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もうやってられない! 三国志の時代ではどのような理由で主を変えてたの?

この記事の所要時間: 639




韓信 項羽

 

三国志時代の「転職」とその動機

現代において、「もっと良い待遇になる」あるいは「やりたい仕事をする」と思った時に転職する、という選択肢を考えます。

三国志の時代においても、主を変えるということはしばしば行われてきました。

その理由の一例としては、「待遇改善」があります。

「碌」にありつけなければ生きてはいけないのはどの時代も同じですので、この理由は最も大きな理由となります。

それ以外にも、「進退極まった時」や「仕えたい主に仕える」等の理由もあります。

主を変える理由は、人それぞれです。

今回は「三国志の時代ではどのような理由で主を変えるのか」についてフォーカスしてみました。

ただ、三国志の時代では、自分から敵軍に降るものもいますが、

名将はヘッドハンティングされる場合が多いです。

 

前回記事:【結構苦労が多いんです】三国志時代の転職事情が想像以上に複雑だった




勇将 徐晃(じょこう)のヘッドハンティング

戦え于禁㈪01 李典

 

徐晃(じょこう)は魏の将として知られていますが、元々は騎都尉楊奉(ようほう)の部下でした。

楊奉(ようほう)は李傕(りかく)の軍の部下でしたので、

李傕(りかく)軍という本社の子会社の社長楊奉(ようほう)の下で働いているイメージですかね。

李傕(りかく)は郭汜(かくし)とともに、菫卓(とうたく)死後、富と権力を握ろうとし、帝はそれを苦々しく思っておりました。

その折、李傕(りかく)に軽視されていた楊奉(ようほう)は、帝を連れて逃げ、

その後曹操(そうそう)によって李傕(りかく)と郭汜(かくし)を打ち破られました。

曹操(そうそう)は、帝に許昌に遷都するように上奏し、一行は許昌に向かいました。

そこで楊奉(ようほう)は帝を連れ去られまいと、行く手を遮ります。

楊奉(ようほう)軍からは徐晃(じょこう)、曹操(そうそう)軍からは許褚(きょちょ)が打って出て、一騎打ちが始まります。

五十合うちあっても決着がつかずお互い引き下がりました。

その様子を見た曹操(そうそう)は、曹操(そうそう)「徐晃(じょこう)ほどの勇猛な将は殺すには惜しい。

我が配下にする手は無いか。」

そこで、魏の満寵(まんちょう)が言います。

満寵(まんちょう)「私は徐晃(じょこう)とは面識があります。

彼の陣屋に忍び込み、我が弁舌で説き伏せて見せましょう。」

 

その後、満寵(まんちょう)は徐晃(じょこう)の陣に侵入します。

 

徐晃(じょこう)「山陽の満寵(まんちょう)が、なぜここに?」

満寵(まんちょう)「今日、戦場で見かけたから懐かしくなって、決死の思いで参上しました。今は、曹軍で働いています。」

 

旧友にあって、「久しぶり、俺は今○○会社ではたらいているんだ」と語るようなノリで話しかける満寵(まんちょう)。

とりあえず、椅子を出してまあ座ってくれという徐晃(じょこう)。

 

満寵(まんちょう)「徐晃(じょこう)よ。君ほどの才があれば、もっと活躍できる場があろうに、

なぜ楊奉(ようほう)などについているのです。

曹操(そうそう)殿は貴殿の命を奪うに忍びないと、私を遣わせたのです。

暗主を捨てて明主に仕えていい仕事をしましょう。」

 

徐晃(じょこう)「確かに楊奉(ようほう)には将来性は無いが、長いこと仕えているもので、捨てるに忍びないのだ。」

 

徐晃(じょこう)は、自身の主が稀代の英雄ではないと分かった上で、それに仕えているという、

今の待遇に納得はしていないものの、就職してしまったものだから辞めるに辞められずにいる社会人のようなことを述べています。

 

満寵(まんちょう)「徐晃(じょこう)、知っていますか、優れた禽(きん、鳥のこと)は木を択(えら)んで棲むのですよ。

仕えるべき主君が目の前にいるのに仕えぬは、真の忠臣の成すことではありません。」

 

