してしまうという荒唐無稽な展開をその大きな特徴としています。

戦場ではほとんど花関索が一人で敵を倒してしまい、関羽や張飛ですら出番がありません。

 

劉備の臨終に立ち会う孔明

 

孔明は劉備が死ぬと修行と称して勝手に姿を消してしまいます。ほとんど『あいつ一人でいいんじゃないか』状態です。

 

周倉

 

更に、『三国志演義』では関羽の配下として登場する周倉(しゅうそう)や蜀の重臣であるはずの糜竺(びじく)なども花関索の敵として登場し、

あげくの果てには妖怪変化まで登場するなど、とにかくハチャメチャな展開を見せる『花関索伝』。

 

周倉

 

どうしてこうなった……?

 

『三国志演義』が成立した明の時代、多くの三国志を題材とした通俗小説が出版されました。

それらは他作品との差別化を図る意味から他には登場しないキャラクターを登場させることが多くあったといいます。

 

周倉と裴元紹

 

花関索は地方に伝承されていた花関索の物語をベースに、物語の独自性を出すために作り上げられた“都合のいい”主人公だったと言えます。

 

関索

 

現代の二次創作小説において、作者の都合の良い主人公として創作され、原典である物語の主導権を獲ってしまう

キャラクターを“メアリー・スー”と呼んだりしますが、花関索は正に中国版メアリー・スーと呼べる存在かもしれません。

 

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三国志平話

 

 

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kawauso

台湾より南、フィリピンよりは北の南の島出身、「はじめての三国志」の創業メンバーで古すぎる株。もう、葉っぱがボロボロなので抜く事は困難。本当は三国志より幕末が好きというのは公然のヒミツ。三国志は正史から入ったので、実は演義を書く方がずっと神経を使う天邪鬼。

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