支配権を得た呂布は下邳に、そして劉備は徐州の僻地の小沛に追いやられます。
北方に領土を拡大したい袁術は、これ幸いとまずは小沛の攻略を命じます。
勝敗を落とし、そこを拠点に徐州全域を征服することが狙いでした。
出陣する兵3万を率いるのは、以前に一騎打ちで関羽と引き分けている紀霊。
小沛を落とすのは容易でしたが、袁術の魂胆を見越した呂布は和睦の仲介役となるのです。
地面に刺した戟を百歩離れた位置から一撃で射るという離れ業を行い、
和睦は天命だとし、紀霊を退けるのです。
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197年の張勲の徐州攻め
呂布との政略結婚を断られ、使者を斬られた袁術(えんじゅつ)は怒って徐州を攻めます。
大軍を率いるは大将軍の張勲です。
しかし、離間の計を仕掛けられ、味方の将から裏切りが出て大敗を喫することになるのです。
袁術はこの年の1月に帝位を専称して王朝を創立していただけに、
この敗北は袁術のプライドを激しく傷つけたことでしょう。
丞相である紀霊、大将軍である張勲と、
袁術が信頼するふたりが立て続けに呂布陣営の策謀に踊らさせれます。
陳国の劉寵攻め
連戦によって兵糧に窮した袁術は隣国である豫州の陳国に兵糧援助を申し込みます。
一応、仲王朝の皇帝ですから強制的に命令だったのでしょう。
しかし見事に断られてしまいます。
怒った袁術は張勲を先頭に、陳国を攻め占領してしまいます。(酒宴の席で暗殺したという噂もあり)
大軍を擁し、名声があるだけに小国には滅法強い袁術でした。
曹操・劉備・呂布の陳国攻め
その行為に大義名分がなかったのか、
そもそも帝位を専称しているので周辺は敵対勢力ばかりになってしまいました。
すかさず攻めてきたのは、曹操を中心に呂布、劉備の軍勢です。
かなりのメジャーどころで、この三勢力相手に戦争をしたのは袁術くらいなものではないでしょうか。
結果は敗北、大将である橋蕤を討たれたりと、袁術軍は大きく軍事力を低下させることになります。
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李豊籠城し粘る
袁術は曹操来襲を聞いてすぐさま南へ退却。
曹操を迎撃した四将のなかで最も活躍したのが李豊です。
李豊は籠城を選択し、曹操軍を悩ませました。
袁術が寿春まで退却する時間を稼いだのは李豊の功績です。
袁術よく逃げる
袁術はよく逃げます。
君主が討たれれば勢力は滅亡ですからその選択は間違えてはいないと思いますが、
大軍を率いているだけにもう少し積極的に出陣してもよかったのではないかと思います。
袁術は態勢を立て直すべく呂布と同盟を結びましたが、
その呂布は曹操に討たれ、中原は曹操の勢力一色に染められていくのです。
揚州の孫策も独立の意思を示していましたし、
四方敵だらけの袁術は北にいる親族の袁紹のもとに逃げることを決意したといいます。
198年、その退却の道半ばで袁術は病死したと伝えられています。
袁紹・袁術の合流を恐れた曹操は周辺の豪族に袁術を襲わせ、
袁術の配下に離間を仕掛け、あの手この手で進軍を止めようと必死でした。
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三国志ライター ろひもと理穂の独り言
徐州をがっちりと勢力下に治められていれば、曹操とは互角以上に戦えたと思えます。
難しいかもしれませんが呂布を配下に迎えることができれば、中原の覇者は袁術だったかもしれません。
袁術にとっての誤算はかつて敵対勢力として倒した陳瑀の親族、陳珪の謀略に手を焼いたことです。
陳家は真っ向から袁術と敵対し、呂布を上手く使って袁術を退けたのです。
あと一手、有効な手が打てたら局面が大きく変わっていただけに、
袁術の戦略を見ていると悔しさが込み上げてきますね。
次回からは、どうすれば袁術の建国した仲王国が存続できたのかを検証していこうと考えています。
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