ここで勧誘の常套句、『良禽択木』。さりげなく、裏切りを正当化する満寵(まんちょう)。

伝家の宝刀を前に、ついに徐晃(じょこう)も頷くのでした。

その後、徐晃(じょこう)とその部下を引き入れた曹操(そうそう)軍は、楊奉(ようほう)軍を退け、許昌に向かうのでした。




転職が転職を呼ぶ!馬超(ばちょう)と李恢(りかい)

馬超仲間入り

 

馬超(ばちょう)は元々西涼軍でしたが、渭水にて曹操(そうそう)に敗れた後、東川の張魯の下に落ち延びました。

馬超(ばちょう)は張魯に進言し、玄徳軍の領土の葭萌関を攻め取ろうと進軍しました。

 

張飛VS馬超

 

劉備(りゅうび)は張飛(ちょうひ)を援軍に差し向け、葭萌関にて馬超(ばちょう)と張飛(ちょうひ)の一騎打ちが始まりました。

二人は、日が落ちて尚戦い続けましたが決着がつかず、その戦いぶりに劉備(りゅうび)は感嘆しました。

 

㈱三国志 劉備 孔明

 

劉備(りゅうび)と孔明(こうめい)は、計をもって馬超(ばちょう)を降伏させようと、張魯の部下の幕僚楊松を買収し、

馬超(ばちょう)の上司の張魯に、馬超(ばちょう)を退かせれば張魯を「漢寧王」に推挙することを伝えました。

漢寧王の称号がほしかった張魯は、馬超(ばちょう)を退かせようとしましたが、手柄を立てていない馬超(ばちょう)は、退くに退けません。

また、楊松に「馬超(ばちょう)は蜀をとって反乱を企てている」と言い触らさせました。

馬超(ばちょう)が進退極まった頃に、劉備(りゅうび)の元へ西川の者が降伏してきました。

その者は、李恢(りかい)、字(あざな)は徳昂(とくこう)。

 

表情 劉備02

 

劉備(りゅうび)は尋ねます。

劉備(りゅうび)「どうして、今になってわしに降るつもりになられた。」

李恢(りかい)「良禽は木をえらんで棲み、賢臣は主を択んで事う、とあるでしょう。

以前の我が主君は私がお諫めするのも聞かずに、敗北の道に進みました。そのようなものに仕えるのは忠臣のすることではありません。

ところで、馬超(ばちょう)の進退は極まっているとか。私が彼を説き伏せて見せましょう。」

 

李恢(りかい)は、ここで伝家の宝刀、『良禽択木』を持ち出します。

突然現れ、自身で引き抜いた伝家の宝刀に勝手に串刺しになった李恢(りかい)は、劉備(りゅうび)の仲間になるとともに馬超(ばちょう)の説得に向かいます。

 

馬超(ばちょう)「李恢(りかい)は口が達者だからな。私を説得に来たのだろう。」

身構えている馬超(ばちょう)に、李恢(りかい)は、

李恢(りかい)「そもそもお前の真の敵は曹操(そうそう)ではないか。

今戦おうとしている劉備(りゅうび)を倒して一番喜ぶのも曹操(そうそう)であろう。」

李恢(りかい)の言葉により真の敵を認識した馬超(ばちょう)は劉備(りゅうび)に降伏し、劉備(りゅうび)は厚くもてなしたのでした。

 

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張飛(ちょうひ)がヘッドハンティングした厳顔(げんがん)

厳顔と張飛

 

厳顔(げんがん)は蜀の老将です。

長く蜀に仕えていた厳顔(げんがん)ですが、劉備(りゅうび)達が蜀に攻め入った時に、張飛(ちょうひ)によって、捕らわれることとなりました。

ところが、張飛(ちょうひ)のもとへ引き出された厳顔(げんがん)は、跪きません。

 

