今回は三国志後伝についてお話したいと思います。三国志後伝はその文字から推測できるように、三国志の後……正しく言うならば三国志演義の後のお話です。
お話の完成度は三国志演義のレベルが高すぎるために比べることは難しいですが、三国志ファンから見れば色々と感慨深い内容となっています。この三国志後伝がどんなお話なのか、どのようなものなのか、今回はざっくりとご紹介しましょう。
この記事の目次
三国志後伝(さんごくしこうでん)とは?
前述したように、三国志後伝は三国志演義の続きの世界を描いた小説です。作者は酉陽野史(ゆうようやし)といい、三国志演義の世界を作り上げた羅貫中とはまた別の人物です。
その成立時期は中国における明の時代であり、三国志演義が生まれた時代と同じですね。内容からすると三国志演義が出来てから生まれたのが三国志後伝だと思われます。
後伝と演義と平話
三国志後伝は三国志演義を書いたと言われる羅貫中が書いたものではありません。しかし、その続編と言った方が分かりやすい内容となっています。また三国志演義のように史実、民間伝承などを取り込んでいきながら、作者のオリジナリティもふんだんに溢れた内容となっているのが特徴でしょうか。
また三国志平話の内容も踏まえられており、こちらでは劉備のひ孫が晋と戦うのですが、この影響をかなり受けている内容であり、三国志、三国志演義に出てきたキャラクターたちの孫が多く出てくるのも特徴です。
三国志後伝人気
そんな三国志後伝ですが、三国志演義が大人気となった中で生まれたにもかかわらず、中国ではそこまで人気を集めることはできなかったようです。が、そんな三国志後伝は実は海を渡り、日本にやってきていました。
そして江戸時代の日本では翻訳され、「通俗続三国志」「通俗続後三国志」として、そこそこの人気を得ていたようです。ここからも日本人の三国志好きが分かりますね。
三国志後伝の始まり(ざっくり)
さて三国志後伝の主人公は、劉備の孫である劉淵です。とはいえこれはあくまで話の上での設定であることを忘れてはいけません。また劉淵に限らず、数多くの武将たちの孫たちがたくさん出てきます。
こういう点は、三国志演義好きには溜まらないポイントですね。
始まりをざっくりと説明すると、劉淵が蜀の滅亡時に成都を脱出。
匈奴の地にて再起を目指しているところに、同じく蜀、漢王朝の再興を目指している関羽、張飛、趙雲などの蜀の名臣たちの子供たちが集っていくというストーリーです。
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三国志後伝の終わり(かなりざっくり)
劉淵たちが戦うのはもちろん晋王朝。こちら晋王朝でも三国志演義お馴染みのキャラクターたちの孫世代がたくさん出てきます。こちらには夏候惇や司馬懿の孫だけでなく、陸遜や凌統らの孫も出るのが面白いところ。
そして戦いに次ぐ戦いの中で、見事晋王朝打倒の夢を叶えます。とは言え、史実から大きく離れてハッピーエンドということはなく、劉淵が建てた北漢王朝は天下を統一することなく滅亡してしまうエンディングとなっていますね。
三国志後伝のポイント
三国志後伝は三国志演義、三国志平話の流れを汲んだ歴史小説ですが、少し触れたように大まかな流れは史実に沿って流れていきます。劉淵の設定や、晋や呉に仕える嘗ての武将たちの子孫らとの戦いなどは創作部分ですが、最後の終わりでも漢王朝はまた滅ぶところなどは、史実の流れに沿っていると言えるでしょう。
ただし石勒、張賓らなど史実の上で晋との戦いの中で活躍した人物たちは、だいたい蜀の名臣たちの子孫になっています。この辺りは人によってはやや評価が分かれるところで「蜀びいき」「設定に無理がある」という印象が残るのは否めないところです。
しかしそれを踏まえて読めば、三国志ファンには一度は読んでみて欲しい作品と言えるでしょう。ただ八王の乱など、三国志演義でいえばより後の話がベースになっているので、その辺りのお話を頭に入れてから読むことをお勧めします。
興味を持たれたならば
そんな三国志後伝ですが、原書は世界中で二冊しか確認されていないとやや不遇な扱いではあるものの、現代ではインターネットの普及などもあり、読むことは可能です。
また日本では「通俗続三国志」、「通俗続後三国志」という名で日本語に翻訳され、現代語でもインターネットで読むことができます。ぜひ興味を持たれたなら、一度見てみて下さいね。
三国志ライター センのひとりごと
前述したように、三国志後伝のお話の舞台は晋王朝であり、八王の乱や五胡十六国についてなども踏まえた話が出てきます。この事もあるので、個人的に最大限に楽しむならばこの辺りに目を通してから読むのが良いでしょう。
しかしそれらも現代では少し調べればたくさんの情報が出てきて、共有することができます。便利な時代に感謝しつつ、三国志の世界をまた少し、広げてみませんか?
参考:三国志後伝 / 通俗続三国志 / 続三国志演義─通俗續三國志─(外部リンク)
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