張飛(ちょうひ)「敗れた将がなぜ跪かない。」

厳顔(げんがん)「負けたとて、心から屈したのではない。蜀に敗戦の将はいようとも、降伏の将などおらん。」

これを聞いた張日は怒り、首を刎ねるように命令しました。

厳顔(げんがん)「首がほしければとっとと首を刎ねれば良いではないか。怒るだけ時間の無駄だ。」

これを聞いた張飛(ちょうひ)は、思うところがあり、厳顔(げんがん)の縄を自ら解くと跪いてこれまでの非礼を詫びました。

張飛(ちょうひ)「俺も同じ立場だったら同じことを言うだろう。あなたこそ真の武士だ。」

厳顔(げんがん)「侵略者如きに礼儀が分かるのか。」

 

厳顔(げんがん)から出てきた「侵略者」という言葉。

ここで張飛(ちょうひ)は、自身は私利私欲のために侵略を行っているのではなく、大義のために戦っていることを述べます。

 

張飛(ちょうひ)「あなたも劉公爵(劉備(りゅうび)のこと)とともに戦ってくださらぬか。」

こうして、厳顔(げんがん)は劉備(りゅうび)の下で働くこととなりました。

 

厳顔(げんがん)は、力や富では屈しませんでしたが、大義によって心を動かされたようです。

長いこと勤めていた会社が吸収合併してしまったものの、

吸収してきた会社はより大きな仕事をしようとしていることに気付いた社会人という感じでしょうか。

 

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ヘッドハンティング失敗!蜀の張任(ちょうにん)

張任

 

張任(ちょうにん)は蜀の将でした。

劉備(りゅうび)、孔明(こうめい)らは、蜀を獲ろうと進軍する中、智勇の将張任(ちょうにん)が金雁橋にて交戦します。

孔明(こうめい)の計略によって捕えられた張任(ちょうにん)を劉備(りゅうび)は、ヘッドハンティングにしようと考えます。

一方で、張任(ちょうにん)にはその気は無いようです。

 

劉備(りゅうび)「蜀の大将は皆降伏したのになぜお前は従わぬのか」

張任(ちょうにん)「忠臣は二主に仕えずということを知らないのか」

劉備(りゅうび)「お前は、天の時というものが分かっていないのだ。降伏すれば、命を助けよう。」

張任(ちょうにん)「力で屈しても心までは屈せぬ。黙って、首をはねよ。」

 

劉備(りゅうび)は何とかして、説得しようと試みました。しかし、一向に張任(ちょうにん)は首を縦に振りませんでした。

その様子は、会社が倒産し失職したが、生きていくためにフリーターに就かねばならぬを良しとしない社会人の様です。

余程これまでの仕事にプライドを持っていたのでしょう。

もはや転職活動の例えすら通り越し、彼女にフられて他の女の子からアプローチされても、

昔の彼女が忘れられない、昔を引きずるタイプの男の様です。

 

劉備(りゅうび)が殺すのを躊躇っていると、

 

孔明(こうめい)「忠義を全うさせてやるのも、義というものです。」

こうして張任(ちょうにん)は首を刎ねられました。

劉備(りゅうび)は、張任(ちょうにん)に感嘆し、金雁橋の傍らに彼を葬りその忠義を讃えました。

 

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三国志ライターFMの独り言

FM

 

中国には、儒教思想いわゆる縦社会的な思想がありますので、裏切りは良しとされません。

にもかかわらず、裏切る将はいます。

多くの場合、高碌(高待遇)がその理由となるとは思いますが、それだけではないと思います。

徐晃(じょこう)は自身の力を世に生かすために仕えるべき主を変えました。

仕えるべき主を間違ったと思っていた徐晃(じょこう)にとっては、曹操(そうそう)に下ったことには高碌を得る以上の意味があったのではないでしょうか。

また、馬超(ばちょう)は夢破れ彷徨っている中で転職することで「真の目的」を再確認しました。

厳顔(げんがん)は劉備(りゅうび)の大義を知り、それに助勢するために降りました。

張任(ちょうにん)は自らの主を裏切ることなく、打ち首を選びました。

彼らは、自身が高待遇を得る以上に目的を見出し、そのために主を変えたのだと思います。

 

—古代中国の暮らしぶりがよくわかる—




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三国志は、大昔の出来事ですが、物語をいろいろな視点や切り口で見ていくと、新しくて面白い発見があるのが好きです。

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埃をかぶせておくにはもったいない、賢人たちの誇りがあります。

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